<brighten stars>
「おい、ルフィ!!早く出てこいよ!!」
その呼び声に、夜食をパクついていたルフィは残りを全部掻き込み
ウソップの分だけ手にすると、大急ぎで立ち上がった。
「今日は流星群が見られるわよ」
そうナミから聞いた途端、ルフィとウソップの目がキラキラし始めた。
「流星群ってすげェのか!!」
「そりゃあ、群って言うぐらいだからな」
「よしウソップ、見るぞ!!」
「合点だ!!」
滅多にない機会だから。
サンジもゾロも、こういうのには興味がある方ではない。
真夜中に2人でデートも悪くないだろう。
甲板に出ると、少し肌寒いのか毛布を纏ってウソップは座っていた。
「ん?もう流れてるか?」
「今のトコはまだ、ひとつふたつってトコだな。
もうそろそろだろ」
「ホラ、ウソップの分」
ウソップの隣に座って同じ毛布に包まる。
夜食を差し出すと、ウソップは目を丸くした。
「ちゃんと俺の分も残しててくれたんだ?
珍しいな」
「しししし。当然だろ?」
皿に乗ったサンドイッチを手にすると、しかしやっぱり
物欲しそうに見てくるルフィの顔。
ウソップは苦笑すると、もうひとつ手に取って
ルフィに渡した。
「食えよ」
「えっ!?いいのかっっ!!??」
びっくりした目をウソップに向ける。
「だって、顔が『まだまだ食いてー』ってカンジだぞ」
「そうなのか!?」
がぼーんと頬を両手で摘んでいる姿を見て、ウソップは可笑しそうに
笑い転げた。
夜食も食べて一息ついた頃、星がひとつ、またひとつと
流れ出した。
「すげェ……!!」
素直に感嘆の声を出すルフィ。
ウソップは声もなく流れ星に見惚れている。
「…知ってるか?ルフィ」
「ん?」
「流れ星に願い事するとな、願いが叶うって聞いたんだ」
「へー」
ウソップの話に、流れ星ってすげェんだなぁと呟きながら、
ルフィは流れ星を眺めた。
「…俺も昔はよく願い事したモンだ」
「何願ったんだ?」
「んー…母ちゃんの病気が治るように…それと、親父が帰ってくるようにって」
「……。」
「ま、どっちも叶わなかったけどなー」
少し悲しそうな笑みを浮かべるウソップを、ルフィはじっと見つめる。
「…なんだ?」
「ウソップ、願い事するぞ」
「は?」
そう言うと、驚いているウソップを他所にルフィは胡座を掻いていた足を
少し正して座り直した。
「ホラ、ウソップも」
「俺もかよ」
「願い事、しなきゃソンだぞ?」
「…お前な、今の俺の話聞いてたのかよ」
ため息をついて、ウソップもルフィに習い座り直す。
思い起こせばウソップにだって、昔願った事は決して叶う願いなんかじゃなかった
という事ぐらい理解している。
そのぐらい、自分は子供だったのだと。
今、ルフィに願い事をしろと言われて、何を願えばいいのか少し戸惑った。
しかし何か言いたげな表情を浮かべて星を見上げるルフィを眺めていると、
その戸惑いはきれいに消えてなくなっていった。
願い事ぐらい、あるんだ。
手を合わせて何事かを祈っているルフィ。
彼と、ずっと共にいられますようにと。
ウソップは、何年か振りに流れ星に願いを込めた。
願い事が済んだのか、ルフィはばったりと仰向けに倒れ込んだ。
「どうした?」
「首が痛ェ」
ずっと見上げていたんだから、当然だろ。
そう言って顔を歪めるルフィに笑みを零すと、ウソップも隣に横になった。
「…なぁ」
「ん?」
「何お願いしたんだ?」
「お前は、海賊王になれますようにってか?」
逆に問い返すと、ルフィは首を横に振った。
少し意外そうな目を向けて、ウソップは言う。
「違うのか?」
「違うね」
「じゃ、何願ったんだ?」
「聞きたいか」
「聞きたいなァ」
珍しくもったいぶるルフィに、素直にウソップは訊ねた。
「ウソップと、ずっと一緒にいられますようにってさ」
しししと笑いながら、ルフィは少し照れくさそうに言った。
「お前は何をお願いしたんだ?」
「…聞きたいのか?」
「俺に聞いといて、ずりィじゃんかよ」
「ははっ、そりゃそうだな」
笑うとウソップは空に目を向けた。
少しずつ、星は少なくなってきている。
「俺も同じさ。ルフィと一緒にいられますようにって」
「そうか。じゃあ、大丈夫だな」
満足そうな笑みを浮かべてルフィが頷く。
この願いはきっと叶うだろう。
最後の流れ星が消えてしまっても、2人は空を眺め続けていた。
<おわる>
……流星群って見たことないです。
寝てるから。(笑)
しかしアレだ。この話もまた随分と年季が入ってるなぁ……。
2002年か。そうか。(遠い目)