最近一緒に居る事が多いせいか、よく太子の事について僕に話を
持ってくる人が増えた。
まったくもって不本意極まりないんだけど。
「妹子殿、太子の居場所を御存知ないか!?」
「妹子殿、太子がまた仕事を放り出して…!!」
「妹子殿、太子を見つけたらすぐにご連絡を!!」
「妹子殿ー!!」
もう勘弁して!!
なんでいつもいつも僕に言うんだよ!!
そう言えば、皆口を揃えてこう答えるんだ。
「だって、妹子殿が一番太子と一緒にいらっしゃるでしょう?」
僕だって好きで太子と一緒にいるんじゃない。
あのバカ男がいつもいつも僕を呼び出すから結果的にそうなってるだけだ。
けどそう訴えても、「じゃあやっぱり妹子殿が一番太子に詳しいのでは」と
言い返されて、僕は二の句が告げられなくなる。
だから違うんだって、僕だって好きで詳しくなったわけじゃないんだ。
「そんなわけで太子」
「待て待て、いきなり出てきてそんなわけでってなんだお前!
私にも分かるように説明しないか」
「嫌ですよ、面倒臭い」
「意外と横着だな、お前……」
流石に気の長い僕もそろそろキレそうだ。
太子のお守り役になったつもりは断じてないんだから!!
「皆が僕に太子は太子はと五月蠅いんです、どうにかなりませんか」
「どうにかって言われてもなぁ……」
「いっそ潔く死んでくれたらラクなんですが」
「そ…そんな理由で死んでたまるか!」
「とにかく、何でもかんでも太子の事は僕に訊けばいいと思われて
こっちはほとほと困ってるんですよ」
「ふむ、そういう事なら妹子」
「なにか良い案でもありますか」
「いっそお前が私付きになるか?」
「死んだ方がマシです」
「言い切るな!!流石の私も傷つくぞー!!」
まあ、このオッサンが傷つこうがどうしようが僕には関係ないんだけども。
それを言うと本格的に拗ねだしそうだから黙っておくことにする。
そして今現在の僕は、今日もまた太子から呼び出されて一緒に居る。
今日はどんなバカをするのかと思ったけど、バカに付き合うのは嫌だと
僕の胸の内は全力で拒否ってたんだけど、やっぱりバカはバカでも
摂政の聖徳太子だからと、随分長い葛藤の末に呼び出しに応じる事にしたのだ。
あ、そうか!
「次から太子からの呼び出しは問答無用で拒否っていいですか?」
「いいわけあるか!!
私からの呼び出しを無視するなんて、無礼にも程があるだろう」
「いやそれはほら、僕と太子の仲に免じて」
「そんな事してみろ!毎夜毎夜お前の家の庭に忍び込んで、
クローバーを根こそぎむしってやるからな!!
私はやると言ったら本当にやるからなー!!」
「う…っ」
別にクローバーぐらいと思うのだけど、なんか地味に嫌だ。
「大体、どうして毎回僕なんですか?
調子丸くんでも竹中さんでも誘えばいいでしょうに」
「え、妹子が一番面白いから」
「そんな理由なの!?
確かに調子丸くんは色んな所が調子悪そうですけど…、
あ、ほら、竹中さんとかは?」
「それはお前、アレだ………………乾くだろ」
「乾くんだ!?」
ああもう、どうして太子の周りには妙ちきりんな人しかいないんだ!?
これじゃ太子のことを押し付け……もとい、面倒見て……じゃなくて、
託せる人がいないじゃないか!!
「ああもぅうるさいなー。
いい加減諦めろ、妹子」
「嫌です、諦めたくありませんよ」
「こういう所だけしぶといなー…………いいか、妹子」
ぽん、と僕の肩に手を置いて、しみじみと、このバカは。
「お前はもう、私から逃げられない運命なんだよ」
しれっと言ってのけたアホ太子に、僕は通算何十回目かの殺意を抱いた。
どっか遠い所へ逃げたい……!!
<終>
なんか私が書く2人は、ラブとは程遠いところにいる気がする…。
個人的にはもう少しぐらいラブくしたいんだけどなーあれー?
−20100126UP−