※この話は、真・三國無双3の修羅モードをベースにしております。
ありえない設定でも勘弁して下さい。(笑)
〜張徐ぶらり二人旅シリーズ〜
<第1回・山賊退治>
「……っ、はっ…はぁ…っ、」
壁に背を張り付かせ、荒い呼吸を抑えて極力息を潜める。
「向こうへ逃げたぞ!!追え!!」
「逃がすな!!」
その向こうでバタバタと走る男達の姿。
それを気配だけで見て取り、徐晃は小さく吐息をついた。
民に頼まれて賊退治に赴いたは良いが、あんなにも統率が取れているとは
正直思わなかった。
しかも他の山賊とも裏で繋がっていたらしく、次々と援軍がやって来る。
連携を組んで四方八方から襲ってくる賊に、単身の徐晃は苦戦してしまう。
牙断を強く握り締め、大きく息を吸う。
あと2人……せめて1人でも仲間がいれば、このような窮地もすぐに何とか
なるのだろうが…。
仲間と別れた矢先であったため、かつての仲間達は今自分がこんな状況に
あっている事など、小指の先ほども思ってはいないだろう。
「何とか……できるところまでやってみるしかないか」
弱気になってしまえば、こっちの負けだ。
もう一度深呼吸をすると、意を決して徐晃は飛び出して行った。
村の中で、縋りつく人々を前に張コウは困り果てた吐息をつく。
「お願いします!!
あの武士様を助けて下さい!!」
「いや…あの、ですから……ねぇ、
其の人が、貴方がたが仰る根城に向かってから、
もう1日が経つのでしょう?
………諦めた方が良いんじゃないですか?」
「そんな!!儂等の為に出向いて下すったあの武士様を見捨てて、
どうして諦められましょうか!?」
だったら、貴方達が行けば良いだけの話でしょう。
喉元まで出かかった言葉を寸前で何とか堪えて、張コウが苦笑を浮かべた。
「………困りましたねぇ」
一晩の宿を探そうと思って立ち寄っただけなのだが、面倒な事になってしまった。
一人だけの気ままな旅をしていた。
ただぶらぶらと、各地を見て回って歩くだけの。
面倒事に巻き込まれるのは御免だ。
この村はもう、諦めた方が良いか。
「とにかく、私はもう此処を発ちますから。
誰か他を当たって下さい」
つっぱねるようにそう答えて、張コウが足早に村を出る。
入り口の門を出て少し歩いた所で、数人の子供が座り込んでいるのが見えた。
遊んでいるわけでもなくて、ただ道の向こうを眺めながら。
何だか放っておけなくて、声をかけた。
「こんな所に居ては危ないですから、村の中にお入りなさい?」
「いいの。」
木の枝を持って地面に何か描いている小さな幼女が、ぽつりと答えた。
「…え?」
「いいの。ここで、おじちゃんを待ってるの」
「……おじちゃん?」
「みんなのためにね、わるい人をこらしめに行ったの。
だから、かえってくるのを待ってるの」
「そう言って、動かねぇんだよなー」
その幼女より少し年上の男の子が、口を開いた。
「帰ろうって言ってんのに、絶対動かねぇんだ。
ほっとくわけにもいかないし、一緒に待ってんだけどよ」
ほんの少し、胸に湧き出た好奇心。
「……随分、慕っているのですね。
どんな方なのですか?」
「十日ぐらい前に村に来た、旅の人なんだ。
口下手でぶきっちょなオッサンだよ。
でも、すんげぇイイ奴だ!!
俺たちとも仲良しなんだぜ?」
「悪者退治も、ふたつ返事で引き受けて行っちゃったしな」
「無事でいるといいんだけど…」
「怪我とかしてねぇかな」
「ちゃんと、帰ってきてくれるかな」
笑顔を見せながら、子供達が口々に言う。
懸命に地面に絵を描き続ける幼女の手元を覗き込んで、張コウが訊ねた。
「何を描いているのですか?」
幼女の描く、人間かどうかも判断し難いその絵は、それでも確かに笑っていた。
「おじちゃんだよ。」
街道を歩いていて、途中で半端に繋がっている獣道が目に付いた。
そちらへ入れば、あとは賊の根城まで一本道だと言う。
「………仕方ないですねぇ………」
駄馬に繋いだ荷物の中から、もう使う事は無いだろうと思っていた武具を
取り出し、腕を通す。
見てやろうじゃないか。
人々が、子供達が慕う、その男を。
もう、限界かもしれない。
襲い掛かる山賊を手にした牙断で斬りつけながら、徐晃が周囲に視線を巡らせた。
途中、頭領を追い詰める事ができたのだが、駆けつけた援軍に気を取られた隙に
どこかへ隠れられてしまった。
それを見つけ出して制裁を加えなければ、この戦いは終われない。
だが……体力が、もう。
「ここまでか……?」
村を出る前に見せられた、あの心配そうな表情を浮かべた子供達の姿が
脳裏を過ぎる。
このまま自分が負けてしまったら、殺されてしまったら、
自分という人間を差し向けたあの村の人々は、一体どうなってしまうだろう。
「負けるわけには……」
勝って帰るしか、道は無いのだ。
気力を振り絞って、牙断を大きく振るう。
だが、その切迫した神経は判断力を鈍らせていた。
「死にやがれ!!」
後ろから飛び掛ってくる山賊を、もうどうしようもなかった。
目の前の敵を切り捨てるだけで精一杯で。
斬られる!と顔を顰めて背後を見遣った瞬間。
「そう簡単にはいきませんよ!!」
男達が皆、身体を切り裂かれて崩れ落ちた。
何が起こったのかが即座に理解できず、敵も自分も呆然として
その方を見遣った。
鋭利な鉤爪を腕に、髪を高い位置でひとつに束ねた男が、
にこりと微笑みながら身体に纏わりついた土埃を払っている。
「危ない危ない、もう少しであの童達に怒られるところでした」
「………貴殿は、一体…」
驚きを隠せずそう徐晃が問うと、武具をゆるりと構えながら男が言った。
「お話しは後にしましょう。
ここは私に任せて、貴方は頭領を見つけて下さい」
表情は綻んでいるものの、その目は実に真剣だ。
信用しても構わないだろう。
そう判断して、徐晃がぺこりと頭を下げた。
「………かたじけない」
隠れた頭領はすぐに発見した。
頭領を地に伏して牙断を担いで戻って来てみれば、すっかり待ちくたびれた
様子の男が、累々と横たわる屍の間でぽつりと座り込んでいた。
「………これは……全て、貴殿が…?」
「嫌ですね、貴方のも少しは混ざってますよ?
ほら、この美しくない切り口のものは貴方がやった相手に間違いありません」
「…………。」
転がる死体の腕を持ち上げ傷口を指差し力説する男を前に、徐晃が暫し絶句する。
辺りが静かになっている事に、漸く気がついたのだ。
まさかこの男が一人で、壊滅させたというのだろうか。
そして、思い出したようにぽんと手を打つと、男に向かってぺこりと頭を下げた。
「そ、そうであった!!
貴殿の助けがなければ、恐らくここで命を落としたのは拙者の方だ。
ご助力、深く感謝致す!!」
「気にしないで下さい。乗りかかった舟ですから」
立ち上がると、男がにこりと微笑む。
その整った綺麗な顔に、思わず顔に朱を走らせて、徐晃がもう一度頭を下げた。
「貴殿は一体、どうして此処に…?」
「村の外で、子供達が座り込んでいましてね」
そこでのいきさつを簡単に話して、男は肩を竦めた。
「梃でも動かない子供達を村の中へ入れるには、貴方を連れて帰るしか
ないと思いましてね」
「そうでありましたか……」
しょうがない童達だな、とぼやくその姿が、あまりにも想像通りだったから。
思わず吹き出してしまった。
「なっ、何を笑うのでござるか!?」
「だ、だって………成る程、確かに………」
おじちゃん、ってカンジですよね。
腹を抱えて笑い転げる男を尻目に、徐晃がどこか理不尽そうに眉を顰めた。
「……さぁ、皆待っていますから、帰りましょうか。
ね、おじちゃんvv」
「………何か今、物凄く納得のいかない単語が聞こえたような気がするのですが…」
「まあまあ、」
あ、そうだ。
そう呟いて、先に立って歩く男が足を止める。
不思議そうに徐晃が視線を向けると、男がくるりと振り返った。
「まだ、お名前をお聞きしていませんでしたよね?」
「ああ…そうでしたな。拙者、徐公明と申します。
貴殿は何と……」
「私、張儁艾と申します。
多分きっと、まだ外で童達が待っていますよ。
早く戻りましょう。ね、おじちゃんvv」
「……………まだ言いますか」
もうすぐ空は、夜の闇。
張コウの予想通り、子供達はまだ同じ場所で待っていた。
「あーー!!おじちゃんだ!!」
先に気付いた幼女が声を上げる。
それに徐晃が慌てて子供達に駆け寄っていった。
「おじさん、おかえり!!」
「おっさん!!無事だったんだ!?」
「おじちゃん、怪我とかしてない?」
「皆待ってるよ、早く中に入ろう、おっちゃん!!」
「なあなあオッサン、悪者退治の話、聞かせてくれるんだろ!?」
一人ぐらい、お兄さんと呼んでやる子はいないのか。
黙って聞いていた張コウが、後ろで爆笑していたのは言うまでもない。
それから数日が経ち、張コウはまた旅を続けるべくその村を後にした。
それまでは気ままな一人旅だったのが、今度は二人に増えていたという。
<終>
45000のキリリク権ゲットされたキコ様からのリクエストで、
「消息を絶った徐晃を助ける張コウ」というリクエストを頂きました。
………なんですかコレは!?(苦笑)
またすごくすごくハズしたものを書いてしまったような気がします。
しかも徐晃を「おっさん」なんて酷すぎます!!
だけど、ちっさい子供から見れば、やっぱり33歳はおっさんかなぁ…なんて
そんな事を考えてしまいました。(汗)
今回は、凄く凄く楽に書けたような気がします。
張徐はあくまで×ではなく&を意識して書いたもので…。(苦笑)
スケールのちっさい戦いも楽しかったですvv
機会があればこの設定はまた使いたい…かも。
ちなみに、第1回とか書いてますが、続きは今のとこありません。
誰かリクエスト下さい。(ヲイ)
また妙なものを押し付けてすみませんでした。
キコさん、キリリク権ゲットおめでとうございました〜〜!!