「お…お前達はまた…!!」
わなわなと肩を震わせながら呆れているのか怒っているのか分からないような
そんな複雑な表情で睨み付けてくるのは桂だ。
それに飄々とした顔を崩さず頭を掻いているのは銀時で、ただ笑い続けているのは
坂本だった。
そしてその坂本に肩車されて、半ベソをかいた童が一人。
「だから銀時と坂本を一緒に行かせるのはよせって言ったんだぜ、俺は」
「他人事みたいに言うな高杉!!
どうするのだ、此処はそう安全な場所じゃないのだぞ!!」
「しょうがねーじゃんかよ、なァ坂本?」
「そうじゃそうじゃ!!
戦場だからこそ、うろうろしとるモン放ってはおけんかったきに。
これは立派な保護である!!」
「そうだそうだ!!」
「うるせェ腐れガキ共が!!」
ひゅんっと刃が一閃して、思わず条件反射で銀時と坂本が身を引いた。
避けやがったかと小さく舌打ちを零して、高杉が鞘に剣を収める。
じとっと睨みつけたら怯えたか、ヒッと坂本に肩車されている子供が
微かに悲鳴を上げた。
「俺ァな、どうしようもねぇガキと泣き虫のガキが大嫌いなんだよ」
「うるっせぇ!!オメーだって俺と同い年じゃねーか!!」
「一緒にすんな、精神的な問題だ」
言ってズカズカと坂本の方へ歩み寄り、尻餅をついてしまっている坂本の
股間の大事な部分に蹴りを一発見舞ってやってから、高杉は自分達より
ずっと小さな子供の襟首を摘み上げた。
「おいガキ、名前は?」
「………しん、ぱち…」
「あァ!?
聞こえねぇなぁ、もっとデケー声で言え!!」
「しむらしんぱち!!、ですッ!!」
両目を細めて凄めば、ヤケになったのか子供が大きな声で怒鳴ってきた。
また泣くかと思ったのに、キッと大きな目で見返してきたのが。
(……気に入った。)
満足そうに笑うと、高杉は子供を銀時の方へと放り投げる。
上手く受け止めた銀時が、おっかねー…と小さくぼやいたのを新八は聞いた。
「お前らがちゃんと面倒見ろよ、俺ァ知らん」
「ちょ、おい、高杉…!?」
くるりと踵を返して奥へ引っ込んで行くのを、戸惑ったように桂が声をかける。
銀時は何気無く坂本に視線を送り、まだ股間を押さえてのた打ち回っているのを
見遣ってから、今度は腕の中の子供に目を向けた。
「お前、あの高杉を黙らせるたァ、なかなかやるじゃねーか」
「………え?」
「アイツ、ほんとキレたら怖ぇからなぁ。
ま、ヅラの方はああ言ったが本当は面倒見の良い奴だからよ、
なんだかんだでここまで来ちまったら、放り出したりなんかしねーよ」
「銀さん…」
「大丈夫、ちゃんとオメーの姉ちゃん、見つけてやるよ。
それまでは此処で大人しくしてろよ?」
「……うん」
天人に警戒して定期的に拠点の周囲を巡回するようになった。
その先で、見つけたのだ。
蹲って泣いているのを声かけて、問えば姉とはぐれたと言い、
では何処から来たのかと聞けば、籠を使って来たので分からない、と、こうだ。
「籠じゃあなァ……範囲が極端に広がっちまうな…」
「姉上ぇ……」
「ああほら、泣くなっつの!!
大丈夫だって、ちゃんと見つかるって!!」
また泣き出しそうな顔をしたので、その頭をわしゃわしゃと撫でながら、
銀時は困ったように眉根を下げる。
子供なんて扱ったことがないのでどう接すれば良いのか分からないのだ。
「いつまでもグズグズ泣くなって、男だろーが!!
そんなじゃ立派な侍になれねーぞ!?」
慰めるために適当に言ったつもりだった。
だがその思惑とは裏腹に、子供は少しだけ吃驚したように目を見開いて、
けれどその目はすぐにキュッと強いものに変わる。
今にも泣き出しそうに戦慄く唇を強く噛み締めて。
「うん。」
何がキーワードだったのかは知らないけれど。
その子供は、それきり泣くことは無かった。
これが、志村新八との出会い。
まだ、彼が6歳の時の話だ。
<終>
ちびっこ新ちゃんと愉快な仲間達。(えー?)
もしかしたら続くかもしれません。