<ACCIDENT・16>
ウソップが船に馴染むのは以外と早かった。
元々『人見知り』という言葉を知らない人種だから、当然と言えば当然なのかもしれない。
1週間も経つ頃には、周りのメンバーも慣れはじめてきた。
最初、ウソップというよりは『幼い子供』相手にどう対応すればいいのか、
ナミやサンジは特に困っていたようだった。
ルフィはいつもウソップに接している時の態度と変わらない。
ただチョッパーは、ウソップのホラ話が聞けなくなった事を少し残念がっていた。
昼食の後はいつも、甲板で遊ぶウソップを眺めながら昼寝をするのが
最近のゾロの日課になっていた。
この頃から絵を描くのが好きみたいで、ウソップがスケッチブックと睨み合いながら、
ペンを動かしている。
なんとも和やかな風景。そして、麗らかな陽射し。
その2つがあれば、ゾロも容易く眠りに落ちる。
しかしゾロが目を覚ますと、何故か必ず自分の隣でウソップが眠っていた。
やはり暖かな陽気に負けたらしい。
あどけない顔で眠るウソップに、ほんの少しだけ以前のウソップが重なる。
確かにウソップはウソップなのだ。
だが、ゾロの大好きだった力強い瞳だけが消え失せている。
やるせない気分になって、ゾロは小さくため息をついた。
そういう日が幾日も続き、平穏な毎日だけが繰り返されていく。
個性派揃いの為何だかんだと騒動は耐えなかったが。
それでも、それが普通の日常であって。
慣れてくると退屈と変わらない。
ただ、不思議な事といえば。
ルフィと笑って、チョッパーと話し、サンジにからかわれ、ナミに小突かれる。
あっちこっちとちょこまか動いているように見えるウソップだったが、
何故か必ずゾロの傍にいた。
ゾロが傍にいたワケではない。
ウソップがゾロの近くにいたがったのである。
絵を描く時も、チョッパーに面白かった事件を話す時も。
ルフィを指差し笑っている時も。
ずっと、ウソップはゾロの傍にいた。
そして時折、何かを探すかのように空を見上げた。
そこに、なくした物が落ちているかのように。
だけど次にはもういつもの笑顔に戻って、甲板を走り回っていた。
そうしてそのまま、10日が過ぎた。
<続>