第3幕:浄化する人 −跡部景吾−

 

 

あ?忍足と岳人との出逢いを話せって?
ったく、何で俺様がそんなコトしなきゃなんねーんだ、面倒臭ぇ。
……まぁ、いい。
今日はちょっと時間が有るからな、少しぐらい話してやってもイイぜ。

 

 

その前にまず、俺様の能力のコトから説明しなきゃなんねぇな。
岳人が『魂』って呼んでるモノのことは知ってるな?
そう、忍足が『感じる』コトのできるアレだ。
俺は、それを祓う事ができる。
とはいえかなり制限付きなんだがな。
俺は岳人みたいに『聞く』事も、忍足みたいに『感じる』事もできねぇ。
唯一解るといえば、自分の身に降りかかった事だけだ。
図々しくも俺様の身体に入り込もうとしているヤツだけを、判別する事ができるわけだ。
祓い方は至って簡単で、例えば……ああ、丁度良い時に来やがった。
テメェにゃ見えねぇだろうが、今俺様の右肩辺りから入り込もうとしてる不届きなヤツが
いやがるんだが……これを、こう、埃でも掃うようにすりゃ……ホラ、消えたろ?
ああそうか、見えねェんだっけな。難儀だな。
要は、掃うか叩くかすりゃ、消えちまう。
どうしてかなんて訊くんじゃねーぞ、俺様にだって解らねぇんだからな。
ずっと俺は、そうやって自分の身は守ってこれたんだ。
は?他のヤツら?知るかよそんな事。
そもそも、こんな話した事自体、テメェが3人目なんだぜ?
まァ……なんつーか、『普通』じゃねェだろ?
正直、気持ち悪がるヤツだっている。
アタマおかしいんじゃねーかって思うヤツだっている。
だから…普通は言わねぇ事にしてンだ。
…は?他の2人って誰の事か、だと?
忍足と岳人に決まってんじゃねーか。
ココまでの前フリで気付けっつーの。

 

俺様の学生生活の事は、いちいち訊かなくても解ってるよな?
まァ、長くなるから省略するが、それなりに悠々自適な毎日を送っていた。
それが……ある意味アイツらのせいなんだろうが……忍足と岳人、その2人と
出逢っちまってから、俺の生活は微妙に変化した。
モチロン、あんな2人に振り回されるような俺様じゃねーがな。

 

 

 

あの2人に本当の意味で出逢ったのは、中1の終わり頃だ。
桜が咲き誇っている、そんな季節だ。
部活が同じだったからな、顔見知りであった事は確かだが、多数いる部員の内の1人。
そう、そんな認識しか無かったんだ。
それを変えるきっかけになったのは、忍足だ。
正確には、忍足と岳人の会話をうっかり耳に入れちまった、ってトコロなんだが…。

 

あの時は確か、俺がちょっとした用事で部室へ行った時だった。
その頃は今のメンバーの誰一人としてレギュラーじゃなかったから、専用部屋じゃねェ方な。
まだ俺達は1年だったから、当然と言えば当然なんだが。
時間はもう部活の始まる直前で、殆どのヤツらは皆コートに出ていたから、
そこに入った時には忍足と岳人しかいなかった。
後で聞いたら、どうやらHRが長引いてしまったらしい。
まあとにかく、行けば2人が慌てた風に着替えてる最中で……ああ、そうだ、思い出してきた。
特に俺様がアイツらと喋ってやる必要なんか無かったわけで、その時はただ自分の用事を
済ませる傍らで……2人の話を聞いてしまっただけだったんだ。
本当に、それだけだったんだが……なんで今、こんな事になってんだろうなァ…。
思えばそれが、全ての始まりだったような気がするな。

 

それで、その2人が何の話してたかっつーと……お、何だ、予鈴じゃねェか。
忍足侑士には、大きな秘密があったんだが…まあ良い、その話はまた今度だ。

 

 

……なんだよ、まだ何かあんのか?
は?2人をどう思ってるか?
別にイイじゃねェか、そんな話改まってするコトじゃねェだろ?
あァ?似たような能力持った『仲間』??

 

………テメェ、何言ってやがんだ?

 

忍足と岳人は……………そんなんじゃねェよ。
この俺様に言わせる気かよ。バカじゃねーの?

 

 

<続>