毎夜、見る夢がある。

それは塔が姿を現す2日前からのこと。

 

 

 

 

まるで何かを暗示するかのように、決まって見るのはあの頃の夢だ。
上忍になって初めての任務、まだオビトとリンの3人でチームを
組んでいた頃の。
分かっている、これは夢だ。
なのにとてもリアルで、任務内容も向かった場所も取った行動すら、
何ひとつ違っていない。
だから、辿り着く場所はいつもひとつだ。
大事な仲間を失って、そして目が覚める。
受け継がれた左眼の写輪眼が、焼けるように痛んだ。
「………なんだって、こんな……」
窓から差し込む朝の光はとても清々しく感じる筈なのに、気分は最悪。
眩しい日差しがむしろ忌々しく感じるほどで、左眼を押さえながら
カカシはベッドを抜け出した。

 

 

こんな気分の日は、『アイツ』が良い。

 

 

案の定、修行の邪魔をした自分にガイという名の友人は、少し渋い顔をした。
だが邪険にしないところが、この男の気持ちの良いところだ。
木陰で涼みながら本を読み、遠巻きながらガイとその部下達の修行を眺める。
穏やかな空気の流れるその風景にひとつ、翳りが刺さっていることの気がついて
カカシがふと顔を上げた。
視線のように感じられるし、何らかの意思のようにも思える。
けれど不思議なことに気配がひとつも感じられない。
突き刺すような強さのそれに、だがガイ達は変わらず稽古を続けている。
まだ未熟な下忍の子供達ならまだしも、ガイならば気付かない筈が無いのに。
「……俺だけなのか…?」
ぽつりと独りごちて、カカシは周囲を見渡した。
やはり何の気配もない。
せめて視線の方向でも分かればと思ったのだが、それも無駄だった。
振り仰げば、変わらない状態で聳える塔があるのみだ。
どこから見られているか分からないのに、ここまであからさまな視線を感じると
不気味を通り越してちょっとした恐怖である。
「…まだ疲れてんのかなぁ、俺……」
何かを仕掛けてくるような感じは受けないので、暫く様子を見ようとカカシは
再び本に視線を戻した。
内容なんてひとつも頭に入ってはこなかったけれど。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

敵の術で頭上にあった岩壁が崩され、いくつもの巨大な塊が降ってくる。
慌てて退避しようとしたところで頭に衝撃が走った。
左目を傷つけられて死角になっていた部分に、瓦礫が当たってしまったらしい。
思わず体勢を崩して倒れ込んだところで、ふわりと浮力を感じた。
「カカシ!!」
ああ、そうだった、オビトに投げ飛ばされるんだっけね、俺。
もう何度も繰り返し夢に見たので覚えている。
そしてオビトは自分の代わりに岩の下敷きになって。

 

「……………え…?」

 

身を起こして見た自分の視線の先にあったのは、ヒビの入ったゴーグルではなく
黒い、おかっぱに切られた髪。
「……………ガ……イ……!?」
目を大きく見開いて、呆然とその名を口にする。
有り得ない、あってはならない、これは夢。
夢だからこそ有り得ない話ではないのに、あってはならない光景だと。
後ろ頭を強く殴られたように、ぐらぐらと視界が揺れた。
嘘だ、嘘だ。あってはならないのだ。
たとえ、夢だとしても。
「ガイ………嘘…だろう?こんな……」
「無事か…………良かった」
半身を潰された状態で、それでも彼は穏やかに笑う。
それはもう、心底安堵した表情で。

 

 

耐え切れなくて、何かを強く激しく叫んだような気もしたのだが、
何を言ったのかはそこで目が覚めてしまったので、記憶からは失せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんて夢だ…」

飛び起きたカカシは、それがやはり夢なのだと知って深く吐息を零した。
夢だと分かっていても今のは最悪だろう。
よりにもよって、アイツが死ぬ夢なんて。
「はぁ……何なんだろね、ホント……」
すっかり汗で濡れてしまっている衣服を鬱陶しそうに脱ぎながら、カカシは
窓からも見ることができる塔に視線を送った。
どうもアレが現われてから、夢見が良くないようだ、と。

 

 

 

 

 

<続>

 

 

 

 

 

とりあえず繋げてみました。
全体の大まかな流れは決めてあるのですが、文章が上手く纏まらなくて
かなり四苦八苦しております。
こういう時、自分の才の無さっぷりを実感してしまうなぁ…。(遠い目)

読んで下さっている方々が、この先どうなるの!?と手に汗握るような
そんな展開を目指していきたい所存。

 

……カカガイ目指してんのに、手に汗握るってどうなん自分……。(一人ツッコミ)