『花の意味』
花を指先でもてあましながら、ゆっくりと道を歩いていく。
晴れた秋の空に掛かる薄い雲が、ゆったりと流れていくのが見えた。
「どんなお顔されますかね」
くすくすと笑いながら、張コウは彼の元へと歩いていく。
真面目で真っ直ぐな瞳を持つ青年。
初めは大して気にも留めなかったのに、少しずつ少しずつ彼を知っていく毎に惹かれていった。
運命の紅い意図でもあるのだろうかと思うほどに、どんどん惹かれていく様は張コウ自身
嫌いではなかった。
もっとも公私は混合しないのは、互いの中では当たり前であるから、逢えない日もあったりする。
それさえも次に逢える愛しさに代えてみようか。
そう思える相手が彼、―――徐公明であった。
「ふふふーvvこれで何回目でしょうね…」
徐晃に告白をするのは―――。
「この花の意味に気がついて欲しい…」
そう呟いた張コウの言葉を、徐晃は聞いていたのだろう。
夏侯惇が苦笑間際に呟いたのを聞いた。
『徐晃が、≪花の意味を知ってますか?≫と紅くなって聞いて
きた時は、正直驚いたがな…』
たまたまその日を夏侯惇と一緒だった時に、張コウはそう聞いた。
まっすぐな彼は、花を片手に女官に問うたらしく。
おしゃべり好きな彼女らは、そんな徐晃を噂していた。
耳に挟んだとき、張コウは正直一瞬だけきょとんとしてしまったのだ。
花の意味に気がついて欲しい………と、一瞬だけ張遼に零していたのを聞いていたらしい。
もっとも張遼がそう徐晃に言った可能性も無くはないのだが。
どっちでもいいのだ。
彼が花の意味を調べてくれようとする。
その態度が真っ先に嬉しかったから―――。
「ふふふvv秋には告白の花が沢山ありますからね♪」
小さく笑って花に唇をそっと押し当てる。
ふたりは友達以上恋人未満という位置にいたが、徐晃なりの努力があった上で
今の関係を築いていっている。
どちらかと言うと堅物な印象にあるのに、彼は意外と柔軟な思考を持っているせいでも
あったりする。
そんな徐晃を思って、花を選ぶのがとても楽しかったり。
「徐晃殿」
いつもならすんなりと開く扉が、今日に限って開かずにいた。
張コウは首を傾げて、そっと扉を開いてみる。
その先にあった光景はとても笑顔で迎えられないのが見て分かった。
ずかずかと執務室に入っていくと、沢山の書簡に囲まれて書き上げの物が広がる上に
腕を組んで顔を、書簡に押し付けてすやすやとお休みをしていた。
「あらあら…」
頬を軽く走る墨に張コウは笑みを浮かべて、その隣に静かに椅子を置いて座ってみる。
同じようにして覗き込んだ顔には、楽しい夢でも見ているのか僅かに頬が緩んでいる。
頭を起して周囲を見ると司馬懿からの預かりであることが分かった。
「また民の苦情を回されていたんですね…」
頭を撫でてみたいが、それをしたら起してしまいそうで。
張コウはためらった後、書簡をひとつ見てみた。
以前、どうしてこんなに彼に書簡を回すのかと、司馬懿に聞いてみた事があった。
『あやつの民に対する想いが、一番通じやすいからだ』
簡潔に告げられた言葉に、張コウは取り上げた徐晃の策をみて納得してしまう。
一生懸命に考えたのだろう。幾つモノ方策が乗っており、所々に張遼や夏侯惇などの
文章も混ざって見えた。
「私にも聞いてきますものね…」
真っ直ぐな思想は思いやりがあり、優しく響くのだろう。
今は自己の執務室できっと夏侯淵からの花に焦ったり、でも平静を保とうとしている姿が
くっきりと浮かぶ司馬懿を思い笑みを広げた。
これ以上居れば、きっと彼が目を覚ましたときに驚く姿が見れ
るが邪魔はしたくないと張コウは立ち上がった。
寝ている徐晃の側に花を置き、静かに席を離れる。
「おやすみなさい…徐晃殿」
おわり。
ましばサマからの頂きもの第3弾ですー!!
こんなに沢山もらっても良いのだろうかと思ってしまうぐらいです。幸せだぁ、私…vv
まだまだ発展途上の2人がとっても愛しいです〜vvv
結局、張コウが何の花を贈ったのかが気になってきになって…!!(><)
やっぱりほんわり優しい話が、この2人には似合うと思います…!!
きっとこの後目を覚ました徐晃がお花の存在に気がついて、
張コウが来ていたんだってコト知ってアワアワするんですよー!!
寝顔見られたー!!ていうかどうして起こしてくれなかったんだー!!みたいな。
司馬懿からのお仕事の期限が迫ってれば良いです。しかもまだ全部終わってなければ
もっと良いです!(オイオイ)最終的に、
「張コウ殿…、少しばかりご助力下さらぬか……!!」
って泣きつけばステキです!!(妄想中)
はう、ステキなお話、本当にありがとうございましたー!!(><)