熱に浮かされうわごとのように繰り返し呟かれる言葉に、
胸の何処かにある留め金が外れたような気がして焦った。
今のコレは高熱があっての言葉だ、落ち着けばきっと忘れる、
そう言い聞かせて、無かったことにして気持ちを落ち着かせた。
そうでもしないと、きっと自分を抑えることなんてできなかっただろう。
<The time of the blank which the mutual hand reaches.>
「……なに面白い顔してんの、ガイ?」
「いや……その、」
「黙ったままだとこのまま襲っちゃうよ」
「…………。」
「だから、なんでそこで黙るんだよ」
呆れ顔で言うカカシに、不思議そうな顔をするのはガイの方だ。
だってこれはおかしいだろう、つい今しがた、全部寄越せって言ったくせに。
「カカシ……俺は、今ほどお前が分からない時はないぞ」
「俺もお前が分かんないよ、ガイ」
「欲しいと言ったのはお前の方だろう」
「俺にこんな風に押し倒されときながらさ、」
「何故、その先に進もうとしない?」
「どうして、拒もうとはしない?」
分かっている、結局はどちらも臆病なのだ。
その先へ手が伸ばせないのも、拒絶して突き放せないのも、今あるこの関係を
崩してしまうのが怖いからだ。
「何かが、変わってしまうのかな」
「いいや、きっと何も変わらんさ」
「お前は……変わらないか?」
「お前も……変わらんのだろう?」
まるで確認するかのような問答に、張り詰めていた空気が少し緩んだ。
大丈夫だって、他でも無いこの男が言うのであれば。
「カカシ、だからこないだの件の話は…」
「とりあえず、それは後回しだ」
「なに?」
「後で、答え合わせをすればいい」
困惑した表情を浮かべるガイの頬に手を伸ばして、カカシはにこりと笑みを見せた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ああ、そうだった。そうでした。
ベッドから半身を起こした状態で、何ともいたたまれない様子を見せガイはがくりと
項垂れるように頭を垂れた。
あの後のことはあまり思い出したくは無い。
恥ずかしいとか、そういう事じゃなくて、ただただ痛感するからだ。
結局のところ、自分もカカシと同じだったんじゃないか、と。
「……とっくの昔に、全部やったつもりだったんだが、なぁ」
今だ隣で布団に包まり眠っている相手の姿を見遣って、自嘲気味の笑みが零れる。
胸の内にあるもの全て、もうずっと昔から彼だけのものであったと思っていた。
思っていたのに、相手にあんな顔をさせてしまったから、だから驚いたのだ。
カカシが、足りないというから。
だから女のように組み敷かれて、全てを晒されて、それでも嫌だとも止めろとも
言えなかった。
欲しいのなら持っていけば良いと、投げやりではなく本心で、そう思った。
「なぁ……、カカシ。
今までそうしてきたように、これから先もお前の隣に居るために必要である
事ならば、俺はきっと何だってできる気がするんだ。
俺にとって……お前の傍に居るという事は、それだけ重要な事なんだ」
起こさないように静かに手を伸ばして、白銀の髪に触れる。
手を伸ばせば届く、この距離が大事なんだ。
「俺には難しい事はよく分からんが……もしこれを愛と呼ぶのであれば、
きっと俺は、お前を愛しているんだろうなぁ」
近くに在り過ぎて気付かなかった、なんてレベルの話じゃない。
何故ならそれは、最初から自分の中に存在していたものだからだ。
初めて会った、あの時から。
「おぉ!?」
髪に触れていた手を掴まれて、ガイは驚いたような声を上げた。
視線を向ければ、うっすらと目を開いたカカシがこっちを見ていて。
「なんだ、起きたのか」
「………あの時もお前、俺に言ったよ」
「なに…?」
「同じことを、俺に言ったんだ」
熱に浮かされ掠れた声で、それでも確かに。
『愛している』と言って、笑ったのだ。
火傷も重くて、きっと痛くて苦しい筈なのに、それでも。
馬鹿な事をと言おうとして、できなかった。
僅かに開いた瞼の奥から向けられる視線と、掴まれた服と、
小さく呼ばれた名で、嘘じゃないと思い知らされた。
熱もかなり高かったので、きっとガイ自身何言ってるか分かって
ないのだろうと、そう思う事にしてやり過ごしたけれど。
僅かに笑みの形に動いた唇にキスをしたいと思ったのも、嘘じゃなかった。
「意外とね、俺って我慢強い方じゃないからさ。
特にお前の事に関しては」
「……どうして俺限定なんだ」
「分からないか?」
ぐいと強く腕を引けば、あっさりと倒れこんでくる身体を受け止めて、
突然のことに目を丸くしているガイの唇を掠めるように奪った。
そして見せるのは、今まで見たこともないような笑顔で。
「俺も、お前の事を愛しているからさ」
<END>
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
色々言いたい事はあるのですが、とりあえず平謝りです。
エロスは無理だったよ・・・・・・!!
いやね、もうね、書こうとはしたんだよ?したんだけど、
なんていうかもう一杯一杯でもう…。(泣)
ヘタレですいません。佐伯はヘタレです!!(宣言した!)
いっこだけ言い訳させてもらうとすれば、今回の本題はエロスじゃなくて
両思いに(自覚)させることだったのさ……そのノルマだけはなんとかクリア。
そしてカカシ先生を幸せにさせてあげようという闇ノルマもクリア。(笑)
一応、一線越えはしたんですよ?一線越えはしたけど書けなかったっていうオチ。
その辺りは皆様脳内補完で宜しくお願いします。(平伏)
いつか書く事ができたら隠しでアップすることにしよう…表には置けんよ。
エロス部門(笑)は、カカガイ師匠にお任せします…!!(をい)