※樫木様&寿様のサイトの作品、「真・三国無双病院」
 の設定となっております。まだご存知でない方は、
 今すぐ
『うっかりズム。』へ行ってらっしゃい!!(笑ってコラえてぽく/笑)

↓準備のできた方から、さぁどうぞ〜vv↓

 

 

 

 

<真・三国無双病院外伝 誕生日逸話 >

 

 

 

 

人づてに、今日が彼の誕生日だと聞いた。
勿論、良き友人で居たいと思っている自分にとっては、
それは是非とも祝ってあげたい事であった。
やはり、祝い事と言えば、贈り物をするが鉄則だろう。
そう思って、丁度非番なのを良い事に、街へと出てみた。
誰かの誕生日を祝ってやるなんて、幼い頃以来の事であったから、
何を贈ろうかと品定めする目も心なしか楽しんでいるような気もしなくはない。

 

「しかし……一体、何を贈ったものか……」

 

最初は、身に付ける装飾品でもと思いはした。
店の主人に色々見せては貰ったが、どれもこれもあまりぱっとするものではなく…
というよりは、どれもこれも彼は持っているような、そんな気がした。
おまけに、店の主人には女性への贈り物だと勘違いされ、慌てふためいて
出てきてしまった。
次に、服はどうだろうと思い、そちらに向かった。
店であれこれ服を眺めてみたが、自分にはそういう物を選ぶ感覚は皆無に等しい。
等しいという、自覚はある。
だが、それを横に置いておいても…ひょっとして、彼ならここにあるもの全てを、
上手く着こなしてしまうのではないだろうか。
何を贈っても一緒なのではないだろうか。
そう思うと……何だか、違う感じがした。
贈りたいものはそんなものではなかった。
結局、その店も出てしまった。

 

 

 

 

 

良いものが見つからなくて、一時休憩とばかりに茶屋に寄ると、
偶然にも張遼と出会った。
「おや、これは徐晃殿。こんな所でどうされた?」
「張遼殿…?これは奇遇ですな。
 貴殿こそ、如何されたのです?」
「いや…呂布殿と待ち合わせをしているのだが、少し早く来てしまって…。
 時間つぶしに、ここで茶でも、と。
 貴殿は一体何を?1人とはまた珍しい……」
彼の隣の席に腰掛け、出てきた茶を飲み干すと徐晃は小さく吐息をついた。
「実は、探し物をしているのです」
「探し物?……何を探しておいでか?」
「それが、実は判らないのです」
「………は?」
苦笑交じりの徐晃の答えに、張遼は不思議そうな顔で徐晃を見返す。
「判らないとは、一体どういう……」
「ええと……最初からお話しした方が宜しいですかな」
団子を一口頬張って、徐晃が苦笑を浮かべた。

 

それから、暫しの時。

 

「…………成る程、」
低く唸って、張遼が茶を一口飲むと天井を見上げた。
彼の欲しいものなど一目瞭然なのに、それに気付かない彼がまったく可笑しくて。
思わず天井を見上げたまま、くっと喉元で笑った。
「……張遼殿?」
それに訝しげに見てくる徐晃に「失礼」と一声かけて姿勢を正し、
徐晃の手元にある皿の上にある団子を取ろうとして手を叩かれた。
「張遼殿、これは拙者のです!」
「……冷たいな」
「そういう問題ではありませぬ!!」
「まぁ、それはともかくとして」
ず、と茶を啜りながら、張遼が呟いた。
「多分、彼ならきっと何を贈っても喜んでくれるだろう」
「……それは、解っているのですが……」
そんなに気取らなくても良いとは思っている。
だから、街に出て最初に目に入った彼に似合いそうなものを、と決めてはいたのだ。
だが……結局。
「何を見ても『違う』としか思えないのです。
 すると逆に、何を贈れば良いのか解らなくなって……」
「じゃあ、何も贈らなければ良いのでは?」
「それでは本末転倒です」
「………我儘だな」
呆れたため息とともにそう言うと、そこで徐晃の反論は途切れた。
ちらと横目で見遣ると、少し俯いた徐晃が呟くように。
「やはり……拙者は、我儘ですか?」
「あ、いや、その、」
そんな徐晃の様子に慌てて張遼が手を振る。
「我儘というか………注文が多い、気はするが?」
「……そうかもしれません」
「それでも、着眼点は悪くないと思う」
「……?」
「彼に似合うもの、か。
 本当は徐晃殿が気付いていないのだろうが、もっと簡単な所に
 あるのだがな……ま、それは見つからないなら仕方ない」
飲み干して空になった茶碗を卓に置いて、張遼がゆっくりと立ち上がった。
「期限が今日中としても、まだ時間はある。
 もう少しあちこち回ってみると良いだろう。
 きっと何か、見つかる筈だ」
「そうですな……ええ、そうします」
ひとつ頷いて徐晃が笑うのを見ると、張遼は小さく微笑を浮かべて
「では、お先に失礼する」
と一言言い置いて、席を立った。
さりげなく、団子の刺さった串を一本掠め取って。
「………張遼殿!!」

 

「相談料だ」

 

徐晃の声にも動じた風もなく、背中越しに答えて張遼は出て行った。

 

 

 

 

 

それから街の商店をぐるりと回ったが目に付いたものはなかった。
歩き回った気疲れもあり、そろそろ帰ろうと寮の敷地に向かって歩いていく。
結局、彼への贈り物は見つからなかった。
「参ったな……選ぶという事が、こんなに難しいとは…」
そう独りごちて、徐晃が大きな吐息をつく。
そのまま景色を眺めながら帰路をぶらついていると、その視界にひとつの世界が
目に入った。

 

風に吹かれゆるりと舞う、真っ白の花弁。

 

夕暮れの太陽も手伝って、それは一種幻想的な光景にも見える。
呆然とそれを眺めて、徐晃が呟いた。
「あぁ……こんな所に、」
こんな所に、求めていたものがあったなんて。

 

 

 

 

 

今日は一日仕事だった。
仕事というか、司馬懿にこき使われていた、というか。

 

「たまには早く帰らせて貰えませんか?
 折角の誕生日なのですから。ねぇ?」
「誕生日だから、いつも以上に使ってやっているのだ。
 私からの贈り物だ。仕事という名の、な」
「そもそも、専門外の人間にやらせて良いのですか?」
「構わんだろう。私もしょっちゅう誰かさんの身代わりに
 診察室に放り込まれているのだからな」
「……だから、嫌な予感がしたんですよ。
 朝からコップは割れるし美しく手入れした爪は欠けるし
 靴の紐は切れるし……」
「それはご愁傷様だ」
「貴方が言わないで下さい」

 

そんなやり取りを繰り返して、やっと解放されたのは日も沈んで
随分してからだった。
寮に戻り部屋の扉を開いて中に入ろうとした時、後ろから声をかけられた。
「張コウ殿!」
聞き慣れた声に、思わず笑みが零れ出る。
何ですか、徐晃殿?と言おうと振り返って……一瞬視界が、白に染まった。
「え………?」
自分の身に撒き散らされたものが、白い花弁だと気がついたのは、
その向こうに立つ徐晃の嬉しそうな表情を見てからだった。
「ああ……やはり、」
「………?」
どこかほっとしたように、徐晃が言葉を紡いだ。

 

「やはり、張コウ殿にはこれが似合う」

 

思わず、贈った己が見惚れてしまいそうなほどに。
「……徐晃殿、これは?」
「拙者からの贈り物です」
この、花弁が。
はらはらと廊下に舞い降りる花弁を見遣って、張コウが呟いた。
「白……ですね」
「本当は何か、もっとちゃんとしたものを贈ろうと思っていたのですが…、
 なかなか思うような物が見つからず諦めかけていたのです。
 ですが…帰りがけに、この花を見つけましてな」
陽に照らされながら舞うその花弁は、光の当たり具合で色とりどりに変化した。
どんな色にも染まり、また、白は白であり、何色にもならず。
枝や土に咲き誇る花ではなく、風に吹かれ気ままにたゆたうその花弁が、
真っ先に張コウを思い起こさせた。
「誕生日おめでとうございます、張コウ殿」
「徐晃殿……」
思わず手が伸びて、徐晃の身体をぎゅっと抱き締める。
「ありがとうございます、徐晃殿。
 とても素敵な贈り物ですよ」
「あ、あと、それからですな、」
抱き締められて赤面した徐晃が慌てたように足元の袋を指差した。
「も、もうひとつ、あるのです。
 おまけですが……」
「え?」
何とか張コウの腕から逃れた徐晃が、袋の中から一本の酒瓶を取り出した。
「実は、途中で南ばん兵の主人に会いましてな。
 張コウ殿の誕生日だとお話すると、これを頂きまして」
いつも自分達が買って飲むような酒に比べると、ほんの少しだけ上等の。
「張コウ殿、今日はこれで一杯やりませんか?」
「勿論ですよ」
嬉しそうな笑みを浮かべて差し出された酒瓶を受け取り、張コウが答える。
その背後に、突如。

 

「お、何かイイもん持ってんじゃねェか?」

「……早く帰らせろと喚いていたのは、こういう事か」

 

声だけで誰かを察知すると、げんなりした表情で張コウが振り返った。
「夏侯淵殿に司馬懿殿、何か御用ですか?」
「何だよ、そんなあからさまに嫌な顔しなくても良いだろ。
 お前と一緒に酒でも飲もうと思って来たのによォ」
「全くだ。ほら、追加の酒と、ついでにつまみまで用意してある。
 感謝してもらいたいぐらいだな」
「私には、ここぞとばかりにこのお酒をたかりに来たようにしか見えませんが?」
夏侯淵と司馬懿の言葉に負けじと張コウが言い返す。
その張コウの背をつついて、徐晃が一言。
「良いではありませんか、張コウ殿。
 人数も多い方がきっと楽しいでしょうし」
「徐晃殿…………」
徐晃にそう言われてしまっては、自分にはもう断る事などできない。
落胆のため息と共に肩を落として、張コウは部屋の扉を大きく開けた。

 

「どうでも良いですけどね、飲んで騒ぐのは構いませんが、
 散らかさないで下さいよ?」
「……ちょっと待てよ、何で俺見て言うんだお前!?」
「そうか妙才殿、自覚がなかったのか……」
「まあまあ張コウ殿、片付けは後で拙者が手伝いますから」

 

扉が閉まってしんと静まり返った廊下、
吹き抜けた風に乗って、白い花弁が踊るように、舞った。

 

 

 

 

<終>

 

 

ハッピーバースデー、樫木さん!!

次の誕生日も是非祝わせて下さい!!(先長ッ!!)

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

実は以前、樫木さんちの病院ネタに惚れこんでしまった私は、「病院ネタでSSを書かせて欲しい」
と、本当に図々しいお願いをした事がありまして…。そして、幸運にも許可を頂くことができました!!(感涙)
そういうわけで、とうとう病院ネタで一発やらかしてしまいました!!
張徐にしようしようと思っていたのに、気が付けば自分的好きキャラオンパレードに。(駄目すぎ)

基本は張徐で、それを取り巻いて色んな人たちを書きたかったのですと言ってしまえば
聞こえは良すぎですが(汗)、蒼魏は皆仲良しvであって欲しい私の希望です。(笑)

余談ですが、この後、話を聞いた張遼が呂布を連れて酒を片手にやってきて、
夏侯淵から話を聞いた曹操が夏侯惇やら典韋やら許チョやらほぼ全員に触れ回って、
結局その日の酒盛りはとんでもない事になってしまったとか。(笑)

 

そしてそして、ホントにどうにもどうでも良い自分設定ですが、
休みもシフト制というわけで(医者が全員休むわけにもいきませんから…)
この日に休みの予定だったのは、正確には徐晃と呂布。
張遼は有給休暇です。ちゃっかりもぎ取って呂布とおデートです。(笑)

その代わりに歯科に放り込まれたのが司馬さんで、
(彼は何でもできるヒトが希望なのですが駄目ですか樫木さーん!!/ヲイ)
おかげでちっともできなかった自分の仕事を、帰ろうとしていた張コウを捕獲して手伝わせていた。
……という、状況設定でありました。(長いよ)

 

ありがとうございました、樫木さん。また書かせて下さいvv