叢に寝転がって、夜空に広がる星を見上げる。
その昔、天人が全てを塗り替えてしまうまで、空はとても広かった。
長閑な田舎の片隅で、皆でよく酒を飲みながら月や星を眺めたものだった。
なのに、今はこんなにも狭く、切り取られたような世界。
広く近かった空が、今では行ける手立てがあるというのに
何処か遠ざかったように感じてしまう。
「近藤さん、アンタまたそんな所で何やってんだ?」
「よォ、トシか」
思えば、あの頃とは何もかもが変わってしまったと思う。
自分の立場も、周りの環境も、この背に背負い手に抱えるものすらも。
結果、それが正しかったのかどうかは未だに答えは出せないけれど。
「今日は流星群が見れるっていうからさ、いい場所先に陣取って待ってんだよ」
「……まだ3時間もあんだろ、寝ちまっても知らねぇぞ」
それでも、自分が何処に居たって、右と左には変わらない面々がいる。
きっとこれから先、それは自分や周りがどれだけ変わっていっても不変のものだ。
ものだ、と思っている。
「近藤さん、おでん買ってきやしたぜィ。
これでも食いながら、ゆっくり待ちましょうや」
「お、総悟!気が利くなァ!!」
じゃあ俺はコレ、とトシが出してきたのは一升瓶、それから猪口が。
ちゃんと、3つだ。
「……何笑ってんですかィ、近藤さん?」
「そんなにおでんが食いたかったのかよ?」
俺の右と左には、いつだってこの2人。
それがこんなに嬉しいことだと知ったのは、江戸に出てきてからの事だ。
<終>
近藤さんから見たトシと総悟。
なんていうかな、口には出さないけど、
近藤さんはいつだってこの2人に感謝してるといい。