<ACCIDENT・1>
「なんだコリャ…?」
麗らかな陽射しの下、ゆっくりと進む船の上で釣りを楽しむルフィとウソップ。
そのルフィの竿に手応えがあった。
勢い良く引っ張り上げると、そこにかかっていたものは魚でも長靴でも、ましてや
空き缶の類でもなかった。
「なぁウソップ、なんだコレ?」
隣に座っているウソップに声をかける。
「なんだろな。果物か?」
釣り針に引っかかっていたものは、白っぽくて丸い実。
ちょうど掌サイズぐらいだろうか。
「食い物だったらサンジに聞けばわかるかもな」
「俺がどうしたって?」
「Σうわあっっっ!!!!!」
いきなりルフィとウソップの間からサンジが顔を出す。
「い、い、イキナリ降って涌くんじゃねぇよ!!」
「ビックリしただろうが!!!」
ウソップとルフィが交互に文句を言うのに、サンジが眉を顰めた。
「お前等が俺のウワサするからだろ?」
まだ何も言ってねぇだろ、というブーイングをすっぱり無視して、サンジはルフィの持っている
小さな実に目を止めた。
「なんだそれ?」
「ああ、コレ、食えるのかなぁと思って。サンジに聞こうと思ったんだ」
「食えるって言ったらどうすんだよ」
「モチロン俺が一人占めvv」
そう言ってしししと笑うルフィに、サンジの回し蹴りが炸裂する。
2、3回バウンドしながら、ルフィは吹っ飛んでいった。
「何すんだよサンジぃーーーーー!!!」
打った頭を押さえて、ルフィが体を起こす。
それに冷たい目で見下ろして、サンジが冷ややかに言った。
「ひとりじめ、だと?」
「ああそうさ、俺が釣ったんだから俺のだ」
サンジに負けじと睨み返してルフィが言う。食べ物に関してルフィは引くつもりはなかった。
「……せめて、分けようとか、そういう風には思えねぇ?」
「思わないね。コレは、俺のだ!!」
サンジの問いにルフィは即答。さすが船長。チャレンジャーだ船長!!
「てめ…!!」
もう一発蹴り込もうとサンジが足を振り上げ、ルフィが応戦体制を取る。
だがしかし。
「いただきっ♪」
そう言ってルフィの手から実を取り上げたのはウソップだった。
素早くその実を口に放り込む。
「…………うげっ、マズイ!!水、水っっ!!」
余程不味かったのか喉元を押さえながらキッチンへ向かい、水を飲んでまた戻って来る。
ルフィとサンジは呆然とウソップを見つめている。
「ホラ、コレで喧嘩の原因はなくなったワケだ。もう喧嘩するんじゃねーぞ?」
ニッコリ笑われて、2人もつられてニッコリと笑い返す。
「よしよし。今度は食える”魚”を釣ろうな、ルフィ」
妙に威圧的なオーラで、ウソップはつり竿をルフィに渡す。
ルフィはそれにもただ無言でこくこくと頷くのみであった。
「……釣れねぇなぁ〜……」
つり竿をブラブラさせながらルフィが呟く。
ずっと前を向いていたのでウソップがどんな表情をしているのかは知らない。
同じくヒマそうにしているのだろうか。
そう思ってちらっとウソップの方を見る。
だが、同じ目線の高さには何も無い。
「あ〜〜……?」
どっか行っちまったのかな?とは思いはしたが、やはり隣に誰かいる気配はするのだ。
視線をふと、下へ向ける。
「………………?????」
ずいぶん、背が縮んだなウソップ。いや違うなんか子供がいる。
あれ、鼻は長いんだけど。でもウソップは俺と同い年のハズだぞっていうかこんなに
チビだったハズねえっつーかむしろ俺より高いハズっだったんだけど。
そこまで考えてから、ルフィは思わず叫んでいた。
「Σお前誰だーーーーーーーーー!!!?????」
「わぁっ!!??」
驚いたのは子供の方だった。
その拍子で、腰掛けていた手摺から滑り落ちてしまった。それも外側へ。
ぽちゃーーーん……
水の跳ねる音がして、子供は海にまっさかさま。
慌ててルフィが手摺から乗り出して海を覗き込む。
すると子供は泳げないのか、手足を一生懸命バタバタさせてもがいていた。
「…タイヘンだ……!!」
助けないと!!でも、自分は泳げない。
焦りながら周りを見回すと、寝ているゾロが目に入った。
「ゾロ!!頼む!!!!!」
眠っているのもお構いなしで、ゴムの腕をみょ〜んと伸ばし、ゾロの襟首を掴むと
反動の勢いで海へ放り投げる。
「Σうわああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
さすがに目を覚ましたのか、ゾロはルフィを確認すると怒鳴った。
「テメェ!!!何しやがんだルフィ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
その叫びも海へと吸い込まれていく。
ぼちゃーーーん……
「ししし。コレで一安心」
満足そうに笑いながらルフィは麦わらを被り直すと、海で奮闘しているゾロと
自分のせいで落ちてしまった子供の為に、タオルを取りに行ったのだった。
<続>
以前別の場所でアップしていたワンピSSを回収してきました。
今読み直すとかなり無茶な設定ですが、割と好評で嬉しかった覚えが。(笑)
ワンピ知っていて、しかもこの奇妙なカプに興味を示された方、宜しければ最後までお付き合い下さいv
…ちなみに、2人は既にラブな設定なので、宜しくお願いします!(どーん)