2人並んで、ベッドに寝転がって。
特に何かをするわけでは無いけれど……いや、しない事も無いけれど、
今日は騒ぎ疲れたから、ただ、並んで眠るだけ。
並んで、抱き合って、互いの温度を感じて、そうして眠るだけ。
高校の入学式も終わり、入る部活動は最初から決まっていたようなもので、
それでもまだ入学したての日々に、部活の余裕は無くて、
正式な新入部員となって部活動に参加するのは、再来週からだ。
そんな土日に、真田と柳は地元に戻ってきていた。
結局、大会やら何やらでバタバタしてしまってできなかった、幸村精市の
退院祝いと、そしてテニス部の打ち上げと、元3年生の卒業祝いを
纏めてやるから帰って来いと、幸村、丸井、そして切原の3人から
各々メールがやってきたのだ。
無論そこに断る術も理由も権利も無いので、快諾して地元に戻ってきた。
離れていたのはまだほんの3ヶ月にも満たないけれど、それでも毎日顔を見ていた
今までとはやっぱりどこか違っていて、それでも変わらなくて、そして懐かしくて、
つい夜遅くまで大騒ぎして、帰ってきたのは23時を回ってしまっていた。
今居るのは真田の家で、柳は自分も実家に戻ろうと思っていたのだが、
丁度今日は家族が旅行に出ていて留守で、1人で居るのもつまらんから
泊まりに来いと言われてしまっては、それこそ断る理由など何処にも無く。
辿り着いた途端、疲れがピークにきていた2人は並んでベッドに倒れ込んだ。
「全く……相変わらず皆元気だったな」
「ああ、全くだ。
自分の体力が衰えたのかと、一瞬錯覚した」
そう言い合って、2人で顔を見合わせて笑って。
肩口に寄り添うようにして寝そべっている柳の髪に指を通せば、
甘えるように擦り寄ってきた。
その口元から、くすくすと小さく笑みが零れてくる。
「どうした蓮二、今日は妙にご機嫌だな」
「ああ、この間凄く良い事があった所なのに、今日は今日で
とても楽しくて充実した一日を貰えた。
良い事づくしで、嬉しいんだ」
「……この間?」
「ああ」
思い当たるところも心当たりも全く無くて、真田が興味を引いたように問う。
「何があったんだ。
俺にも教えてくれ」
「………そんなに知りたいか?」
「焦らすな蓮二」
「はは、そうだな。
貞………ああ、乾がな、」
「乾?」
「もう一度、俺とダブルスを組んでくれると言ってくれたんだ」
「………あ?」
きょとんとした目を柳に落とすと、またくすくすと柳は小さく笑う。
「もう一度、全国に名を馳せるのを目標にしようと、言ってくれた」
「蓮二……」
「小学生の時のいきさつは、前に話した事があっただろう?
………許してもらえた…ようなんだ」
あの日、彼だけを置いてきてしまった自分を。
あの日、言葉だけを残してしまった、自分を。
「…………。」
「弦一郎?」
「…………。」
「もしかして、妬いてるのか?」
「……何というか、一度でもお前とダブルスを組んだ事のある身としては、な」
心中複雑である。
目の前で愛する人に「アイツの方が良い」と言われてしまったようなものなのだから。
「だってお前、乾の方が良いのだろう?」
「ああ」
「…そこで即答するか?普通……」
「悪いな弦一郎、これだけは譲れないんだ」
「何を」
「お前とのダブルスも悪くなかったけれど、」
拗ねてそっぽを向いてしまっている真田の頬に手を沿わせると、柳は無理矢理
自分の方へと向けた。
視線と視線が、真正面からぶつかる。
柳の目は、穏やかに笑んでいた。
「上を目指すなら、貞治とが良い」
よくもまぁ、ハッキリと言ってくれる。
拗ねるのを通り越して、思わずほろりと口元から笑みが出た。
くつくつと喉で笑う真田に、柳が少しだけ擦り寄って。
「見ていろ弦一郎、まだ強くなるからな」
「……そうか、楽しみにしている」
真田の背中に腕を回してぎゅうとしがみ付けば、優しい手が自分の髪を撫でる。
それに、ふと柳が顔を上げた。
「弦一郎」
「…何だ?」
顔を自分の方へと向けてくるのを確認すると、柳はそっとその唇に指を這わせた。
その次に、己の唇を。
ほんの短い時間だけれど、それは酷く甘くて。
「蓮二…?」
「弦一郎、好きだよ」
傍でいつも見守っていてくれている、貴方が、とても。
それに目元に笑みを浮かべて、真田が応えた。
「知っている」
今までの仲間も相変わらずで、
新しい仲間もとても良い奴らばかりで、
近くには、仲直りできた幼馴染の大親友が居て、
すぐ隣には、大好きな人が居て。
嬉しすぎてまた、涙が出そうになった。
<終>
な、なんて砂吐きそうなバカップルっぷりなんだ……!!!!!
…というものを書きたくて目指しました。(目指したんかい!/心のツッコミ)
なんていうか、自分でそうしようと思って書いたものは、あんまし照れませんね。
書いてて勝手にバカップルになってしまったものに対してはこれ以上無いぐらい
恥ずかしくて自分が許せなくなってしまうんですけれども。(笑)
まぁ、そんな事はおいといて。
この話では、別に真田と柳がいちゃいちゃしてどうのっていうのではなくて、
蓮二が心の底から嬉しくて楽しくて幸せなんだ…!!と実感している様を
汲み取って頂けたなら私的に合格です。(笑)
ちなみにこの話には乾バージョンがありますので、
今度はそれも書かなきゃ…!!
乾が蓮二の事を惚気る相手は、ヤツしかいないでしょう。
真田はまだ柳とデキてるから良いとして……ねぇ。
手塚に合掌……。(ちーん)