色々懐かしい話をしながら持ってきた荷物と事前に宅配便で送っていた荷物を
片付けていると、玄関が全開なのにも関わらず、律儀にインターホンを押す音がした。
それに戸口まで出て行ったのは柳の方で、訪れてきたのは手塚だった。
お互い確かに驚きはしたが、可能性としては有り得ない話では無い。
「………貞治に聞いてはいたが、本物を見ると実感するな」
「どういう意味だ」
さっきから、乾といいこの男といい、意味ありげな言葉ばかり吐いてくる。
「いや、他意はない。言葉のままに取ってくれ。
貞治はまだ中で片付けをしているが?」
「乾に、同室者が面白い奴なら紹介しろと言われた」
「……うん?」
「俺の基準で悪いが、面白そうな奴だったから連れてきた」
「誰…」
玄関からは手塚の姿しか窺えない。
その向こうにいるのかと、柳が靴を履いて一歩外へと踏み出すと。
「おお、立海大の柳蓮二だ!!
やっぱり凄いメンツが揃うんだなー」
「君は……確か、山吹の………」
そこに居たのは山吹の千石清純。
そのまま暫く立ち尽くしていると、戻ってこない柳が気になったのか、
乾が玄関まで出てきた。
「あれ、手塚じゃないか」
「乾、所望の品だ」
「品?」
柳の後ろから、ひょいとつま先立ちして乾が覗き込む。
千石にはすぐに気がついた。
「ああ、千石だったのか。
何だか凄い事になりそうだな……」
「ちょっと、なんか俺品物扱いされてんだけど、それってどうよ」
「気にしない気にしない」
ぷうと膨れっ面で抗議してくる千石に、乾は苦笑を浮かべて手を振った。
ポケットの中から携帯の着信メロディが聴こえてきて、柳が取り出し通話ボタンを押す。
「弦一郎か、どうした?
ああ……そうだ。錚々たる面子が勢揃いだ。
面白いから見に来ると良い。
そっちは…………え? 何だ、それはどういう………
お、おい、ちょっと待…………切れた」
フゥとため息を吐くと、柳は携帯をまたポケットにしまう。
それを見ていた乾が小首を傾げた。
「どうしたんだ?」
「ああ、いや、真田が………まぁ、良い。
これから同室者と此処に来るそうだ」
「という事は、何となく展開は想像がつくな」
眉間に皺を寄せて手塚が唸ると、その隣で。
「あー俺、此処に来た時にアイツと会ったぞ、ほら、アイツ!!」
「………それでは解らんだろう」
「あー、えと、何つったけな、ええと・……確か氷帝の……。
名前この辺まで出てるんだけどなー」
喉元を指差して、千石が気持ち悪そうに表情を顰める。
「氷帝……?」
乾がポツリと呟いた。
今頭の中では膨大なファイルの中から氷帝のデータを引っ張り出しているところだろう。
見知った人間の中から、データを一人分ずつチェックしていくと。
「正直、部活の推薦なら何とも言えないんだけど……、
推薦でも一般でも有り得そうな人物といえば、恐らく彼しか居ないだろうね」
「誰だ?」
「跡部かなー……なんて」
「ああッ!!それ!!そんな名前だったッ!!」
漸く閃いたのか、千石が声を上げて肯定する。
が。
「………………。」
跡部という人間の本質を知っている3人からは、重たい沈黙が流れていた。
よりにもよって、アイツか。
もう一度、柳の携帯が音を鳴らした。
取り出し名前を確認して、柳が応答する。
「何だ弦一郎、こっちに来るのでは無かったのか?
………何?4人??
ちょ、だから、それはどういう………ッて、おい弦一郎!!」
どうやらまた電話は一方的に切れたようだ。
重苦しいため息を吐きながら携帯をしまうと、柳が重い口を開いた。
「……4人になった」
「跡部が?」
「それはそれで怖いな」
千石がぽろりと零したジョークに手塚が僅かに遠い目をしてみせる。
「そんなわけがないだろう。
そうじゃなくて、真田が総勢4人でこっちに向かうと言ってきた」
「ということは…新たに誰か2人を発見したという事…か」
どうしてこう、揃いも揃ってこの学校なんだか。
そんなに地元には居たくなかったのだろうか?などという思いまで過ぎってしまう。
なんとなく沈黙が続いた、その時。
「待たせたな」
一言声をかけて近づいてきたのは電話の人物、真田弦一郎。
その後ろにぞろぞろと着いて来る人物が、3人。
1人は千石の言っていた通りの男、跡部景吾。
残りの2人も、あの氷帝学園の人物だった。
「君達は……確か前に、大石と菊丸と対戦してた……、
えっと、君が忍足で…その後ろは向日、だったね」
すらすらと名前を呼んでみせる乾に、思わず忍足が感嘆の声を上げた。
「なんや、俺らもすっかりチェック済みなんや?」
「一度対戦した学校だからね、そうじゃなかったとしても、チェックはしていたよ」
うちの黄金コンビと互角にやり合える実力なんだから。
乾がそう言えば、手塚もコクリと頷く。
どうやら手塚も2人の事は覚えていたらしい。
「……だがよ、この面子」
ぐるりと全員を見回して、跡部が意味深な笑みを見せる。
「もしかして全員、テニスの為に入ったのか?」
答えたのは、その場に居た全員だった。
「「「モチロンだ」」」
入った手段は各人で違っても、目的はやはり1つしかない。
この場所で、より強く。
「……ふっ、皆が同じ意志を持つ…それは重要な事だ。
もしかしたら、その辺りも踏まえて部屋割りされたのかもしれねーな。
俺は…正直テニスで入ったワケじゃねーが、この面子ならまたテニスしてみても
面白いかもしれねーな」
笑んで跡部が言う。
確かにそれは正論だ。
同じ意志を持てば、その分団結力も各々が持つ力も上がる。
今よりもっと強くなりたかった。
その為だけに、この地に来たのだから。
「お互い顔も名前も知っているし、今更自己紹介の必要も無いだろう」
ただ、上手く人間関係が築けていけるかどうかは、別として。
真田はそう言うと、僅かに口元を緩めた。
それは友好の印。
「これから3年間、宜しく頼む」
<終>
ええと、まぁ、こんなカンジで。
あーよく読み返したら、向日が全然喋ってないー!!(汗)
いいよいいよ、あとでちゃんと書くから!!(><)