忍足くんといっしょ。

 

 

 

 

 

か ・ 勘弁してぇや、この通り!な? (&跡部、&真田)



「あァ!?ふざけてんじゃねーぞ!!
 あれだけ言っておいたじゃねーか!!」
「勘弁してぇや、この通り!な?
 絶対外せへん先約があってんて!!ほんまゴメン!!」
玄関先で両手を合わせて拝み倒す忍足を睨みつけ、跡部が舌打ちを漏らす。
あれだけ、約束をしておいたのに。
「テメェ……ドタキャンとはやってくれるじゃねぇのよ……」
買いたいものがあったから、スポーツ用品店に付き合えと言ったのは一昨日の昼休みだ。
日曜である今日は珍しく練習が休みという事もあり、行ける内に行っておこうと思ったのだ。
機能もだがデザインも凝る跡部は、基本的に買い物へ一人で行く事は無い。
必ず誰かを付き合わせ、じっくりと吟味するのだ。
中学の頃はそれは樺地の役目であったが、今はもっぱら忍足になっている。
曰く、忍足とが一番趣味や好みが合うからだそうなのだが、実際はそれだけでは
無さそうだ。
少なくとも、この怒りようを見る限りは。
「ほんまゴメンって!!この埋め合わせは必ずするし!!
 今日だけは勘弁したって、なッ!?」
「………本当だな」
「ほんまや、今度は嘘吐かへん、絶対守る」
じ、と睨むように見据えれば、逸らされる事無く真っ直ぐ見つめてくる目と合う。
大仰なため息を吐いて、跡部が肩を竦めた。
「…見逃すのは、今回だけだ」
「ほんまに、堪忍な?」
両手を顔の前で合わせて窺うように上目遣いで見てくる忍足が思ったより可愛らしかったから。
しょうがないか、と諦めてその日は手塚を誘うことにした。



惚れた弱みでは無い………と、思われるが、真相は定かではない。





去って行く跡部を見送り玄関の扉を閉めると、忍足がニンマリと笑みを見せた。
それは企みが上手くいった、というような表情で。
「忍足……お前、」
キッチンでは呆れたような表情で真田が座っている。
「ええやんか、これも作戦や」
言うと忍足はテレビの前に座り込んで、改めてコントローラーを握り締める。
画面は、昨日買ったばかりの新作RPGだ。
発売日当日に手に入れて、その日の夜からずっとこんな調子だ。
あの忍足がゲームに齧り付いているという事に、少々の驚きは隠せなかったが、
忍足曰く「RPGは好きやねん」という事らしいし、それはそれで忍足らしいとも思った。



思った、が。



「本当は、跡部との約束を忘れてたんじゃないのか?」
「…………。そんな事、あらへんよ?」
答えるまでの間と微妙に上ずった声音が、真実をありありと表現しているのだが。
敢えてそれ以上追求する事はせず、真田は大きなため息を落としたのだった。



この忍足の姿を写メールで跡部に送ったら、面白い展開になるだろうか?



ほんの少しそんな事が脳裏を過ぎったが、口には出さないでおくことにした。
それが友情というものだ。



…違うような気がする。



<終>

※DQ8発売を記念してvv

 

き ・ 気合い入れて行くで!! (&乾)



それは、本日の部活が終了して更衣室で着替えている、まさにその時の事。
「忍足、ちょっと良いかな」
「ん、どしたん?」
ノートに今日のメニューの記録を書きつけながら乾が声をかけてくる。
こうやって日々の成果をデータにまとめ、、メンバー達にフォームの事や
練習メニューの事を話すのは、いつもの事だ。
これもきっとそうなのだろうと、制服に袖を通しながら忍足が暢気に返事をしたところ。
「今日、これからちょっと俺に付き合ってもらえないかな」
「は?………え?」
間抜けな声を漏らして、もう一度乾の言葉を頭の中で反芻して、また間抜けな声を出す。
乾が言うと何か含みがありすぎてどこか恐い。
それは他のメンバーも同じなようで、皆一様に訝しげな視線を投げかけている。
「つ、付き合うって、何?」
「うん、実は買い物に行きたいんだけど」
「買い物?」
「ちょっと、俺一人じゃ心許ないからついて来て貰えたらと思ってね」
困ったような表情で乾が言う。
それに小首を傾げて、忍足は自分の隣で着替えている男に目をやった。
「………それって、手塚とかじゃアカンもんなん?」
「うーん……それも考えたけど……イマイチだな」
「イマイチなんかい」
どんな買い物をしに行く気なんだ。
とりあえずツッコミを入れておくと、乾がノートをぱたりと閉じた。
「ああ、手塚がイマイチっていう意味じゃなくて……、
 この中では忍足が一番適任。…ま、そういうところだな」
「なんや……ホンマに、あんまええ予感せんねんけど……」
「?どうしてそんなに怪しむ必要があるんだ?
 ただ単に買い物について来て欲しいってだけじゃんよ?」
きょとんとした表情で向日が言う。
だが、それはただ単に向日が解っていないだけだ。



乾が頼み事をしてくるという時点で、何か裏があると思うのが普通。



「向日の言う通りだ。何か誤解があるみたいだな。
 ………実はな、忍足」
「な、何やの?」
「6時からタイムサービスなんだ」
「……………は?」
「だから、」
寮の近所にあるスーパーは、いつも午後6時からタイムサービスを行っている。
そう、主婦の味方のタイムサービス。もちろん、様々なモノが大安売りだ。
当然その時間は、スーパー内で大戦争が勃発する。
「色々買いたいモノがあるからな、どうしても寄りたいんだが……、
 俺一人では勝てない確率が高い」
「……タイムサービス……」
「そういうわけだが、どうだろう、忍足?」



良いものを安く手に入れる、これ、基本。



「よっしゃ、気合い入れていくで!!」
バターン!と大きな音を立てて部室の扉を開くと、妙に強いオーラを放ちながら
忍足がズンズンと外に出る。
どうやら眠れる関西人の血が呼び覚まされたようだ。
あっけに取られて全員が見守る中、
「フ……全く、データ通りだな」
にやりと口元に笑みを乗せ、乾が不適な笑みを見せた。



<終>

※忍足は根っからの関西人気質だといい。

 

く ・ 腐れ縁ってやつかのう? (&乾)



「…跡部の誕生日祝うんって、何回目やろなぁ…」
「忍足の場合は氷帝の時からだから……もう5回目か」
「せやねん、せやけどな、なんやこう…もうちょっと多いような」
「それは言ってはいけない、NGワードだ、忍足」
「乾もやっぱそう思う?まぁ何にせよこう何回も祝っとると、いい加減
 ネタが尽きるっちゅうか……なぁ?」
「ああ、その気持ちは分からないでもないな、俺にとっては手塚がそれに当て嵌まる」
「これも、腐れ縁ってやつやろか?」
「………違うと思うぞ、俺は……」



<終>

※跡部の誕生日の数日前。


何回考えても「〜やつかのう?」なんて言わない…!!と思ったので、
同じ意味だと思われる違う言葉を入れてみました。


ちなみにこのサイトでは、跡部の誕生日のお祝いは3回目…になるのか??

 

け ・ 結局、負けとるやんか

 

こ ・ 根性見せい