ああ、そうだ。 そうやってお前は、また。 < Requiem 〜ボクからキミへ〜 > 怖かったんだ。 バーンに少しも歯が立たなかったことなんかじゃなくて。 ただ、人々がオレに向ける希望が。 そしてそれを、裏切ってしまうかもしれない、自分が。 どうしたら良いのか分からなくて、前にも後ろにも行けなくて、 オレができたことといえば、その場から逃げ出すことだった。 最低で最悪な選択だったことは分かってる。 でも、オレには他にどうすることもできなかったんだ。 だけど。 そんなオレを迎えに来てくれたのは、旅の一番初めからずっと一緒にいた ポップだった。 頑張れと励ますこともなかったし、情けないと叱ることもなくて、 ただ、ずっとオレの傍にいてくれただけだった。 オレの気持ちを全部認めて、自分の気持ちだけを話して、それだけ。 でも、たったそれだけの事がオレにとってどれだけ救いだったか、 たぶん誰にも分からないだろう。 「この戦いはもう、自分のための戦いなんだ」 勇者だから頑張らなきゃならない、わけじゃないって。 竜の血なんか、化け物の血なんか、怖くないって。 オレが、オレだから、此処にいるんだって。 そうしてポップは、結局オレを甘やかすんだ。 思い出したよ、ポップ。 オレは勇者なんかじゃないんだ。 化け物の血を受け継いだ、勇者になりたかったヤツなんだ。 オレは、勇者なんかじゃない。 勇者に憧れて、勇者になるために戦っているんだ。 ココで逃げ出すってことは、オレは自分の夢を諦めちゃうってコトだ。 ポップはポップの目標があって戦っている。 だからオレも、オレの夢のために戦えばいい。 地上のみんなの命だとか、そんなもののためなんかじゃなくて、 オレは自分が勇者になるために、胸を張って勇者なんだと言えるように なるために、戦う。 そう考えたら、少しココロが軽くなった。 ポップはすごい。 魔法使いとしてのチカラもどんどん上がっていくけれど、そんなことじゃなくて、 ホントに簡単なコトで、たったの一言で、オレの気持ちを変えてしまう。 ポップの言葉を聞いていると、まるで自分が魔法をかけられたみたいに 変わっていってしまうのが分かるんだ。 本当に、何度言っても言い足りないぐらいだけど。 だったら声が枯れるまで、喉が潰れても、何度だって言うよ。 ありがとう、オレの魔法使い。 <終> ※全部の感情が、彼へと向く。 |
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