時々、ポップはオレの知らない表情をする。
どこか遠くを見つめるような、目をして。
オレが分かるのは、そんな時のポップは気持ちが此処にないってこと。



まるで、そのまま何処かへ飛んでいってしまいそうだ。







< Requiem 〜ボクからキミへ〜 >







思わず腕を掴んだら、すごく驚いたような顔をされた。
なんだよ、って訊かれて、でも、オレには答えられなかった。
何か理由があって掴まえたんじゃないから。
意味なんて、理由なんて、何もなかった。
ただ、此処にいてほしくて。



何処にも行かないで、ほしくて。



ポップは此処にいるよね?って言ったら、ほんの少し不思議そうに
首を傾げたけど、勘の良いアイツはすぐに気が付いたようだった。
バカなこと言ってんじゃねぇ、なんて言って、オレの髪の毛を
ぐしゃぐしゃに掻き回して。







お前を置いて、オレがどっかに行くわけがねえ。







少し不貞腐れたような声が、嬉しかった。
此処にいると言ってくれたことが、これ以上なく幸せで。
だけどそのことが、自由を奪ってる。
ポップの背中にある自由の翼を、オレが奪ってるんだ。







だから、オレはオレ自身に対してひとつだけ言い聞かせていることがある。
たったひとつ、ポップには絶対言ってはいけない言葉。
ふとしたことで零れてしまいそうになって、オレは慌てて口に蓋をする。



言っちゃ駄目だ。聞かせちゃ駄目だ。
たったひとつの、オレの想いだけは。
いつかポップが飛び立ちたくなった時、オレを置いて行きたくなった時、
きっとこの言葉は邪魔になるだけだから。










決して口には出さず、だけど溢れそうになるこの気持ちを、
こっそりと心の中だけで呟くよ。





ポップ。

オレは、おまえが。








<終>



※こんなにも、愛おしい。