「綺麗アルな〜」

ソファに寝そべり雑誌を捲っていた神楽がそう呟いたので、何を見ているのかと
新八が覗き込めば、花嫁衣裳の特集だった。
天人が来てから結婚式には白無垢でという意識は徐々に薄れつつあって、その雑誌に
載っていたのも、デザインが異なる真っ白なドレスばかりだ。
「へぇ、神楽ちゃんってこういうのも興味あるの?」
「女に生まれたからにゃあ、一度ぐらい着てみたいって思うもんアルよ。
 まったく、そんな事も分からないなんて、新八はだからダメガネって言われるネ。
 彼女が出来ないのも頷けるアル」
「なんでたった一言訊いただけでソコまで言われなきゃなんないワケ?」
不満そうに顔を歪めてそう言うと、新八はでも、とソファの背凭れに手をかけた。
「神楽ちゃんが結婚するとしたら……どんな相手なんだろうね」
「ま、ダメな天パとダメな眼鏡じゃない事は確かアル」
「俺もこんな胃拡張酢昆布娘は御免だっつーの」
それまで向かいのソファに寝転んだままでジャンプを読んでいた銀時が、神楽の言葉に
億劫そうに返す。
雑誌を閉じて身を起こし、うんと背伸びする神楽を見ながら、新八も苦笑を浮かべた。
「案外、沖田さんとかだったりして」
「勘弁しろヨ、ぱっつぁん。
 アイツと私は命を狙い合う仲ネ、そんな事になったら結婚式が惨劇になるアル」
「ちょ、なに殺しあう前提で話進んでんのさ」
「興味はあるアルけど、そんな気はさらさらないネ。
 今は銀ちゃんと新八の面倒見てるだけで手一杯ヨ。
 定春!散歩行くアルよ、おいで!!」
ソファに立てかけるようにしてある傘を手にとり定春を呼ぶと、ワンと一声鳴いて
定春が神楽の後をついて外へと出て行く。
夕飯までには帰っておいでよ、と新八が声をかけると、はいヨーと返事があって
玄関の閉まる音が響いた。
「………ったく、面倒見てやってんのはこっちだっつーの!」
神楽の足音が階段の下に消えてから、銀時がジャンプを放り捨てて寝そべっていた
体を起こす。
納得いかねぇと呟いた銀時をお父さんみたいですよ、と新八が苦笑いをして言って、
でも、と向かいの空いたソファに腰掛けた新八はしみじみと口を開いた。

 

 

「いつかその時が来たら、僕も銀さんも泣いて見送るんでしょうね?」

 

 

家族みたいなモンですから。
そう言って笑った新八の言葉を、銀時は肯定も否定もしなかった。

 

 

 

 

 

<終>

 

 

 

 

 

万事屋銀ちゃんは仲良し家族。