− Message −  Side.O









夏。
カンカン照りの太陽は、否応無く剥き出しの腕に焼きついてくる。
有体に言えば………暑い。
暑ぅて暑ぅてもうやってられへんわ。
冷たいスポーツドリンクが飲みとうなって、俺は近所のコンビニへ買いに出た。
ものの10分ほどの距離やのに、それだけでじっとり汗ばんでくる。
今日が部活のオフ日でほんまに良かった。
俺、熱射病でブッ倒れてるところやった。
コンビニのでかい冷蔵庫の中からいつも飲むスポーツドリンクを出して、
ふいに視線をやればアイスがこれまた美味そうに並んでるモンやから、
ついついそっちにも手が伸びてしもうた。
ああ、これやから無駄遣いが直らへんねんな……。
レジで精算を済ませ、10分の距離が勿体無い(つぅかアイス溶けてまう)し
公園を突っ切って行く短縮コースを選択する。
そこで、見つけてしまった背中。
もう、誰かなんて顔を見なくても判ってしまう、蜂蜜色の髪。
何しとんのか知らんけど、ベンチでぐったりしとる。
ていうかあんな日なたで何しとんねん、アホとちゃうか?
ため息ひとつ零して素通りも何やしって声かけるために近付いたら、
それよりも早く。




「……くそ、なんでこんなに暑ィんだよ……」


「夏やからに決まってるやん」




名前を呼ぶより先に思わずツッコミを入れてしもうた。
しもた、驚かそうと思たんに。
しゃあないから、コンビニの袋からスポーツドリンクを取り出して、ソイツの頬に
ピタリと当てる。
すると頭が自分の方に落っこちてきて、蒼色の目と合った。
ああ、やっぱり跡部やった。
「……何でお前が此処に居るんだ?」
「単なる通りすがりや。俺んちこの近所やねん」
「そうだったか?」
「暑さでボケとんな〜……ほら、お中元」
「おう、サンキュ」
ボトルを差し出せば、遠慮もクソもなく奪い取ってぐいと一気に煽りよった。
……普通ココは「いいのか?」ぐらい訊かへんもんなんやろか。
まぁ、コイツに遠慮を求めるだけ無駄なんは解っとんねんけどな。
それが跡部っていう男なんや。
「日傘も差さんとこんな直射日光浴びるなんて、お前も相当イカれとんな」
「あァ?」
「何しとんの」
「一人我慢大会」
「アホや」
この炎天下の中を日なたでじっと我慢するんか。
俺やったら絶対イヤやな。
ほんま、この男の考えるコトはよう解らんわ。
思わず笑ってもうたら、俺を見る跡部の目がほんのちょっとだけ柔らかくなったような気がした。
このお坊ちゃまのコトや、大方ここまで散歩しに来て暑さに負けたってトコやろうな。
まぁ、負けたなんて表現は絶対認めへんやろけど。
しゃあないな。
「予定は?」
「特には何も」
「ほな、ウチ来る?」
「いいのかよ」
「別に、俺もヒマやし。少なくとも此処より涼しいで?」
「そりゃあ良い」
なんとなく退屈しとったから誘ってみたら、意外にも簡単にノってきよった。
相当暑さに参ってしもうてるらしいな。
そういえばアイスも買うたんやった、早う戻らんと。
「何してんねん跡部!早よ行くで!!」
「ああ、わかったわかった。ンな焦んなよ」
ペットボトルをゴミ箱に投げ込んで立ち上がる跡部を俺は待つ。
待ちながら、一度だけ手を空に翳して太陽を見上げた。
ギラギラと相変わらず照りつけるソレに、少しだけ目を細めて。




「……そない焦らんでもええんとちゃう?」




この世界に光を与える太陽は嫌いやない。
嫌いやないけど……こんなに強く照りつけてきよったら、
なんかあっちゅう間に無くなってしまいそうな気ィせぇへん?






太陽の光に晒されて映える世界を、俺は見届けていたい。


この世界に、跡部の立つこの場所に、太陽よ永遠の輝きを。







【END】







※六原さまへの捧げモノでした。読むだけ公開。
 忍足から夏の太陽へのメッセージというコトで。
 言わずもがな跡部のとセットです。(笑)