〜 Life 〜
【 The earth of to have suffered. 】
「ふぅ〜ん……鳩がなー……ふぅ〜ん……」
「何やのん岳人、俺そんな変な話したか?」
「うんにゃ、違う違う。そうじゃねーって」
侑士が言うには、今居る日本って国は鳩が平和の象徴なのだそうだ。
でも、俺は実際鳩なんて見た事がない。
「鳩って、どんな鳥?」
「ええー……こんぐらいの大きさでな、白かったり模様があったり、
種類はまぁ色々やな」
手で大きさを表しながらそう教えてくれたけど、いまいちピンとこない。
やっぱり、実物を見てみたいなぁと思う。
「なんで、いなくなっちまったんだろ」
「さぁ……此処が、平和やなくなったからと違う?」
「平和じゃなくなった…」
「そうや。ロボットが人間を殺し、全部を破壊しようとして、もうめちゃめちゃや。
危ななったから、鳩も逃げたんやろなぁ……」
「じゃあ、平和になったら……俺達の戦いが終わったら、戻ってくるかよ?」
見てみたいんだ、鳩ってヤツを。
高く高く空を飛ぶことができるっていう、鳥ってヤツを。
「岳人……」
「俺も、あんまり役に立たねぇけどよ、それでも頑張るから」
「……あぁ」
決意を込めてそう言ったら、侑士が綺麗に笑ってくれた。
侑士の笑顔を見るのは、実は結構好きだったりする。
侑士だけじゃなくて、ヒヨも、ジローも、跡部も滝も、みんなみんな。
みんなの笑った顔が見れるようになりたいから。
「がっくん、高く跳ぶの好きやもんなぁ?
それだけやのうて、高い所に居んのも好きやろ?」
「んー……まぁ、な」
「なんで?」
「なんでって……高いところにいたら、それだけ沢山のものが
見えるから、かなぁ…」
なんとなくだから上手く言えないけど、だから俺は高いところが好きなんだ。
もっと高いところに行けるようになりたいんだ。
仲間の内では俺が一番背が低いから余計そう思うのかもしんねーけど。
「岳人らしいなぁ」
「そうかぁ?」
「ん、それでこそ岳人!ってカンジやね」
「意味わかんねぇし」
「まぁええやん。岳人、頑張ろな。
頑張って……全部はムリかもしれんけど、また鳩が来れるような場所に
してやろうやん」
「ああ、俺も頑張る!
絶対この目で鳩を見てやるんだ!!」
「せやねぇ……修正のきかへんモンなんて、ほんまはひとつも無いんかもしれんなぁ……」
しみじみと呟いた侑士の言葉が、妙に胸にひっかかった。
どうしてなのかは、分からない。
「この地球は重病や。
ウイルスが世界中に蔓延って、今にも死にそうや……けど、」
何を思っているんだろう、何を思い出しているんだろう、侑士は。
「大丈夫、必ず助かる」
その言葉が根拠もないのに、真実だと俺は思ってしまったんだ。
< END >
原題:病んだ星
多分それは、侑士が何か大事なものを抱えていたからなんだ。