「頼む、蓮二!!」
「任せておけ!!」
抜群のコンビネーションを見せて、相手のコートにボールを叩き込む。
「くっそ……何なんやあの2人は……」
「中学の時はガッコ違ったもんなぁ……。
昔組んでたのは知ってたけど、まさかココまでとは思わなかったぜ」
とんとラケットで肩を叩きながら言う忍足と、汗を拭いながら頷く向日。
この4人で、丁度ダブルスの試合が行われていた。
今日は少しどんよりとした空模様で、今にも泣き出しそうな雲が空を覆っている。
湿気も多いから、恐らく今夜は雨になるだろうな。
そう言ったのは乾。それに柳も同意してみせたので、まず間違いは無いだろう。
だが、雨さえ降っていなければ部活は行われる。
現時点で試合は4−0で頭脳派ペアがリードしていた。
「アカン、このままやと1ポイントも取られへんなぁ、俺ら」
「くそー!!それはちょっとムカつくーー!!」
「せやなァ、そう思うわなァ、岳人」
「……侑士?」
「ほんなら、そろそろ本気出そか」
口元に笑みを乗せて、忍足はラケットの上でボールをポンと弾ませた。
ベンチに座って、ジャージを膝上までたくし上げる。
見た目には何も異常は無い。
無いのだが……今日は何処か膝の違和感が抜けなかった。
「どうした貞治、痛むのか?」
「いや……そういう感じじゃないんだが……。
よく、解らないんだ」
乾の膝が故障寸前であるという事は、全員が知っている事だ。
柳も、以前話を聞いた事がある。
乾からではなく、手塚からだったが。
どちらかと言えば、乾は言いたがらない方だったから、
彼のそういう所は昔からで、そういった性質は理解していたので、
敢えてそれ以上、柳は乾に膝について問おうとはしなかった。
一緒になって様子を見ていた手塚が、僅かに眉間に皺を寄せる。
「無理はしない方が良いんじゃないか?」
「大丈夫だ、心配しなくても。
まだ打てるよ」
「だが、」
肩の違和感が消えないままでの試合で、突然それはやってきた。
強烈な痛みと、上がらなくなった腕。
あれは関東大会で、氷帝に居た跡部と試合した時の事だ。
もう……1年以上も昔の事だけれど。
過去の事を思い出して、手塚が更に言い募ろうとする。
しかし、それを乾が遮った。
「問題無いって。
心配性だな、手塚は。
そんなだと若白髪になるぞ?」
「お前な…」
「さあ行こう、蓮二。
忍足と向日が待ってる」
「あ、ああ……」
呼ばれて、柳がラケットを手に立ち上がった。
目を手塚に向けると、どこか訴えるような視線で見てきていて、
困ったように肩を竦めてみせると、柳は再びコートへと戻った。
それにやや落胆の色を隠せないままで、審判をしていた手塚が
もう一度審判台に上る。
ちらりと隣のコートに目を向ければ、そこでは千石の審判の下、
真田と跡部が対戦中。
今一度気を取り直すと、手塚は試合を再開するべく声を上げた。
身体は正直なものだ。
違和感を感じたならば、それはもう『異常』なんだ。
故障を甘く見てはいけない、乾。
それは体験した手塚自身が、誰よりも理解している『事実』だった。
<続>
とりあえず、まずはサワリから。
いちお、この話で手塚×乾は纏めようと思ってます。(お、言い切った!!)
ちなみに真田×柳も書く気です自分。
しかもどうやらこの2人は既に出来上がってるくさいです。(笑)
乾は、テニスをプレイする事が大好きであって欲しいなと。
そういう気持ちで書いていきますです。
だから、それを失ってしまうというツラい部分も書かないといけないんだなぁ…。(汗)
うん、頑張ろう。
……書けるスキがあるなら、跡部×忍足も入れたいけど……、
どーもこの連作の中では難しそうだ。(汗)