<ACCIDENT・11>
「よいしょっと」
突然ルフィが木に登ってきた。
ビクッと身を竦ませて、ウソップが見上げる。
そのウソップにルフィは麦わら帽子を被せた。
「預かっててくれ」
「あ…ああ、いいけど…?」
「もうちょっとで全部片付くからな。そしたらまた街見て回ろうな!!
まだ行ってないトコ沢山あるもんなぁ」
しししと笑って、ルフィは木の枝にぶら下がり大きく反動をつけた。
「ゴムゴムの……ロケット!!!!!」
その力を利用して、また戦いの中へ戻っていく。
それを呆然とウソップは見つめた。
「やっぱり……仲間なのかな……」
頭の中で繰り返される声は、事実だったのだろうか。
何か大事な事を忘れている気がしてしょうがなかった。
村を守るのに、一緒に戦って…
『いいから早く乗れよ』
ゾロの言葉。
『俺達もう仲間だろ?』
ルフィの言葉。
自分は……
「キャプテンは…俺だろうな……?」
ゆっくり、一文字一文字を確認するように、ウソップは呟く。
時間が少しずつ動き始める。未来へと。
自分は間違いなくあの時海賊になったのだ。
そして、カヤのくれた船に乗った。
ウソップ海賊団は解散して、カヤに見送られて、海に出た。
村での戦いはもう終わっている。
『大剣豪になる日まで、俺はもう絶対に負けねェ!!』
ゾロの誓い。
「ゾロ…?」
ぽつりと、呟いた。
確かにあの時、ゾロは自分に言った。
『好きなんだ』
はにかむような、笑顔で。
ウソップは目を見開いた。
なんて事だ。また忘れていたなんて。
『俺も、ゾロが好きだ』
そう告げた時の、ゾロの優しい顔が戻ってくる。
急激に、ウソップの中で時間が進み始めた。
「いてぇ……」
ウソップが、脇腹を押さえた。
傷口が疼く。
この傷は、いつついたのだろう。
ウソップは唇を噛み締めた。
もう少しで、思い出せそうなのだ。
パアァァ……ン
遠くで、銃声が聞こえた。
ハッとして、ウソップは前を向く。
今だ続いている戦いで、誰かが発砲したようだ。
しかし変わらずルフィとゾロは戦い続けている。
上手く避けたらしい。
そうか。
この傷は、銃創だ。
撃たれて気絶して。
船医の心配そうな顔が思い出せる。
船医…名前は何といっただろう。
ああ、トナカイのチョッパーだ。
青っ鼻で泣き虫で、いつも自分のホラ話を楽しそうに聞いていた。
大切な…仲間。
「………っ」
涙が、あふれた。
思ったよりずっと、残された時間は短いのかもしれない。
<続>