忍足くんといっしょ。

 

 

 

 

 

ま ・ ま、今回だけは特別に許したるわ

 

み ・ 見てへん!何にも見てへんで〜 (&真田、柳)



さて。ここで問題です。
目の前で、自分の友人であり同室者である男の熱烈キスシーンを見せられたら、
さて、一体どうしたらええと思う?
むしろどうしてくれたろか?
もともとそういう仲であったのは知ってたけど、改めて目の前で見るとああやっぱりなと
実感してしまうのがやっとなトコかな。
正直、部屋の前でそんな事されてるのも困るし。
いや外じゃないだけマシなんやろけど。
人が入るのを邪魔するように立ち塞がるのはどうかと思うし、寝室でもあるんやから
むしろベッドへ行けと、その背中を蹴り飛ばしてしまいたくなるな。
確かに、帰省していたのは自分の方で、予定より1日早く帰ってきてしまったのは予定外の事や。
だからってこれはあんまりとちゃう?
自分に部屋に入るなと主張されてんやろか?
出て行けと遠回しに言われてんのやろか?
路頭に迷うやん。こんな仕打ちはあんまりや。



…と、ダイニングから寝室に続く扉の前で、そんな事を考えながら忍足は立ち尽くしていた。



真田が忍足に背を向けている状態だったので、当然相手は丸見えだ。
最初から相手など参謀以外に有り得ないと知ってはいたのだけれど。
ふと、それまで瞼を閉じていた柳の瞳が、ゆっくりと開いて忍足を捕えた。
「……っ、」
困惑した表情で視線を合わせると、目元だけで柳は微笑う。
とても困ったような、そんな顔で。



そんな顔で笑うなんて、卑怯やん!!



胸の内でそう文句を言いながら、忍足にできることは見ないようにくるりと背中を
見せてやる事だった。



「……っ、弦一郎、」
口付けの合間の微かな呼吸の時を狙って、柳がくいと真田のシャツを引っ張る。
「なんだ?」
「……そっち、」
小さく背後を指差す柳の視線を追って、真田が凍りついた。
「お…っ、忍足!?
 お前、一体いつから……ッ!!」
「見てへん!何にも見てへんで〜」
背中を向けて、それだけじゃなくわざわざ目まで手で覆って主張すると、
忍足が軽くそう答える。
そして足元にあった鞄をもう一度手にすると、振り向く事無く忍足がひらひらと片手を振った。
本当はきっと、真っ赤になっているであろう真田の顔ぐらい、拝みたいところだけれど。
柳に謝られたから、許してやることにした。



「しゃあないし、今日は譲ったるわ。
 まぁ、ほどほどにな〜」



言うと、忍足はもう一度鞄を掴んで玄関を出た。



<終>

※そして忍足は607号室に転がり込む。

 

む ・ 無茶言うなや・・・ (&跡部)



それは、突然の電話だった。


【跡部……俺、もうアカンみたいやわ……】

「な…ッ、何言ってやがる!諦めてんじゃねぇよ!!」

【せやけど……俺…っ】

「馬鹿野郎!あんなに……あんなに約束したじゃねぇか……!!」

【うん……うん、せやな……けど……ほんまに、辛いねん、俺……】

「今を乗り越えねぇでどうするんだ!……あともう少しじゃねぇか…」

【無茶言うなや…ほんまに、もう、これ以上は無理やねん…】

「…くそ…ッ……俺を……」

【あとべ…?】

「俺を……1人にするんじゃねぇよ……!!」

【跡部……】






【せやけどな……お前はそう言いよるけどな…、
 乗車率200%の新幹線で2時間半立ちっぱは、ほんま辛いねんで…?】

「うるせぇ!!頼んでおいた551は俺の晩メシなんだよ!!
 てめぇ、絶対帰って来ねぇと死刑だからな!!」



<終>

※冬休みの風景。忍足は関西へ里帰り。がっくんも帰省中。べさまは寮。
 電車を降りたい忍足とそれを許さない跡部。そんなカンジ。
 忍足は電車酔い、跡部は晩メシでお互い命懸けの攻防。(笑)

 

め ・ めんどいけど、手伝うたってもえぇで? (&跡部、向日、切原、不二)



「あァん!?フザけた事ヌカしてんじゃねぇよ!!」
「それはこっちのセリフだっつの!!だいたい跡部はいっつもいっつも……」



さっきから派手な言い争いを続けているのは跡部と向日。
この2人、基本は仲が良いのだが、時折とんでもない大喧嘩を始める。
そしてそれはごくたまに殴り合いにまで発展してみたりして。
まさにいつ手が出てもおかしくない状況を、オロオロしながら見ているのは
後輩である不二裕太と切原赤也の2人。



「ちょ…やめて下さいよ2人とも…」
「どっちもどっちだってコトに気付かないんッスか〜?」
「「うるせぇ切原!!」」
「うわこんな時だけハモってやがるよ・・・」


困ったコトに、まだ誰も来てくれない。
切原では火に油を注ぐようなコトしか言わない。
そろそろ胃が痛みだしてきた不二である。





「…めんどいけど、手伝うたってもえぇで?」


ふと、部室の扉が開いて入ってきたのは忍足だ。
跡部と向日はそれすらも気付かないほどにヒートアップしているようで、
全く見向きもせずに口論を続けている。
忍足は2人の元に歩み寄ると、右手で向日の後頭部を、
そして左手で跡部の後頭部を鷲掴みにして、それを思い切り。



ゴ…ッッ!!



「ぐはッッ!!」
「いッだーー!!!」
額を強打されて、堪らず2人は悲鳴を上げた。
それで漸く忍足の存在に気がついたようで。
「て、てめぇ!!何てコトしやがる…ッ!!」
「痛かった!!今のはマジ痛かったぜ侑士!!」
にこにこと笑みを浮かべながら2人の抗議を聞いて、忍足が。



「お前ら、もう黙れや」



声は微塵も笑ってない。
うっかり静まり返ってしまった室内に、不二の胃は更に痛んだとか。



<終>

※忍足は怒らせると恐いですよ。関西人ですから。(笑)

 

も ・ もうえぇ?