数年ぶりに戻った地上は、あの頃と何も変わらず綺麗だった。 オレはこれから、約束の場所へと向かう。 かつてオレが握っていた、剣のある場所へ。 < Requiem 〜ボクからキミへ〜 > 連絡手段なんて何もなかったから、きっとそこには誰もいないと思っていた。 剣の波動だけを頼りにやってきた岬で、まるでそこにオレが辿り着くことを 最初から分かっていたかのように待つ、懐かしい姿。 腕を組んでふんぞり返って、まるで待ちくたびれたように。 それは、紛れもなくオレの知る、ポップの姿。 「………ポップ、」 「遅い!いつまで待たせんだよ、バカ野郎」 「ごめん……ごめん、ね」 「もう…戻って来ねぇかと、思った」 年単位で地上を離れていたオレに、ポップは普段と変わらないように 接してきた。 けれどそれも、すぐにしぼんでしまって。 泣くのを堪えるような顔をして、そんなことを言うから。 遅くなってごめんね、ポップ。 だけど、ちゃんと戻って来たよ。 キミを連れに、帰って来たよ。 オレの力が平和な世で邪魔になるだけなら、この地上を去る事は苦じゃなかった。 でも、そう思っていても、譲れないんだ。 ずっと握ってきたこの手だけは、もうオレの方から離すことなんてできないんだ。 ポップのいない世界を生きるぐらいなら、死んだ方がマシだと思うほどに。 オレと一緒に来てくれる?って訊ねたら、 そのために此処に来たんだ、当然だろ!って、怒鳴られた。 ああ、やっぱりオレはコイツを分かってなかった。 オレが必死で離すまいと掴んでいた手を、コイツも必死で離さずにいてくれた。 それはとても、遠回りだったけど。 けれどきっと今なら、オレはオレの気持ちを素直に伝えられると思う。 「ねえポップ、オレ、お前の事が好きだよ」 「へえ、奇遇だな。オレもなんだ」 ともすれば聞き逃してしまいそうになる程の、あっさりとした答え。 普通なら、オレのこの気持ちとポップの気持ちには違いがあると思うのだろう。 でも、ポップのことを知りすぎたオレになら、ポップの思うことはすぐに伝わる。 軽い言葉の中に含まれる、深い深い想いを。 だからオレは、もう我慢なんてしない。 今度こそ、真っ直ぐお前に向けて手を伸ばすよ。 たとえこの身が離れても、心だけは絶対に離れないように。 <終> ※約束の場所から始まる、オレ達の道。 |
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