TWILIGHT SYNDROME

〜 It's possible to challenge a lot of wonders!〜

 

 

 

 





#04 七不思議の秘密(後編)











その1: 13階段の謎を解け!





西校舎の屋上へ続く階段、その手前で4人は足を止めた。
普段は11段だというこの階段が、夜中に数えると2段増えて13段になるという、
どこかで聞き知ったような話ではある。
「この校舎ができてすぐの頃に、上の踊り場には余分な机とか椅子とかが
 置いてあったんだとさ。
 それで、それを取りに行った男子が、足を踏み外して…」
「落ちたのか」
「もう最上段から真っ逆さま!
 しかも机を持ってたモンだから、バランスも受身も取れねーじゃん?
 首の骨折って即死、だったんだって」
「へーえ」
切原の言葉をどこまで信じて良いものかは疑問だが、夜の階段は
見た目だけで充分な雰囲気がある。
誰が挑戦するかは、公平にジャンケンで決めることになった。


「…げっ、俺かよ」


チョキを出して負けた裕太が渋い表情を見せる。
仕方ないな、と吐息を零して、裕太は階段の前に立った。
「……行くか」
ごくりと喉を鳴らして、その一歩目を踏み出した。
1、2、3…と数えながら階段を上っていく。
普段はそうでもないのに、やたら長い階段のように感じられた。
階段を上る自分の足音だけがやたら周囲に響き渡って、なお悪い。
「……じゅう、さん…?」
タン、と最後の一歩で踊り場まで辿り着く。
13段。
瞬間にぞわりと全身が総毛立つ感覚。
ヤバイ、と思ったのが先で、逃げなければと咄嗟に身を翻して、バランスを取りそこなった。





「……いってぇ〜……」
階段を転げ落ちた自分の傍に3人が集まってくる。
樺地の手を借りて身を起こせば、眉を顰めた日吉と心配そうな表情の切原と視線が合った。
「13段……だった」
「ぎゃーー!!マジだ!!マジなんだ!!怖ぇ!!
 早く逃げようぜ、なぁ!!」
身を震わせて袖を引っ張ってくる切原に、だが日吉が疑わしげな視線を階段へと向ける。
「まぁ待て切原、本当に男子の霊が出てきたのかどうか…」
「え、うそ、マジで確認すんの!?」
「裕太は見たのか?」
「いや……なんか、ヤバイから逃げねぇとって思って……だから、」
「階段から落ちたのは、自滅ってコトか」
「う…そう言われちまうと返す言葉がないな」
ははは、と苦笑を見せて言う裕太に頷きを返すと、日吉はそれで、と切原の方を向いた。
「昼間は何段なんだって?」
「え?え…?
 だ、だから、11段……」
「それ、ちゃんと確認取ったのか?」
「か、確認って……」
「だから昼間の内に、11段だったかどうか数えて確かめたのか?」
「え、う、いや……その、」
「確かめてないんだな?」
「…………スイマセン」
しょぼんと俯いて答える切原に、やや呆れたような吐息を零して日吉が腕を組む。
混乱して状況が読めていない裕太が首を傾げると、傍で樺地が教えてくれた。
「つまり、この階段は最初から13段なんじゃないか……って」
「…………はァ!?」



つまりそれって俺の落ち損かー!!
裕太の怒声が遠慮がちに辺りへ響き渡った。










その2: 石膏像の謎を解け!





「さぁて、それじゃ美術室…っと」
そろりと扉を開けて覗き込む。
さすがにこの時間では教師すらもいないのだろう、辺りは闇に満ちていて
人の気配はひとつもない。
その中に忍び込むと、最後に入った樺地がそっと扉を閉めた。
美術室にはデッサン用なのだろうか、壁際の棚には石膏像が並んでいる。
その内のひとつを指で軽く突付いて日吉が呟いた。
「この中のひとつに…ねぇ」
「そっそ!なんでも美術の教師が前の学校からひとつだけ持ってきた
 石膏像があるらしいぜ。それが怪しいと思わねぇ?」
「……で、どれがソレか知ってんのか、切原は」
「ちっちっち!甘いな裕太。
 それを今から探そうって言ってんじゃんよ」
「お前なー…」
いい加減な情報提供はやめろといつも言っているのだけれど、切原はいつも
裏づけを取らずにいいネタ仕入れたんだとやってくる。
とばっちりは大体仲間が食うハメになるのだが、最近ではそれにも慣れてきた。
「とにかく、手当たり次第調べてみりゃ分かるだろ」
「そうだな」
言いつつ端から順番に石膏像へと触れていくが、重さはどれも大して差はない。
結局目に付いた石膏像は全てハズレだ。
さてどうしようかと唸りを上げているところへ、日吉がぴくりと耳を欹てた。
「おい、誰か来るぞ」
「げ、そりゃマズイな」
「隠れろッ!」
大慌てで懐中電灯を消し、机の隙間に身を潜める。
一番静かにできそうもない切原は、どうやら樺地に口元を押さえられているようだった。
そうこうしている内に足音は少しずつ近付いてきて、美術室のドアが勢いよく開いた。


「おい、誰か居るのか!!」


聞き覚えのある声は、2年の美術を担当している教師のものだ。
音を立てないように息を潜めて様子を窺っていると、ぐるりと室内を見回した教師は
気のせいか、と呟いてドアを閉めていった。
「………行ったか?」
「行った、な」
「…ッぶはー!!樺地、お前手加減無さスギ!!
 息できなくて心臓止まるかと思ったじゃねーか!!」
「ウ、ウス…」
ぜえぜえと息をしながら切原が苦情を言っているのを余所に、日吉と裕太は
懐中電灯を手にひとつのロッカーの前に立っていた。
教本やらが置いてあるそのロッカー、石膏像の姿は無いけれど。
「……アイツ、此処で立ち止まったよな」
「ああ、俺も見ていた」
上半分のガラス張りの棚の方では無さそうだ。
という事は下か、と裕太が取っ手に指をかけ引いてみるが、ビクともしない。
「ちっくしょー、鍵がかかってる」
「…どけ、裕太」
「え?」
肩を押し退けるようにして裕太を一歩横にずらすと、日吉は床に膝をついた。
ポケットを漁って、取り出したのは一本のヘアピン。
それを鍵穴に差し込むと感触を手繰るように動かし、やがて鍵はカチリと音を立てた。
「楽勝だ」
「お前…どこでそんなワザ身につけてきたんだよ…」
「前にな、忍足先輩に教わった」
「教わったって…」
物騒なことを教える先輩もあれば、教わる後輩もいるもんだ。
呆れた吐息と共に鍵の外れた棚を開けば、中から現われたのは一体の石膏像。
「ビンゴ、だな」
「おお〜!ホントにあったんだなー」
「重さは?」
「んー……やたら重いな」
「じゃあアレだ、絶対中に頭蓋骨が!!」
「…って、ソレをどうやって確かめるんだよ?」
確かに他に見た石膏像より重いのだが、見た目は普通のそれと何ら変わりは無い。
もしも本当にそういったものが存在したとしても、完全に埋め込まれているこの
状況では、確認のしようも無いだろう。
「うわ、行き詰まり!?」
「ちょっと……いいですか」
嘆く切原の隣で樺地がのそりと動く。
緩慢な動作でその石膏像を受け取ると、しばらくあちこちを見回して、やがて。



ガシャン!!



樺地は力強くその石膏像を床に叩きつけた。
いっそ派手な音を立てて砕け散ったそれに、全員の視線が集中する。
じゃら、と石膏像の中から零れ出たのは、大量の小銭。
「……なんだこりゃ」
「貯金箱……です」
「貯金箱ォ〜〜!?」
「……あッ!そういえば、こないだテレビの通販番組でやってた!!
 誰が買うんだよって思ってたんだけど………ダッセー」
そんな物を買ったことに突っ込むべきか、貯金箱を教室に置いてあることを突っ込むべきか。
暫く悩んだ末に、次行こうぜ、と裕太が美術室の入り口を指差した。
「おい、コレ…どうするんだよ」
「バックレるしかねーだろ」
粉々になった貯金箱を指差し日吉が問えば、切原が悪びれた風もなくしれっと答える。
その隣で樺地が「ウス」とひとつ頷いた。ツワモノだ。










その3: 図書室の謎を解け!





次に訪れたのは図書室だ。
何かの話し声がする、というのが今回の謎。
「……司書室からでしたってオチはやめてくれよ」
「えー?こんな時間に司書が一人でブツブツ言うのかよ!?
 それはそれでホラーだけどなー」
「どうだ、日吉?」
先に立って扉の向こうを確認していた日吉が、曖昧な表情のままで
こくりと首を傾げた。
「今のところ、話し声とかは聞こえないが……奥が明るいな」
「げッ、マジかよ?」
「へへへッ、こりゃあまたひとつ信憑性が増したって事じゃねぇ?」
「…ま、とりあえず入ってみるか」
音を立てないように気をつけてドアを開ける。
中はやはり人の気配は無く、ただ整然と並べられた本棚がどこか不気味だ。
と、耳に物音を掠めた日吉が裕太から懐中電灯を奪う。
「どこだ…?ああ、奥か」
奥にあるのは司書室で、さっき日吉が言ったように明かりが零れている。
もしかしてやっぱり司書が…というオチなのだろうかと脳裏を過ぎったが
どちらにしたって確認しなければ始まらない。
「行ってみるか?」
「そうこなくっちゃ!」
勢い込んで答える切原に苦笑を零すと、懐中電灯を消して日吉は奥のドアへと
近付いていった。
傍に寄れば声も少しリアルに聞こえてくる。
「…なんか、一人じゃ無いようだよな」
「ああ、何人かいるみたいだ」
「まぁ、滅多に聞けるモンでもないし、ちょっと聞いてみようぜ」
「ウス」
言ってドアに張り付くような形で耳を澄ますと、反対側の教員用出入口から
更に数人が入って来る気配を感じた。





いや〜、遅くなってすみませんね。
近くのコンビニじゃ売り切れでね、まぁ車でもありましたし、街の方まで行ってきたんですよ。
そのおかげもありましてか、注文貰ったものは全部揃いましたよ。



ガサガサとビニール袋を漁る音。
そして何かの封を切る音と、缶のプルタブを持ち上げる音。
自分達も聞き知った音なのでわざわざ見て確認する必要もない。





「アイツら……酒盛りしてやがるよ」
「最悪だな、車って言ってたじゃねーか」
「俺、あんな大人にだけはなりたくねぇな」
「ウス」
正体を知ってしまえばどうという事もない。
視線を交わして肩を竦めると、4人は静かに図書室を後にした。
ハメを外した大人達は、このままそっとしておくに限る。










その5: 骨格標本の謎を解け!





夜中に入りたくない一番気持ち悪い教室と問われれば、まず8割が
生物室、と答えるだろう。
特に準備室は色んな教材を保管しておくため、標本やらサンプルやらが
所狭しと並べられている。
気持ち悪いとぼやきながら、切原は懐中電灯を手に準備室の奥へと向かった。
お目当ては、骨格標本。
「コイツが動くワケか…?」
「嫌だよな〜、死んだ人間の呪いとかだったらよ」
「って言っても、作り物だろうが、コレ」
「………へ?」
「へ?って……切原、お前まさかコレ本物だとでも思ってんのか!?」
「違うのか!?」
「………信じらんねぇ」
本気で頭痛がしてきて裕太がその場にしゃがみ込む。
今日日この人骨の模型が本物の人間の骨だなんて思ってる奴の方が珍しい。
小学生ならいざ知らず、もう高校生だというのに。
「お前って、馬鹿だよなぁ…」
「悪かったな!ちくしょー!!」
「あ、でも待てよ裕太、コレが動くかどうかっていうのはまた別問題だろ?」
「まぁ、確かに…」
フォローのつもりなのだろうか日吉が告げた言葉に、裕太が頷きを返す。
本物かどうかはさておいて、これが動くのだというのなら立派なホラーだ。
「で、いつになったら動くんだ?」
「毎日、決まった時間なんだって」
「だから、それは何時なんだよ?」
「え〜と………夜中?」
「つまり、知らねぇんだな」
「………そういうコト」
「いい加減な…」
悪びれた様子も無く笑う切原に今度こそ辟易した表情で裕太だけでなく
日吉までもが額を押さえて吐息を零す。
と、そこで。
「う、わッ!?」
グラリと床が大きく揺れた。
思わず近くの机に手をかけ、4人が焦ったように周囲を見回す。
「ちょ、なんだよ、地震か!?」
「ぎゃー!!結構揺れるッ!!」
「この揺れ……下から響いてくる感じ……」
樺地が床を見つめて呟く。
地下なんてあっただろうかと思ったが、そういえばこの脇にある階段はもうひとつ下に
続いている。
行き止まりになっているから踏み込んだ事は無かったけれど、もしかしたら秘密が
あるのかもしれない。
「行ってみようぜ、その地下ってのによ!!」
立ち上がって切原が懐中電灯を手にドアへと向かう。
廊下に出れば揺れは全く感じられない。
ということは、やはりあの場所の真下が一番怪しい。
生物室のすぐ隣にある階段を下ると、狭い踊り場と真正面に扉がひとつ。
興味が無いので開けたことも無かったが、鍵を日吉が簡単に外してしまうと
迷う事無く切原がドアを蹴り開けた。


「…………ボイラー…か?」


煌々と電気の灯る下で、大きなボイラーが低い音を上げながらゴンゴンと揺れている。
さっきの地震のような揺れもこれのせいなのだろう。
このまま壊れるのではと危惧させられるような音はひっきりなしに続いていて、
耳が割れそうだ。
「………おい、誰か此処でメシ食ってら」
蓋の開いたカップ麺を見遣って切原が苦笑を見せる。
嫌なオチだ。
だが彼らは知らなかった。
ボイラーの上に、まさにカップ麺を作るためなのだろうヤカンがひとつ
乗せられている事に。
ボイラーの発する熱で、湯を沸かそうという魂胆だ。



ピーーーーーーーーーー!!!



しゅんしゅんと湯気を上げていたヤカンのケトルが、唐突に叫びを上げた。
「ぎゃーー!!」
「やべ、逃げろ!!」
大慌てでドアを閉めて階段を駆け上る。
離れてしまえば揺れも音も感じる事無く、そこで漸く安心したように4人が座り込んだ。
「い、今のはマジでビビったぜ……」
「アレのせいだったんか、ウワサは…」
「拍子抜けだけど、なんか納得はしたな」
「ウス」
口々にそう呟くと、4人の口元から笑いが零れ出した。










その6: ロッカーの謎を解け!





中庭にあるプレハブ小屋。
そこは用務員が使う道具入れになっている。
一応ドアには南京錠がかけられているが、鍵開けという特殊アビリティを持つ
日吉若の敵では無かった。
「開いたぜ」
南京錠を取り外して横引きのドアを開ける。
中に踏み込めば、むっとする湿気と土の匂い。
さほど広くないその空間を奥まで進めば、噂の掃除用具を入れたロッカーだ。
「ここに、猫の死体が…ねぇ?」
「まぁ、そう言われてみれば……なんか、」
「生臭い……臭いがします」
雰囲気でそう思うだけなのか、本当に中に猫の死体があるのか。
本当に入っているのなら、あまり見たいものでもない。
「……開けんのかよ?」
「その為に来たんだろうが」
嫌そうな顔で問う裕太にそう答えると、日吉はロッカーの取っ手に手を伸ばす。
指をかけ何度か引っ張るが、どうやらそのロッカーにも鍵がかかっているようだった。
仕方無いと再び鍵を開けるためにヘアピンを取り出して鍵穴に突っ込む。
数度動かして眉を顰め、もう暫く粘ってみたが諦めたように日吉は手を引っ込めた。
「ダメだ、鍵穴が錆びてて上手くいかない。
 こういう場合はどうすれば良いって言ってたっけ…」
丸眼鏡の胡散臭い先輩は、にこやかな笑顔で物騒な事を言っていたような気がする。
ヘアピンではなく、何か別の代わりになるような物を探さなければ。
懐中電灯で周囲を照らしながらアレコレ物色していると、樺地が日吉の肩に手をかけた。
「どうした?」
「日吉、コレ…」
「ドライバーか………よし、」
いい具合だ、と答えてドライバーを受け取ると、日吉は再度ロッカーの前へと立った。
ドアの隙間にドライバーを挟むように突っ込んで、思い切り力を込める。
ガタガタと大きな音をを上げるトッカーに、切原が思わず声をかけた。
「な、なぁ、ロッカー壊れるんじゃねぇ?」
「壊れたら壊れたまでだ。
 こんな古いロッカーをいつまでも使ってる方が悪い」
「うわー…俺ら侵入者って自覚ねーだろ、日吉…」
「緩くなってるから、もうすぐ開くは、ず……お?」
「うわぁ!!」
反動で鍵が上がったのだろう、キィ…と静かな音を立ててロッカーの扉が開く。
それと同時に飛び出してきた黒い塊に、裕太が叫びを上げた。



なァ〜おぅ



間延びした鳴き声、その方へと懐中電灯の光を向ける。
眩しそうに目を細めた樺地の足元に擦り寄るのは一匹の黒猫。
そっと樺地が抱き上げて撫でると、気持ち良さそうに喉を鳴らした。
「ね、猫…!?」
「これは…」
日吉が足元に転がり落ちてきた箱を拾って懐中電灯で照らす。
「………ネコまっしぐら……?」
「エサかよ」
「てーことは……」
「用務員の奴、内緒で猫なんて飼ってやがったのか」
なぁんだ、とつまらなさそうに声を上げる切原を見遣りながら、日吉は猫の餌が入った
箱を元のようにロッカーに戻した。










その7: ランナーの謎を解け!





「これが最後、ほんっとーに、最後!」
すっかりやる気を無くして帰ろうとする裕太と日吉をなんとか宥めながら、
切原は彼らを校庭へと引っ張り出した。
「ったく…いい加減すぎんだよ、お前のネタは!!」
「これもくだらないオチがついたら殴るぞ」
「見てみないとわかんないだろ!?
 ほら、どうせ通るんだから見るだけ見るだけ!!」
仕方無いと肩を竦めながら切原に続いてグラウンドへと差し掛かる。
そこで彼らの足が止まった。
こんな時間、グラウンドに人など居る筈が無いのだ。
なのに。
「え……マジかよ…!?」
「すげぇ、本当に走ってる……」
「もうちょっと近くに行って見てみようぜ」
「ウス」
トラックをただひたすら駆けるものの正体を確かめるため、4人はグラウンドへと続く
階段を急ぎ足で駆け下りた。
ただ声も音も無く、乾いた土を巻き上げるようにして走るのは。



「…………あれって、確か校門の近くにあるやつじゃあ…」

「ウス。二宮金次郎………です」



石で出来た塊は、まるで今この時のグラウンドは自分一人のものであるとでも言いたげに、
ただひたすらに動き回る。
暫く無言で眺めていたが、はぁ、と重苦しい吐息を零した裕太が、拳骨で思い切り
切原の頭を殴りつけた。
「いってぇ!!何すんだよ!!」
「お前、アレのどこが陸上部員なんだよ!?」
「……お前のツッコミどころはそこなのか」
「ウス」
期待させるだけさせておいて、肩透かしだ。
自由を満喫する像を余所に、裕太は樺地の肩を叩いて促した。
「樺地、ラーメンでも食って帰ろうぜ」
「ウス」
「俺も付き合うか」
「な、あ、ちょ、ちょっと待てよお前ら、俺もー!!」
ぞろぞろと出口へと向かう仲間達の背中を追って、慌てて切原も走り出した。










謎に迫ってみればどれもこれもくだらないオチがついたものだが、そこはそれ。
苦笑を交えて送り出してくれた先輩達への、笑い話ぐらいにはなるだろうか。
















<END>











ああ楽しかった。(私が)
書きながら、後輩ズも愛しいなぁ…なんて思った次第であります。
さて原題ともなるゲーム、探索編はこれにて終了、次から究明編に
移るわけなんですが、次からは少しシビアでホラーでそれ以上に
不思議度がアップした話が書けるかなぁ?なんてウキウキしてます。
宜しければ後半もお付き合い下さいませ。


次は、真柳赤の立海親子と、お助けは向日か樺地のどちらかで。
まだ決め兼ねているんだよなー…向日の方がいいかなぁ。




目の前で姿を消した赤也を、真田と柳は救えるか!?