ドォォン、と強烈な音に地響きを感じて、レオナは持っていた羽ペンを放り出した。
今の光はルーラで間違いはない。
城の中庭に落ちたその光を窓から確認すると、レオナは大慌てで部屋から出て行った。
間違い無い、勝手に消えたバカが帰って来たのだ。
<The legend of the knight of the dragon.−10−>
「あい…ッたたた………」
「あ、頭打った……酷いよポップ、下手くそッ」
「うっせぇ!なんか最近、力加減が上手くいかねぇんだよ!!」
『きっと、人間の身で与えられた力が強大過ぎたのでしょう。
修行をすれば、いずれ調整できるようになりますよ』
「だといいんだけど………おッ?」
近くに人の気配を感じて、ポップとダイが共に顔を上げた。
中庭に続くガラス戸の前で佇んでいたのは、パプニカの王女。
それを確認すると、ダイがへらりと笑顔を浮かべて手を振った。
「レオナ!久し振りッ!!」
「よう姫さん、ちゃんと連れて帰ってきたぜ!!」
「ダイ君…………ポップ君も……」
信じられないものを見るような目で見ていたレオナが、慌てふためいて
転がるように駆けてくる。
「レオナ、あんまり走ると転んじゃうよ!」
「慌てなくっても逃げねぇって、オレ達は」
「ダイ君におかえりなさいを言う前に……このクサレ魔法使いがァッ!!」
「いってェェェェ!!!」
ダッシュした勢いのままでポップの顔面に向かって蹴りを放つと、豪快にポップの
体がすっ飛んでいく。
驚きに口をあんぐり開けたままのダイを余所に、レオナはドレスの裾を軽く払いながら
何事も無かったかのように優雅な笑みを浮かべた。
「さて、ポップ君。
前に私が何と言ったか覚えてる?」
「し…しっかり休んで、体を治すこと……です、ハイ」
「私がもう出かけて良いと許可したかしら?」
「い、いえ……頂いてませんです、ハイ」
「だったらこのぐらいの報復は受けてもらわないと気が済まないわ。
死にかけの人間を介抱したのに、全部放り出してとっとと逃げられた
こっちの気持ちにもなってちょうだい」
「ええッ、ポップまた死にかけたのッ!?」
「またってなんだよ、またって……」
笑顔を絶やさないままで仁王立ちするレオナの前に正座をして、ポップは小さくなりながら
ひたすらに頭を下げる。
途中、横から事情を説明しろと言わんばかりのダイの視線を感じたが、今はそんなものに
構っている暇はない。
兎にも角にも、心が鬼に変化している姫の怒りを解くのが先だろう。
「いや……ホントに、反省してるよ。ごめん、姫さん」
「まったく……コレでダイ君を連れて帰って来なかったら、あと3発は
確実に入れてたわね」
「いや……勘弁して下さい、絶対死ぬから。ひ弱な魔法使いだから、オレ」
『………嘘ばっかり』
「しッ!!」
横から入ったツッコミに、ポップは慌ててそこにいたものの口を塞いだ。
そして何とか話を逸らそうと試みる。
「け、けどよ、約束通りちゃんとダイを連れ帰ってきたぜ。
あと……オレも、ちゃんと帰って来た。
だからそれで勘弁してくれよ、な?」
「………レオナ、」
くい、とレオナの服の裾を引っ張って、傍にいたダイがにこりと笑みを浮かべた。
この笑顔と、あと一言。
「ただいま、レオナ」
この言葉があれば、充分。
「ダ…ダイ君……ッ、おかえりなさい……!!」
大粒の涙を流して勇者の帰還を喜ぶレオナに、ダイとポップは顔を見合せて
笑みを浮かべたのだった。
バサリ、と翼をはためかせてポップの頭に一匹の翼竜が舞い降りた。
それに気付いてレオナが手の甲で目元を拭いながら、ポップの方へと
視線を向ける。
「その子……どうしたの、ポップ君?」
「え、ああ……ちょっとね」
「見た感じではグレイトドラゴンの子供みたいに見えるけど…」
「残念、違うんだな、コレが」
ばさりと翼を広げた竜は、ふわりと舞い上がり今度はダイの方へと飛んでいく。
ダイが腕を差し出すと、そこへ降りて落ち着いたかのように翼を閉じた。
『グレイトドラゴンと同じに見られるとは……心外です』
「あはは、しょうがないよ。
そんな姿になってるんだから」
「まぁなー、普通は分かんねぇだろうなぁ、伝説級のシロモノだなんて」
「…ダイ君もポップ君も、誰と喋っているのよ?」
不思議そうに見遣るレオナに、どうやら竜の言葉は彼女に伝わっていないことに
気がついて、ダイとポップがしまったと顔を見合わせた。
『残念ながら、私の言葉は竜の騎士である貴方達にしか解りませんよ』
「そ、そういうことは先に言ってよ……」
「そうだそうだ!!」
小声で非難してくる2人に、小さな竜は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
『できる事なら………力の戻るその時まで、彼らと共に歩めますように』
その願いが、聞き届けられたのだ。
<終>
最後までお付き合いありがとうございました!!
書ききれてない感がありまくりなんですが、そこんところは
今後読みきり的に書いていければなぁ、というか。(笑)
ほんとはもうちょい続くのですが、ここで一旦一区切り。
此処までは一気に書き上げたので…これも愛故に?(苦笑)
今後もまったり書き続けていきたいです。
2009.04.17 UP