空が夕焼けに染まる頃、一人、また一人と子供達は帰路に着く。
母親に手を引かれて行く子もいれば、兄や姉が迎えに来て一緒に並んで
帰っていく子供も居た。
夕焼け頃の公園は、そうしてまた、一人ずつその姿を消して行く。
いつもそんな風景を見つめていたから、そしていつも自分は一人だったから、
羨ましいと思う事は無かった。
ただ、誰も居なくなった頃になると少し寂しくなってくるので、ダメな天然パーマと
ダメな眼鏡が居る万事屋へと帰るのだ。
けれど、今はそれもできない。
何故なら、万事屋には戻っても誰も居ないからだ。
コツンと足元にあった小石を蹴飛ばすと、沈もうとしている太陽を見遣って
開いていた傘を閉じて近くのベンチに腰掛ける。
薄暗くなったこの場所には、今は自分を含めてほんの2,3人しかいない。
しかし他の子供達も、その内誰かしらが迎えに来て帰っていくのだろう。

 

「チャイナさーん」

 

自分を呼ぶ声がしたので、神楽は公園の入り口の方へと目を向ける。
今日は非番なのだろうか着流し姿の近藤が、こちらに向かって
手を振りながら歩いてくるところだった。
「……何の用アルか?」
「いや、たまたま通りがかったらチャイナさんが居たからさ、
 一緒に帰ろうかなって思って」
「帰る?」
「そ、確か今日の晩飯はハンバーグだって言ってたぞ?
 食いっぱぐれるワケにはいかねーもんな」
傍まで歩み寄ってくると、立てかけてあった傘を手に取って、空いた片手を
近藤は神楽に向かって差し出した。
「けどゴリー、今日は非番ネ。
 アネゴの所に行かなくて良いアルか?」
遠慮するように問い掛けてくる神楽を見て、近藤は思わず苦笑を浮かべた。
本当のところを言えば、そのお妙に会うために足はスナックに向かって
いたのだけれど、通りすがりにしょぼくれた少女の顔を見てしまうと
近藤にはそっちを放っておく事ができなかったのだ。
スナックにはいつでも行けるけれど、この沈んだ顔の少女を笑顔にすることは
今しかできないことだから。

 

「帰ろう、チャイナさん」

 

にまりと笑みを乗せてもう一度近藤が言えば、少しの間を置いた後に神楽は
その手を掴んだのだった。
「……仕方ないネ、一緒に帰ってやるアル。
 食堂のおばちゃんのゴハン美味しいし」
「本人に言ってやりゃ、きっと喜んで大盛りにしてくれんじゃないか?」
「おお!その手があったネ!!
 でもゴリーのハンバーグも半分よこすヨロシ」
「ええッ!?
 3分の1ぐらいになんない!?それ」
「……しょうがないアル、それで勘弁してやるネ」
「ははは、そりゃどうも」

 

 

夕日に照らされて、長い影とそれより半分ぐらいの短い影が、
手を繋いで公園の角を曲がり、仲良く一緒に消えていった。

 

 

 

 

 

 

<終>

 

 

 

 

 

 

寂しんぼ神楽と、それを知ってる近藤さん。