<ACCIDENT・26>
「なぁ、チョッパー。俺、どうしたらいいのかな」
「ん〜?」
ゾロに抱えられウソップは船へと戻ってきていた。
その2人の姿に驚きながらも、治療するためにチョッパーは医療道具を広げた。
今、ゾロの肩の傷を簡単に止血だけして甲板で待っててもらい、
部屋の中はウソップとチョッパーの2人だけ。
局部麻酔をして殆ど痛みの無いウソップは平然とした顔でベットにうつ伏せになっていて、
チョッパーは手際良く太刀傷を縫い合わせていた。
「あんまりにも急だったから、どうしたらいいのかわかんねェや」
「う〜ん……」
休む事無く手を動かしながら、チョッパーは首を捻った。
「思うようにしたらイイんじゃないか?」
「…思うように?」
チョッパーの言葉にウソップがおうむ返しに問う。
「ウン。思うように」
ニッコリ笑って、チョッパーがまた言った。
「俺、ウソップが言うまで黙ってるからさ」
「……そ、か。思うように……か」
ぽつりとウソップは呟き、思案するように目を閉じた。
そうしている間にもチョッパーはウソップの背に包帯を巻いて、治療は終了。
「ハイ終わり。安静にしてろよ?
麻酔効いてるから、少し寝てるといいよ」
「ああ。ありがと、な」
夢を見た。
気がつくとブランコに座っていた。
よくわからずただブランコを漕いでみる。
すると、それが余程面白いのか、ウソップは楽しそうに
ブランコを動かしていた。
だが、何か閃いた顔をして空を見上げる。
揺られながらも暫く考えて…そして頷いた。
もう一度勢いよくブランコを漕ぐと、せーの、で飛び降りた。
そこで、目が覚めた。
「なに〜?ウソップ、また怪我したのか??」
「うるさいわよ、ルフィ。ウソップ寝てるんだから静かにしてなさい」
「しかし最近、よく怪我するヤツだなウソップは」
「じゃあ俺ウソップ起きるまで待ってよっと。ハラ減ったし。
サンジ、おやつくれ〜〜〜!!」
「テメェはこんな時でも食うことしか頭にないんだな、クソゴム」
「まぁいいわ。食べてる時が一番大人しいからね。私にも紅茶もらえるかしら?」
「ハ〜〜〜イvv ナミさん、今スグに!!!」
扉の向こうで声がする。
そうか。皆帰って来たんだ。
そう思いながら、ウソップは目を開いた。
ゆっくり気を付けながら体を起こすと、背中に走る鈍い痛み。
腕や足の銃弾の跡よりも痛みが激しい。
「……ちぇっ。麻酔切れてるよ」
痛みで上手く動かない体に文句を言いながら、ウソップはそっとベッドを降りた。
小さく扉を開けると、既に声がしていた3人の姿はない。
おそらくキッチンに入っていったのだろう。
甲板には、ウソップのいる方へ背中を見せたまま海を眺めているゾロの姿だけ。
降りてきた自分に気付いているのかいないのか、ウソップが近付いても
ゾロは身動きをしない。
ウソップはただ、その後ろ姿を眺めていた。
見慣れた背中が懐かしい。手を延ばしそうになって、でも、引っ込めた。
『思うように』
チョッパーの言葉を思い出して、もう一度勇気を出して手を延ばす。
だが、背中に触れる前に声がかかった。
「傷は平気か?」
「……ああ、おかげさまで」
その言葉にゾロはホッと息を漏らす。
そして、ウソップの方を向いた。
「…お前は、俺を殺す気か」
「へ?」
突然言われた言葉に、ウソップは目を丸くする。
「イキナリあんな行動取りやがって。
怪我だけで済んだから良いものの、もしもの事でもあったら
どうする気だ」
「ん〜……まぁ、その時はその時だな。
とにかく、お前に刀を渡さないとって思ってたから。
どのみちゾロに刀渡すまでは、死ぬ気はなかったさ」
「お前が良くっても俺が困るんだ。こっちの心臓が保たねェよ。
もう…あまり無茶はしてくれるな」
「それは…聞けねェな」
ウソップは不敵とも取れる笑みを見せて、真っ直ぐにゾロを見つめた。
強く光る瞳を。
「俺は、お前の為なら死ねるんだから」
暫くゾロはウソップを見つめていたが、仕方なさそうに頭を掻くと、
困ったように笑った。
「…ったく、しょうのねェ奴……」
「そんなのお互い様だろ?」
ゾロが両手を広げる。
ウソップが迷わずに飛び込んだ。
「おかえり」
「ただいま、ゾロ」
<続>