動かない身体。
開かない瞳。
此処にあるのに、消えてしまった光。



消えてしまったんじゃない。
消してしまったんだ。

オレの、せいで。







< Requiem 〜ボクからキミへ〜 >







「………ポップ、」

ベッドの上で眠るようにただ呼吸を繰り返しているポップの手を、握る。
わかってる。ただ、眠ってるだけなんだってこと。
心臓はもうちゃんと動きを取り戻しているし、握った手は温かいけれど、
それでもオレは覚えている。
その体が一時どれだけ冷たくなっていたか。
呼びかけても、揺さぶっても、決して応えてくれることのなかった、
あの時の………絶望を。

「ねえポップ………オレは、ね」

何故だか記憶が戻った時からずっと手の中にあったポップのバンダナに目をやる。
最初はどうしてコレがオレの手にあったのか分からなかったけれど、ポップの
ことを考えれば、そしてあの時の状況を聞けば、何となく分かってしまった。
きっとコレは、ポップがオレに持たせてくれたのだろう。
思い出してくれますようにって、願いをこめて。
覚えていればそのぐらい簡単に分かってしまうのに、あの時のオレは
きっと少しも分からなかったんだと思う。
だけど、唐突に記憶は戻ってきた。
命を懸けてまで、ポップが取り戻してくれたんだ。

「オレには、もう、必要ないからさ。
 ……ポップに返しとくね」

ポップの頭を少しだけ持ち上げて、手にあったバンダナをポップの額に巻く。
うん、やっぱりコレはポップのところにあった方がいい。



思い出しますようにと、願いをこめてオレにくれたモノ。
今度は、早く目が覚めますようにと願って、オレがポップにあげるよ。
ポップを思い出したのと一緒に、気付いてしまったから。





コイツだけは、何があっても絶対に失ってはいけないんだってこと。



「早く起きて………オレを叱って、それから、……笑ってよ」





仕方のないヤツだなって、世話の焼けるヤツだなって。
ポップが笑ってくれないと、オレも笑えそうにないんだ。








<終>



※魔法使いがいないとダメな勇者。