自分は、ずっと跡部さんを見てきました。
小さい頃から縁あってずっと傍に居ました。
だから、知ってます。
跡部さんは昔から華やかではありましたが、ずっと独りでした。
類稀なる容貌と知性、それに堂々とした佇まい。
富だって名声だって、彼の欲しいままでした。
そんな上辺だけで人が集まって、彼の本質を知ろうとする人は誰も居ませんでした。

 

 

いつの頃からか、跡部さんの近くに忍足さんと向日さんを見かけるようになって、
その頃から……少し、違った風に見えてきました。
いつもは完璧に作り上げた表情で隠している感情を、少しずつ出してきているような…
そんな風に見えました。
恐らくそれが、初めて自分が感じた…跡部さんが変わった瞬間だったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

跡部さん達が卒業してから半年が経ち、そろそろ自分も進路を決めねばならなくなって、
その時になって、考えました。
自分は今でもあの人の傍に居るべきなのか、否か。
できれば跡部さんの邪魔にはなりたくありませんから。
時々メールでやりとりしていた忍足さんに相談したところ、

 

「何言うてんの!樺地が来ぉへんかったら、跡部が破滅するで!!」

 

…と、何だかよく分かりませんが力説されてしまったので、結局自分は跡部さんと
同じ高校を受けることになりました。
自分の意思は?と思われるかもしれませんが……自分の意思はいつも跡部さんと
共に在りますから、つまりそういうことなんです。

 

 

 

 

 

 

そうして一年が経ち、もう一度跡部さんの姿を見た時に…やっと気がつきました。
今までと違う環境で今までと違う友人に囲まれて笑う跡部さんは、以前と何も
変わらないように見えて、決定的に違ったのです。
この時の気持ちをどう表現すれば良いのかは分かりません。
けれど、自分は確かにその時、動揺してしまったのだと思います。
氷帝の時に見ていた自信の溢れる笑みではなくて…もっと、心に近い部分で
跡部さんはいつの間にか、感情を表に出すようになっていたのです。

 

知っていました、あの頃の笑みは自信という名前の仮面でしか無かったことを。

知っていました、あの頃は恵まれていながらも「幸せ」を知らなかったことを。

 

何が跡部さんを変えたのか、そこまでは知りませんし深入りしようとも思いません。
ですが自分はこの学校へ来て、尚のこと跡部さんのことを見ていたくなりました。
これからどんな風に変わっていくのか。
これからどんな道を歩んでいくのか。
そして手に入れた幸せの意味を知るなら、あなたはきっと心からの笑みを満面に浮かべて、
どんな道でも真っ直ぐに歩いて行くのでしょう。

 

ただ自分は、そんな跡部さんを尊敬していて、ついて行きたいと思っているだけです。

 

 

 

 

 

 

 

樺地一人称。
樺地はもう本当にイイ子に書きたい!!
純粋培養の良い子なんだよ!!
だから跡部も忍足に思うのとは別な意味で
傍に置いておきたいと思うのですよ。