この手はもう、離さなきゃならないのか?

 

 

 

 

<branch road>

 

 

 

 

ハンモックに揺られて、天井を眺めながらその【時】が来るのを待った。

待ちながら、ほんの少しだけ考えた。

他にも道は、無かったのだろうか?

 

いや、道なんてない。

 

どんな道を歩いていても、この航海をしている以上、

いつか別れが来る事は判り切っていた。

そうだ、俺も知ってたんだ。

ただいつも、アイツが、苦笑いを浮かべながら直してくれたから。

だから、そんなことないと、錯覚してしまっただけなんだ。

 

 

初めて、アイツと本気で殴り合った。

 

 

ムカついた、とかそんなんじゃねェ。

アイツの言いたい事だって、本当は解ってるつもりなんだ。

でも俺は船長として、前へ進む道を、示さなきゃならなかった。

俺達は、この航海を絶対成し遂げる。

目指すものを手に入れる。

その為に集まったんだから。

だから、こんな所で立ち止まるわけにはいかないんだ。

アイツが此処でコイツと立ち止まるっていうのであれば、

此処がアイツと俺達の分かれ道だ。

 

 

わかってるんだ。でも。

 

 

 

 

 

 

 

色々、思い出した。

コイツを手に入れるきっかけをくれたのも、

いつも派手に暴れて傷つけたコイツを直してくれたのも、

この場所で一緒に、たくさん話して、たくさん笑ったのも。

全部全部、アイツだった。

 

だけどコイツとは、もうサヨナラだ。

 

ゾロはいつも甲板で昼寝してたっけ。

ナミは部屋で海図引いたりとかしてたな。

サンジはキッチンで美味いメシ作ってくれた。

チョッパーはなんかよく解らねェ薬とか調合してたな。

ロビンはいつも、甲板で本を読んでいた。

それで、アイツは……そうだ、アイツは。

いつも。

 

 

ああ、ダメだ。

楽しかった事しか思い出せねェ。

 

 

これからアイツと決闘して、

まぁ、俺が負けるわけないんだけど、

でも、そうしたらお前とも、アイツともお別れだ。

 

 

今まで、本当にありがとうな、メリー。

 

 

 

 

 

 

 

アイツは今ごろ、何してんだろう。

まぁ、言い出しっぺは向こうだから、

きっと俺を倒す作戦でも考えてるんだろうな。

そうだ、きっとアイツは手を抜かねェ。

だから俺も、手抜きはしねェ。

それが俺とアイツとの、決闘なんだから。

 

 

ああ、でも。

ついさっきまで、散々恐い顔して怒鳴りあってたくせに。

なんでだろう。

 

 

一緒に笑ってた事しか、思い出せねェんだ。

 

 

楽しかった。本当に楽しかったんだ。

この時はずっとずっと続くって、信じてたんだ。

だけど、もう、その手は離さなきゃならない。

俺とアイツの、道が分かれちまったんだから。

 

 

 

 

本当は。

 

 

 

 

本当は。

 

 

 

 

離したくなんか、無かったけど。

 

 

 

 

今夜の決闘で、俺はお前と決別する。

後悔のないように、全力でかかってこい。

そうしたら、俺も。

俺も、それに応えてみせるから。

 

 

 

 

 

 

さよならだ、ウソップ。

 

 

 

 

 

 

<終>

 

 

 

 

 

ルフィ一人称。35巻によせて、思うままに書き綴ってみました。

ホント、仲間から大事にされてるよ、ウソップ。

ちゃんと仲間だったよ、君は。

 

 

そしてどこからどうみてもルフィ×ウソップ1色でしたね、35巻は。

うっかり本命のゾロウソから宗旨変えしそうになってしまいました。(笑)

 

 

船を降りてしまっても、やっぱり麦わら海賊団に戻ってきても、

私はどっちだって良いです。

ただ、願わくば。

胸に掲げた旗だけは決して折らずに、いつか必ず勇敢な海の戦士になってほしいです。

その姿を、見せてほしいです。

それだけです。