<ACCIDENT・3>
「…つまり、アンタはウソップってワケね??」
困った様に頭を掻きながらナミはため息をついた。
タオルに包まって濡れた頭をゾロに拭いてもらいながら、ウソップは頷いた。
「ああ、俺様は偉大なる海の戦士、キャプテン・ウソップだ!!」
どーんと胸を張ってそう言う少年はどう見てもウソップで。
ルフィは不思議そうに首を傾げた。
「なんでそんなにちっこいんだ?」
「知るかよ俺が」
「なんか、ヘンな物でも食べたんじゃないの?」
「まさか、そんなワケ…………あ!!」
冗談半分のナミの言葉にウソップは何か思い当たるフシでもあったかのよう手を打った。
「アレじゃねぇか、ルフィ。お前が釣ったヤツ」
「…あ、お前が食っちまったヤツか??」
「……何を食べたってのよ」
呆れ顔で尋ねるナミに、ウソップはこれまでのいきさつを話して聞かせる。
「得体の知れないモンを確かめもせずに食うなよな」
話を聞いていたゾロがため息混じりにそう言ってウソップの頭を軽く小突く。
「だって〜…サンジが食えるって……」
「言ってねぇだろ。『食えるって言ったらどうするんだ?』って聞いただけだ。
早とちりするなよ」
サンジにデコピンされて、ウソップはぷぅと頬を膨らませる。
その時、チョッパーが近寄ってきて、ウソップの前に立ち小首を傾げた。
「……ウソップ?」
「ああ、そうだぞチョッパー」
ぎゅむ。
いきなり、チョッパーがウソップに抱きついた。
「こらっ!!何してんだ!!」
慌ててゾロがウソップからチョッパーを引き剥がす。
別に気を悪くした様子もなく、むしろ嬉しそうにチョッパーは笑っていた。
「ウソップ、小さい。座ったら俺と同じくらい。なんか嬉しい。エッエッエ」
同じ大きさの者がいなくてそれが少しコンプレックスだったのかもしれない。
ウソップの顔を見ては嬉しそうにチョッパーは笑い続ける。
「……まぁ、何にしても原因はソレみたいね。その実が何なのか、ちょっと調べてみるわ」
特に深刻な様子でもないと判断したのか、のんびりした口調でナミは自室へ向かった。
鏡を見てようやく自分は縮んだのだとウソップは実感した。
「…うわぁ。チビになっちまったなぁ…」
感慨深げにそう呟くと、ウソップは甲板に出て絶句した。
「ひろ……」
いつもはさほど気にならないというのに、今は甲板がとても広大に見える。
「なんか、色々めんどくさそうだな」
いつの間に隣に立っていたのか、ゾロを見つけウソップは驚いて飛びあがる。
「いつからいたんだよ!!」
「さっきからいただろうが」
さらっと言うゾロに、ウソップは顔を顰める。
いつもなら気付かない筈はないのに。
ゾロだったら、ドコにいても解るのに。
なんだか無性に悔しくなったウソップは、ゾロに向かって手を伸ばした。
「ゾロ、だっこ」
「……おいおい」
苦笑したものの、拒むことはせずゾロはウソップを抱き上げる。
「こうやって見ると、ゾロがでっかく見えるなぁ」
「イヤお前が小せぇんだって」
間髪入れずツッコミを入れるゾロに、愉快そうにウソップは笑う。
「あはははははは!!そうやってるとお前ら親子みてぇだぞ!!」
その様子を見ていたルフィが、2人を指差し腹を抱えて笑い転げた。
「失礼なヤツだな」
「全くだ」
アイツはいつかマジでシメようと、ゾロとウソップは顔を見合わせ頷いたのだった。
<続>