剣を突きつけて無理矢理船内に乗り込んで、まずはその相手を2人で同時に
しばき倒した。
とりあえずはボスを倒す前に、捕まってしまった新八と神楽を助けに
行かなければならないと言えば、勝手にしろ、なんて返事が戻って来る。
「おーおー、今から俺がお前の左腕だ!なんて言ったワリにゃあ、
えらく放任じゃないですかい?ヅラさんよォ」
「ヅラじゃない、キャプテン・カツーラだ」
「まァ何だっていいや。
そんじゃあ、ま、こっからは別行動ってコトで」
「だから俺と一緒に来て俺の用事を済ませるのに手を貸せば、
後で共に戦ってやると言っているではないか」
「うわ、何ソレ、何その自分最優先の意見は。
悪ィが俺もチンタラ待ってやれる程ヒマじゃねぇんだよ。
………早ぇコト荷物引取りに行かにゃあな、追加料金とられちまう」
「そうか、ならば此処で分かれるぞ。
せいぜい右腕一本で取りこぼしのないようにしろ」
「てめーもしくじってんじゃねぇぞ、ヅラ!」
「ヅラじゃない、キャプテン・カツーラだと言っている!!」
「どっちでも一緒だろーが!!何そのこだわり!?」
「大きく違う!殺すぞ!!というか後で覚えておけよ!!」
最後にはお互い怒鳴りあって、通路を右と左に分かれた。
桂は春雨の所有している麻薬を全て処分したいと言っていたので、倉庫の方へ。
銀時は捕われた仲間を助けるために、とはいえ場所の見当が皆目付かないので
行き当たりばったりで走るしかなかった。
「あーもう、ほんと、アイツらドコ行っちまったんだよ」
不審者を迎え打つ為に出てきたのだろう、押し寄せてくる海賊連中を木刀で
殴り飛ばしながら、とにかく駆けた。
連行されて行く姿を見かけた場所には、既に人はない。
あの時歩いて行った方向の扉を足で蹴り開け、このままじゃ埒が明かないと
手近を闊歩していた下っ端海賊をしばいて襟首掴み上げ居所を吐かせた。
戦艦の外壁を這うように伸びる通路への扉を先刻と同じように蹴り飛ばし、
扉ごと吹っ飛ばす。
そこから外へ出たは良いものの、良くも悪くもこの戦艦はデカすぎる、
見回しても右は海、左は鉄板が続くだけで位置も何も分かったモンじゃない。
「あーもうホントめんどくせぇなぁ。
てっとり早く出てきてくれた方が、ラクで良いんだけどなぁ」
なんであんなガキ2人の為に、こんな必死になって走ってんだか。
そう考えて、銀時はガリガリと頭を掻いてため息を吐いた。
何でもいいから合図なり目印なりあれば、もう少し動きようがあるのだが。
と、そんな折だった。
「僕達は攘夷志士なんかじゃないし、桂さんの居場所なんて知らない!!」
この声は、新八だ。
しかもえらく高いところから聞こえてくる。
訝しんだ銀時が通路の手摺から身を乗り出すように上を仰ぎ見て、
ギョッと目を見開いた。
見覚えのある赤いチャイナ服がブラブラと揺れている。しかも戦艦の外側を。
「おいおいおい、何の冗談だよ。
あんな所から落とされたらひとたまりもねーぞ」
いくら頑強な夜兎とはいえ、限度ってものがある。
ただ、場所は分かったが行くにしたって距離がありすぎる。間に合うかどうか。
「……ちっくしょー。
面倒事はお断りだってのに、いきなりタイムアタックですかー?」
事は一刻を争う、モタモタしているヒマはない。
通路をダッシュで駆けようとした時、再び上から声が降ってきた。
「此処は侍の国だぞ!!お前らなんて出てけ!!」
侍の国。
ああそうだ、そうだった。
天人が闊歩してるとはいえ、幕府が受け入れてしまったとはいえ、此処はまだ。
「………いーい事言うじゃないの、新八クン」
にやん、と口元が笑みの形に歪められた。
いつだってそうだ、自分の中にある一本筋のスイッチを入れるのは。
「此処は侍の国だから、やっぱ最後に剣握って護るのは侍じゃねェと」
しまらねぇよなァ、そう呟くと銀時は外側の手摺に足をかけてよじ登る。
左腕にしてるフックには桂がつけた仕掛けがある、が、正直腕自体が使い物にならないので
使用することはないと思っていた。
だけどそんな事、言ってられるか。
「痛ェからやりたくなかったんだけどなァ。
………そうも言ってらんねェか」
此処は侍の国で、自分は侍なのだから。
「待ってろよ新八、神楽!!
今スグ助けてやっからなァ!!」
袖の中にあるスイッチを押す。
ポーン、と間抜けな音が上がったが、ロープのついた鉤爪は想像よりも勢い良く
飛び出していった。
−俺の中の大事な部分にあるスイッチを押すのは、いつもアイツだ。
たった一人の言葉で、動かされちまうワケだよ俺は。
コレってなんかちょっとすごくね?
そんで……まァ、後はご存知のとおりの展開があるワケさ。
<終>
なんていうか、そんなカンジ。(笑)