最初は単に、格好つけたかったから、なんていうガキ臭い理由だったような気がする。
けれどソレは、いつの間にか手離せないものになってしまっていた。
「トシ、お前また本数増えたな」
「………ストレス溜まってんだよ。
主に総悟のせいでな」
「酷ぇや土方さん、何でも俺のせいにすんなィ」
心配しているような呆れているような、そんな顔をして言ってくる近藤に、
煙草を咥えながら平然と土方がそう切り返し、心外そうな目をして沖田が声を上げる。
日常的によくある光景なのではあるが、正直な話近藤にとっては少々頭の痛い
話でもあったりする。
それでなくても土方は、普段からマヨネーズを大量に摂取してコレステロールの
塊を体内に溜め込むような生活をしているというのに、更にニコチン中毒な上、
タールまで肺にずっしり乗せているのだから。
よくよく倒れないもんだと感心して、違う違うと近藤は首を横に振る。
「俺はね、お前を心配してんだよトシ。
お前が倒れちゃったら俺はどうすりゃいいんだよ」
「心配ねぇって。
それに、俺は俺の好きなモンを好きなように摂ってんだ。
それで死ぬってんならむしろ本望だよ」
「あのなぁ………ちょっと総悟、お前も何とか言ってやれよ」
「俺は止めませんぜ、土方さん」
近藤に促されて沖田が土方に目を向ける。
その口元がニヤリと歪んだものだから、煙草に火をつけようとした手を止めて
土方が訝しげに眉根を寄せた。
「マヨやヤニのせいで、土方さんの血管が凝固しようが破裂しようが、
脳みそ地すべり起こそうが、俺は知ったこっちゃありやせん。
むしろソレで死んでくれたら、アンタは幸せだし俺は繰り上がりで副長席だしで、
これぞ願ったり叶ったりってヤツでさァ。
さ!じゃんじゃん煙草でもマヨでも摂取して、なるべく早く死んで下せェ」
なんてこと言うの総悟!!と思わず近藤が声を上げるが、沖田の方は何処吹く風だ。
構わずライターで火をつけようとした土方が、ピタリとその手を止めた。
これでは全て総悟の思惑通りなのではないか?なんて思ってしまったものだから。
それはそれで、心底面白く無い。
「おい、総悟…」
「大丈夫でさァ、近藤さん。
ホラ、見てみなせぇ」
「………あれ?
トシ、煙草吸うんじゃなかったの?」
ポケットに煙草とライターを仕舞いこむ土方に、近藤がキョトンとした表情で
そう声を上げた。
<終>
土方さんと煙草の話。(と、言い張る)
むしろ総悟の台詞が書いてて凄く楽しかったんですが。
まぁ、煙草はほどほどに、ね。
一応自戒であります。(笑)