忍足くんといっしょ。 |
は ・ はよ行かんと、間に合わんで!! |
ひ ・ 暇やからちょっと付き合うて (&跡部) 「暇やからちょっと付き合うて」 そう言われて、自分が何か言う前に忍足に腕を引かれたので、跡部は眉根を寄せた。 「おい待て忍足」 「何やの?」 「テメェが暇なのは知ったこっちゃねェが、そこはまず俺様が暇かどうかを 訊くべきなんじゃねェのか?」 些か不快そうな表情を浮かべ、だが引っ張る忍足の腕を拒む事無く ついて歩きながら、ただ、跡部はそう告げた。 「何や、意外とそういう所はしっかりしとるねんな」 「そうじゃねェだろ」 「ま、普通は訊くわな」 「解ってんじゃねーかよ」 「せやけど、」 歩く足を止めて、忍足が跡部の方を振り向く。 その顔は、笑っていた。 「お前、自分がどんだけ忙しくても、俺の誘いは断った事、無いやろ?」 だから無駄な事はしないのだ。 そう言って笑う忍足に、跡部はどこかばつの悪そうに視線を逸らした後、 呆れたような諦めたような、そんな吐息を零したのであった。 <終> ※忍足は確信犯。 |
ふ ・ 振られてん・・・好きやったのになぁ (&真田) 「振られてん・・・好きやったのになぁ」 それは、ある月曜日の話。 「……何、だと?」 驚いた、なんてものじゃない。 まさか忍足の口からそんな言葉が出てくるなんて。 テーブルに突っ伏すようにして忍足が切ない吐息を零すのを、真田はある意味 信じられないものを見るかのように凝視していた。 跡部景吾と、この目の前の忍足侑士が、いわゆる『そういう仲』であることは 忍足の同室者でもある真田弦一郎は知っている。 そして、あの跡部がこの関西人にベタ惚れだという事も。 振った……? あの、跡部が。この、忍足を。 有り得ない。 そんなことは、有り得ない。 「ちょっと待て忍足、それは本当なのか?」 「ホンマやねん。 なんか、いつかこうなるんやろなとは思っててんけどな…。 いざそれを聞かされてしもたら、ホンマめっちゃ辛いわ……」 はぁ、と盛大なため息。 それに益々、真田が眉根を寄せた。 いっそ落ち込むを通り越して、半泣き状態の忍足にかけてやる言葉が見つからない。 途方に暮れてしまうのはむしろ真田の方で。 跡部自身に真意を問うても良いが、きっと一蹴されるのがオチだ。 そもそもそこまで突っ込んで話に加わる気は、さらさら無い。 だけどどうしても落ち着かなくて、助けを求めたのはやはり頼りになる頭脳だった。 「ああ、そろそろ来ると思っていた、弦一郎」 何もかも見透かされたような物言いは、やはり何時まで経っても慣れる事は無い。 しかも、今では2人に増えているのだから余計だ。 「来ると思って…いた?」 出迎えの第一声がそれで、真田が不審げに目の前の男を見る。 柳は笑みを隠す事をせず、肩を竦めて見せた。 「忍足の事だろう?」 「何故知っている?」 間髪入れずに問い返すと、やはりな、と言葉が戻ってきて。 まさか忍足の言っていた事は本当だったのだろうかと、一抹の不安が胸を掠めて。 柳の向こう、ダイニングの方からもう一人の頭脳の声が聞こえてきたのはその時だった。 「10時12分……まぁ、頃合だな」 「お前達、」 「弦一郎」 苛立ちを抑えきれず口を開けば、それを遮るように柳が名を呼ぶ。 くすくすと、隠す事も無く笑みを零しながら。 「お前の疑問に答えてやろう。入ると良い」 促されるままにダイニングへと入る。 そこでは乾がテレビのリモコンを何やら操作していて。 「ああ、巻き戻しも丁度終わった。 これで真田の疑問も晴れるだろう」 再生ボタンを押した途端に、テレビの画面に映し出されたものは。 いわゆる月9と呼ばれる、アレで。 そういえば、もともとラブロマンス系が好きな忍足は、この時間帯のドラマは 欠かさず見ていた。というか、月曜9時から1〜2時間のテレビ使用権は むしろ忍足にあったようなものだった。 そもそもニュース以外の番組を見る事の無い真田にとって、それは知る筈も 無かったことで。 ヒロインの女性が勇気を振り絞って意中の男性に告白を試みたものの、 それを拒絶され泣き崩れる。 今回の内容は、どうやらそのような話だったらしい。 面白みも何も無いドラマをただ流しっぱなしにしながら、暢気にお茶を飲みつつ 菓子まで摘んで談笑する頭脳たち。 「ああ、確かこのヒロインの女優、忍足のお気に入りだったな」 「だからだろう、感情移入の度合いも激しい」 「言えてるな」 ははは、と顔を見合わせて笑う(きっと忍足の落ち込みようが手に取るように 解っているのだろう)柳と乾に、正直真田は頭を抱えたくなった。 だって。 確かに柳の言った通り、謎は解けた。 解けたが。 問題は何も解決していない。 むしろこれはブラウン管の向こうの作られた世界。 解決できる筈も無い。 今戻れば確実に忍足の嘆きの餌食にされる。 そんなのも御免だが、だからといって逃げ場も無く。 「迂闊だった……」 苦々しく、真田は言葉を吐き出したのだった。 <終> ※不幸人間、真田弦一郎。 |
へ ・ ヘタレやなーっ |
・か行「腐れ縁ってやつかのう?」 ・や行「えー加減にせい!」 ↑上記を先にお読みください。↑ ほ ・ 放っといたって (&跡部、岳人) ![]() 「あっとっべ!!ハッピーバースデー!!」 「…………なにやってんだよ、忍足」 「放っといたって…」 「おい岳人、これは一体……」 「俺からのプレゼントだ!!涙を呑んでお前にくれてやるぜ。 今日はもう跡部の好きにしてくれてイイからよ!!」 「岳人……お前もう黙れや……」 「へぇ、忍足が俺様のプレゼントになるってか?」 「……なんや知らんけど、そういうコトになっとるみたいやな。 ちなみに俺からのプレゼントは部屋に置きっぱなしやで。 こんな状態じゃ持たれへんしな」 「しょうがねぇな、岳人、じゃあそれ取ってきてやれ。 今年はその辺でカンベンしといてやるぜ」 「らっき!!すぐ行ってくる!!」 「……あんのアホたれが……」 「まぁ、そう言ってやるなよ。金欠でも何かしてくれようと いう気はあったみてぇだからよ」 「俺のこの惨事はどうでもええんかい」 「バーカ、わざわざ岳人からプレゼントなんかされなくても、 お前はとっくに俺様のもんなんだよ」 「…………アホか。」 <終> ※オチ。 |