<Act.7 ウソップ>

 

 

 

 

目が覚めたら、ベッドの上にいた。
服は気を失う前に着ていた物とは違っていて、
一瞬、何が何だかよく解んねェで、身体を起こそうとしたら、
物凄い力でベッドにまた押し付けられた。
「……何すんだよ、ゾロ」
「何じゃねェだろ」
「あ?どういう意味だよ」
「どういうって……お前、覚えてねェのかよ」
「だから、何が?」
すんなり起きることはできなさそうで、俺はもう一度布団に潜り込んだ。
そういえば、妙に腹の辺りに違和感が残ってるけど。
「血ィ吐いて倒れたんだ」
「……アレ?」
どこか言い難そうに言ってくるゾロに、俺は首を傾げる。
そう……だっけ?
いや、正直あんまり覚えはねェんだよな。
不思議そうに見てしまってたのか、ゾロは頭をガリガリ掻くと、
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。
「とりあえず、チョッパー連れてくるから」
「ん、サンキュー」
「おいウソップ」
「ん?」
出掛けにゾロが、俺を振り返った。

 

「無理すんなって言ったろうが、馬鹿」

 

………ンなこと言われたって……なァ?

 

 

 

 

暫くして、慌てたような足音と共にチョッパーが飛び込んできた。
俺が声をかけるよりも先に、あっちが体当たりを仕掛けてくる。
「ウソップーーー!!!
 良かった、もうダメかと思ったァァーーーー!!!」
「オイ」
お前、医者なんだから諦めんなよな。
だけど、そうか。そういう事か。
それじゃあもう、隠しようは無ェってことか。
「大丈夫か?どっかおかしいトコないか??」
「えーと……ちょっと胃の辺りがムカつく感じするけど……」
「多分ソレは薬のせいだと思うから、じきに治るよ」
「それじゃ、他は何ともねーな」
「本当か?本当か??」
「本当だって!!ちょっとは信じろよチョッパー」
そう言いながら、そういえば俺って嘘吐きなんだったっけか、って
くだらねぇ事考えてた。

 

 

できれば最後まで、嘘は貫き通したかったんだけどな。

 

 

 

<続>

 

 

 

俺のことなんかで、流す涙なんて必要ないだろ?

 

皆が笑ってる顔だけを、見ていたかったんだ。