#2 宍戸、仲間になる。
部屋に戻ったら、どことなく期待に満ちた目をした宍戸が待っていて、 何となく苛ついた跡部はまず彼の頭を一発殴りつけておいた。 それから、受け取った袋を部屋の隅に放って、近くにあった椅子を 引っ張ってきて座る。 「…で、王様の話って、何だったんだ?」 やっぱり気になるのか、宍戸が単刀直入に訊いてくる。 それに眉を顰めながらも跡部は重く口を開いた。 「……じゃあ、行くんだな?魔王を倒しによ」 「行かなきゃしょうがねぇだろうが。 ここまでされといて、やっぱりヤメときます、なんて言えねぇだろ?」 諦めの混じった言葉を聞いて、ふぅんと頷きながら宍戸は隅に投げ出されたままの 袋を手にとって引き寄せた。 紐で縛られている口を解いて、中を覗き込む。 「ええと……こん棒が2本だろ? あと檜の棒と……お、旅人の服が入ってら」 「……他は?」 「えーと……」 跡部に言われて宍戸は中身を取り出して床に並べる。 今自分が言った通りの武器防具が並び、その横にちょこんと小さな皮袋が置かれて。 「………以上。」 「シケてやがるな、それだけかよ…」 はぁ、と吐息を零して、跡部は宍戸から皮の袋を受け取って中を覗いた。 「何が入ってんだ?」 「金。路銀の足しにってヤツだろう」 「いくら?」 「アーン…?数えねぇと確かな事は言えねぇが、まぁざっと見て 50ってところだろ」 「うわ、ショボいな。旅人の服1着も買えねー…」 「この俺様に全世界の未来を託す割には、やることに誠意がねぇよな」 「ま、しょーがねぇだろ」 ごそごそと床に並べた装備品を袋に戻すと、宍戸はそれを跡部に差し出しつつ 満面の笑みを浮かべて言った。 「頑張れよ、跡部!」 一瞬の静寂。 その次にはまた、盛大な跡部のため息。 何か?と訊ねようとする前に、彼からの一言があった。 「馬鹿言ってんじゃねぇよ。 テメェも行くんだろうが」 何を言われたのか理解が遅れ、ワンテンポ遅れて宍戸の表情が驚愕に変わった。 「げえぇぇぇッ!! 何で俺まで行かなきゃなんねーんだよ!!」 「寝言は寝てから言うんだな、宍戸。 仲間を集めて行けって言われたっての、聞いてなかったのかよ?」 「いやいやいやその仲間は俺じゃなくたって…」 「アーン?テメェも来るに決まってんだろうがよ」 「つーか、ンな話は聞いてねぇ!!」 「テメェのツラ眺めてて、たった今俺様が決めたんだよ。 言っとくが、拒否権は無ぇからな」 「横暴だーーーーー!!!」 「横暴でも何でも良いからよ、さっさと準備しろ。 テメェだけじゃ心許ねぇからな、他にも仲間を捜しに行くぜ」 心許ないなら仲間から外してくれよ!という宍戸の願いは聞き届けられる事無く、 跡部に急かされるままに、宍戸亮は仲間になる羽目となった。 <NEXT> |