それを、人は『絆』と呼ぶ。
「柳ぃーー!!頼む!!お願いだから、」
「英語の課題を見せてくれという確率100%」
「うわ!なんで分かんだよ!!」
「千石の夏休みの行いを見ていれば解るというものだ。
なにしろ、課題に割く時間というものがこれっぽっちも無かったからな」
「たるんどるぞ千石!」
「そういう真田だって、数学の課題見せてもらってんじゃんか!!」
「う…ッ、こ、これは解らんところを教えてもらっているだけだ!」
「まあまあ、弦一郎も千石も止さないか。
ほら、千石、これで良いのだろう?」
「ラッキー!!ありがとね柳!!今度何か奢るよ〜!!」
「……蓮二、甘やかすのは感心せんな」
「お前が言えた義理では無いだろう?」
「どういう意味だ」
「向日に、現国のノートを渡しただろう」
「………な、何故、それを、」
「俺が弦一郎の事で解らない事があるとでも思うか?」
「……恐れ入る。
それで、この問3なのだが……」
「ああ、それは、」
「柳!!柳は居るか!!」
「…うん?なんだ跡部ではないか。
どうしたのだ血相を変えて」
「てめぇ、何でも良いからとにかく乾を何とかしろ!!」
「…? イマイチ意味が計りかねるのだが……」
「アイツ、また新しい汁を開発したとか何とか言いやがって、
人を実験台にしようとしやがる!!」
「ははは、またか」
「はははじゃねぇんだよ!!お前同室者だろ?幼馴染なんだろッ!?
もうちょっとしっかり監視しておけよ!!」
「いや。そこは個人の自由だから、」
「実験台にされるコッチの身にもなれっつーんだよ!!」
「拒否すれば良いだろう?」
「う…ッ、それができれば、苦労しねぇんだよ……」
「見つけたぞ、跡部」
「……ッ!?」
「ああ、貞治か。どうした?」
「跡部を捜していたんだ」
「今度は何だ?」
「イラチの跡部の為に、カルシウムをふんだんに盛り込んだ汁をひとつ」
「なるほど」
「余計な事してんじゃねぇよ!!」
「ほら、また怒る」
「てめぇが余計なコトするからだろ!!」
「まぁ良いから、ほら、」
「ほらじゃねぇんだよ!!ヤバいモン飲まそうとすんな!!」
「ほぉ、じゃあ忍足に『とっておき』の秘密をバラしてくるとするかな」
「な…ッ、」
「なるほど、跡部が拒否しきれないのはコレか…」
「一体どんな弱みを握られているというのだ、アイツは……」
「乾は居るか?」
「ああ、手塚」
「良かった、此処に居たのか」
「どうしたんだ?」
「お前が部屋で放ったらかしにしているミキサーが、大変な事になっているぞ」
「大変な事?」
「さっき向日がいじっていてな、そこに今しがた千石も混ざって良い玩具になっているが」
「……げ。」
「俺では止めても止まらんからな、とりあえず呼びに来た」
「あれ壊されたら何もできないじゃないか、これはいかん!!」
「つーか一回壊されろ、頼むからよ」
「跡部、キミは一度徹底的に被験者扱いした方が良いみたいだな。
後で覚えておくように」
「……本気で勘弁してくれ」
「ちょお!!跡部!!跡部居るか!?」
「んだよ忍足、血相変えて」
「ええから早う!早う一緒に来てや!!」
「アーン?」
「ほら、急いで急いで!!」
「だから、一体何が…」
「そこのスーパー、お一人様1パック限りで198円やねん!!」
「……あ?」
「せやから、トイレットペーパー!!」
「ちょ、なんで俺様がそんなモンに……!!」
「ええから!!早よ行くで!!」
「ちょ、聞けよ忍足!!」
「「ぎゃああああああああ!!!」」
「ん?この声は向日と千石だな」
「貞治に逆らったようだな」
「今日も元気だな、アイツらは」
「そうだな。良いことだ」
「………漸く静かになったな」
「全く、騒がしい奴らだ」
「この騒がしさにももう慣れただろう、弦一郎?」
「まぁな、今度は逆にコレが無いと落ち着かんというか」
「ははは、全くだ」
こんな毎日が当たり前になってしまったのは、いつからだろう。
もう、余りに日常的過ぎて解らなくなってしまったけれど。
傍に居るのが当たり前で、それが無い日々なんてもう想像がつかなくて。
人は、それを『絆』と呼ぶ。
その一文字で結ばれた俺達の繋がりは、きっと何よりも深く強いのだろう。
「おい真田!!柳!!ちょっと聞いてくれ!!」
ほら、また。
<END>
セリフと蓮二の一人称で。
こういう話ならさくっと書けます。(笑)