結局、カールスは答えを教えてくれなかった。
そして今、俺はそのカールスの墓前へと花を手向けている。
その理由がわからないままで。
「ねぇカールス……どうしてお墓には花を供えるんだい…?」
語りかけても、答えてくれる相手はいない。
教えてくれる優しい人は、もういない。

 

 

だけど、カールスは残してくれた。

きっと答えを教えてくれるだろう、たった一人の相手を。

 

 

「ねぇエマ、どうしてお墓には花を供えるんだい?」
「どうしてって……」
カールスの墓前に、以前と同じように花を供えて。
でも今日は一人じゃない。
エマと一緒に、カールスに会いにきたんだ。
「お墓の前で祈るのは知ってるよ。
 そうやって祈ることで、俺は人間に近付くんだ」
「それは……少し、違うと思うよ」
「え?」
墓前で祈りを捧げていたエマが閉じていた目を開いて、俺を見る。
いつも思うんだ、どうしてこの人は俺をそんな悲しそうな目で
見るんだろうかと。
「それじゃあクロム、君は祈りを捧げる間、何を思っているんだい?」
「何をって……別に」
「真似事だけなら動物にだってできる。
 祈ること自体が人間に繋がるわけじゃない。
 そうじゃなくて……思うことが、何かを思うことが、人に繋がる」
「エマ…」
「別に祈る必要も無いんだよ。
 そうじゃなくて、そこにカールスがいると思って語りかけてみる方が
 より人に近付いていけると、私は思うんだけどな」
「………そっか、」
なんとなくエマの言いたい事が分かってきた気がする。
自分の思いを、カタチにする方法。それが祈ることなんだ。
じゃあ俺がカールスに伝えたい事って言えば……。
「……カールス、俺、元気でやってるよ。
 カールスがいなくても強くなれるように、頑張るから、さ」
ぽつりと墓前でそう呟けば、くすりとエマが小さく笑みを見せた。
優しく髪に触れてくる手はまだ俺を子供扱いしてるんだけど。
エマこそ俺を弟か何かだとでも思ってるんじゃないだろうか?
「また来るよ、カールス」
立ち上がって俺と同じように墓前にそうエマが話し掛けると、
ちら、と俺の方を見て。
「行こうか、皆が待ってる」
「うん」
今はエマが一緒に居てくれるから。
まだまだ俺は足りない事をたくさん学んで、いつか絶対人間になろうと
そう思うんだ。
頑張るから、カールスはそこで見ててくれよな。

 

 

「またな、カールス」

 

 

俺の言葉に答えるように、ひゅう、と優しく風が吹いた。

 

 

 

 

<終>

 

 

 

なんでエマがクロムと一緒にいるのかはさておき。(置くな!)
カールスの墓前でのクロムの言葉を聞いた時に、いつか絶対
その答えに辿り着いてくれたら良いなぁと思ったのです。

 

そもそもエマが一緒に居るのもおかしいんですけど、まぁその辺は
おいおい書いていければ良いなぁ、なんて。
学校が休みに入ってエマが実家に帰るたびに、クロム団はこっそり遊びに
来てるといい。(笑)
3つ子とか絶対エマに懐きそうだな…。