<ACCIDENT・6>

 

 

 

「お〜い、何か船が見えるぞ〜〜?」
声を張り上げたルフィ。
それに何だどうしたと、ゾロ、ウソップ、サンジがキッチンから出てくる。
ルフィは特等席に座りながら、前方を見つめた。
「ほら、船」
「ほんとうだ…」
ウソップがその方向へ目を凝らすと、確かに船が見える。
この船よりも一回り大きいだろうか。
しかしその船は、ぐんぐんと近付いてきているような気がした。
「ん〜?」
不思議に思ってウソップは鞄から双眼鏡を出すと目に当てる。
その表情が驚愕に変わった。
「お、おい!!アレは海賊船だぞ!!」
「なにぃ〜〜〜?」
ルフィが双眼鏡を奪うと同じように覗き込む。
「こっちに近寄ってきてるよな。何の用だろ?」
「さぁ…わかんねぇけど、ちょっとヤバいような気がするのは俺の気のせいか??」
その時、向こうの船から轟音が聞こえたかと思うと、ゴーイング・メリー号が大きく揺れた。
慌ててルフィは座っていた船首にしがみ付く。
「なななななななんだぁっ?????」
もんどりうって転がっていくウソップを、ゾロが慌てて受けとめる。
そして前方を見据えた。
「……ヤル気だってか」
「いやぁ、久々に見るねぇ、そーゆーチャレンジャーな奴…」
ゾロとサンジは久々に体を動かせると、少しばかり嬉しそうだ。

 

 

 

 

やはり海賊たるもの、奪ってなんぼというトコロであるからして、
つまり…時々現われるのだ。略奪を趣味とする船が。
大体にして、ルフィ率いる麦わら海賊団の敵ではなかった。
ルフィの拳で、サンジの蹴りで、ゾロの刀で。
時にはウソップが大砲を用い、戦闘になる前に海に沈んでいく船もあった。
腐っても海賊。そういうことである。
ただし、自らふっかける様な事はしない。
売られた喧嘩を買うだけである。
ちなみに今回の場合は喧嘩を『売られた』ワケであって。

 

「…ヤルぞ…!!」

 

両の拳をガツンと鳴らし、ルフィはニヤリと笑う。
それにゾロとサンジが頷く。実はチョッパーは少しオロオロしている。
とりあえず、血の気の多い連中なのである。

 

ところが。

 

問題があった。
幼い頃の姿に変貌を遂げたウソップ。
このままココに置いておけば、真っ先に狙われるであろう。
ゴーイング・メリー号より大きい船である。
きっと人数もそれなりに多いハズだ。
「ちょっとこっちに来い!!」
ゾロはウソップの手を引くと、まっすぐナミの部屋へ連れて行った。
「…ちょっと、ノックぐらいしなさいよね!!」
突然開けられたドアに、ナミが顔中不快な色を露にしてゾロを睨む。
が、特に気にした様子もなく、ゾロはナミを一瞥するとウソップに言った。
「お前はココにいろ。下よりも安全だからな」
「わ…わかった」
神妙な顔でウソップが頷く。
「ナミ、お宝が来たぞ」
「なんですってっっ???」
宝という言葉に素直に反応を示し、先程までの不機嫌はどこへやら
顔を輝かせて立ち上がった。
「私も行くわ!!お宝ゲットは任せて頂戴!!」
そういうと一目散に部屋を飛び出し、階段を降りるのももどかしいのか
手摺を飛び越えていく。
「いいか、ココから出るんじゃねぇぞ。すぐに済むからな」
「……ゾロ」
「ん?」
「……気をつけろよ?」
「ああ。お前もな」
上目遣いに見上げてくるウソップの額にキスをして、ゾロは部屋を出て行った。
敵船はだいぶ近付いてきているようで、雄叫びが聞こえてくる。
ゾロの唇が触れた部分に手をやると、ウソップはくすりと笑った。
きっとあの船は、すぐに沈むだろう。
日頃の運動不足で燻っている血の気の多い男達と、宝に目の色を変えている女に。
たった5人の、自分の大切な仲間達によって。
ナミのベッドに横になると、ウソップは目を閉じた。
「……ま、俺はのんびりご休憩ってか♪」

 

 

 

<続>