#01 胸中の黒
「三番隊より報告!!
攘夷派の別グループが南方向から取り囲んでいるとの事です!!」
「……やれやれ、囲まれちまいやしたねィ」
「囲むつもりが囲まれた……か。
どうする、近藤さん?」
「……まさか別の奴らと組んでるとはなぁ……驚いた。
けど、どうせ此処までやったんだ、できれば全部捕まえちまいたいよなぁ」
「そう言うと思ったぜ」
はぁ、と仕方無さそうに吐息を零すと、土方は傍らに止めてあったパトカーに近寄り
無線で指示を出し始める。
「南方向に別のもう一団が現れたという情報有り。
六〜八番隊はそっちに回れ。
できるだけ早く相手の位置を探し出して陣を作るように。
済んだら報告を入れろ」
『了解』
言葉のすぐ後に返事がして、土方はそこで無線機を置いた。
しんと静まり返った夜の闇の中を、静かな足取りで数名の隊士が行き来をしているだけで
他は全員物陰に身を潜めて、合図が出るのを待っている。
突入の合図を出すだけだったのに、別の攘夷グループが出てきたという報で
待たざるを得なくなった。
このタイミングで出て来るという事は、まず間違い無く今自分達が検挙しようとしている
攘夷グループと繋がりがあるのだろう。
どうせなら両方取り押さえたいと思ってしまっても仕方が無い。
「……どうだ、トシ?」
「今準備させてる。
ったく……面倒臭ぇ事になっちまったぜ」
「ははは、そう言うなって」
近寄ってきた近藤に肩を竦めて土方が答えていると、ザザ、と無線機から音が聞こえて
自然と2人の目はパトカーの中へと向いた。
『敵は30人程度の模様』
「他に伏兵の可能性は?」
『今偵察に向かわせてますが、まだ何とも……』
「それじゃあ、六番隊は元の持ち場に戻らせろ。
代わりに一番隊を向かわせる。
そっちは何が起きるか全く分からんからな、
指揮系統は全部そっちへ回すぞ。
指示はトシにそこから出すようにさせる」
『……了解しました』
「な、ちょ……近藤さん、アンタ何言ってんだ…ッ!?」
横からいきなり無線機のマイクを引っ手繰ったと思ったら、近藤は言うだけ言って
無線を置いてしまった。
あんぐりと口を開けて土方が言えば、うん、と近藤はひとつ頷いてみせる。
「こっちだって待つのはそろそろ限界だ、時間をかければかけるだけ相手に悟られる。
そろそろ踏み込みてぇんだが、あっちがモタついてるならしょうがねーだろ。
お前が行けば、何かあっても臨機応変に対処できるだろうし、な?」
「……こっちはどうすんだよ」
「俺がやるさ。
なに、作戦どおりに進めるだけなんだ、問題ねぇよ」
「………仕方ねぇ、か」
重い吐息を零すと土方は頭の中をすぐさま切り替え、奇襲に対する対策を何パターンも
考え始める。
腕っぷしも強いが、基本的に土方という男は軍師タイプなのだ。
苦笑を零すと近藤は俺も配置につくから合図はトシが出せよと言い残して、そこから
立ち去っていった。
すぐ傍を、指示を受けた一番隊が静かに駆け抜けていく。
途中でその中の一人が足を止めた。沖田だ。
「土方さん、早く向こう側行きましょうや」
「……ああ」
「どうしたんでィ」
「いや……」
「副長がそんなじゃ士気に関わりまさァ。
今すぐ世代交代といきやしょう。
なに、土方さんの後は立派に俺が継いでみせまさァ」
「…って何テメーが後継ぎ候補になってんの!?
つーか代わるワケねーだろが!!」
いいから行くぞ、そう言って土方は沖田の腕を掴んで歩き出した。
正直、あまり良い予感はしていない。
だが何が原因でそう思うのかが分からないから、行動に躊躇いが出る。
(何がマズイ………別グループが出てきたことか?伏兵がいるかもしれないことか?)
だが、どれも違うような気がする。
しかしどれも合っているような気がする。
それとも、他に。
(俺と総悟が一緒にいることか?………近藤さんが一人になる、ことか?)
これらもやはり、どれも違うような気がするのに、どれも合っているような気もする。
判断のつけようが無ければ、とりあえずこのまま動くしか無い。
既に事は計画を中止し撤退するという事ができないところまできていた。
−続−
これを書き始めた段階で、話がどう転んで行くのか
自分自身まったく見えておりません。(汗)
出だしと終わりだけ頭に浮かんでて、真ん中が思い描けて
いないもんですから、どんな話になってしまうのかも
自分で分かってなかったりして。
が、書く側も読む側もドキドキするような、そんな話を
書けるように頑張ってみたいと思います。
いや、先が見えてこなくて既に私はドキドキしてますけど!(ダメだろ)