結論だけいえば、しくじった、という事になるのだろう。
仕掛けられた火薬の爆発に巻き込まれて、このザマだ。
任務の続きは援護にきた仲間に任せて自分は撤収したのだが、
一人で大丈夫だ、と強がってみたのが間違いだっただろうか。
里へ向かう森の中を走っていたのを最後に、ふつりと記憶はそこで途絶えていた。
<The time of the blank which the mutual hand reaches.>
もぞりと布団の中で寝返りを打った時に、額に何かが当たって目が覚めた。
何がと重い瞼を持ち上げようとして、それは目元を覆った掌に遮られる。
そうされると余計気になって手を退けようとするのだが、どうしたことか
身体が全く動かない。
「………誰、だ…?」
「気がついたのか、ガイ。
起きない方がいいよ、結構な怪我だったしな」
「……カカシか」
耳元で聞こえた声に、ホッとガイの肩から力が抜ける。
彼ならば別に警戒をする必要は無い。
「どうなったんだ?」
「パックンが森の中でブッ倒れてるお前を見つけてくれてな。
拾ってやったんだ、俺が」
「そうか」
「病院には一応連れてったんだけど、ここ最近のゴタゴタでベッドが一杯でな、
放り込めなかったから、手当てだけしてお前の部屋に運んだんだ」
「………怪我、って、」
身を起こそうとしたが、全身に走った激しい痛みに呻いただけでそれは叶わず、
ガイは再びベッドに倒れ込む。
言わんこっちゃない、と呆れた目を向けながら、カカシは隣でため息を零した。
「だから、無理だって言ってるじゃないの」
「………それで、お前は何やってるんだ」
「なにって?」
「人様のベッドでくつろいで、何やってるんだと訊いてるんだ」
「何って……看病がてらに休んでたんだけど」
俺、今日は休みだし。
そう肩を竦めながら言えば、そういう事が言いたいんじゃない、と視線だけで
ガイが訴えてくる。
「あのさ、ひとつ言っとくけど、俺のせいじゃないから。
お前が放してくんなかっただけだから。
だから俺も一緒に寝るしかなかっただけだから」
「何を…、」
口を開きかけ、カカシがついと指差した先を見てガイは口を噤んだ。
ぎゅうと握り込まれているのは己の手で、掴んでいるのはカカシの服。
慌てて手を離せばすっかり皺になっていて、どこか居た堪れなくなってガイは
ついと視線を逸らした。
まぁ、いいんだけどさ、とカカシはあくまでのんびりとした口調で言う。
「傷も酷かったし、結構な熱もあったんだよ、お前。
まぁ、言っても殆ど覚えてないだろうから、黙っとくけど」
「……そんな言われ方をしたら余計気になる」
「だから気にするなって」
「気になるって言ってるだろう」
「だから、」
言いかけて、カカシがその口を閉じる。
不思議そうな目を向けてくるガイへと、へらりとした笑みを見せた。
「聞いたら多分お前死ぬほど後悔するし、
言っちゃうと俺も……多分、止まんないから」
「………?」
よく分からないのだろう、ガイは益々妙な顔をしてみせる。
それ以上は何も言わずにカカシはとにかく寝ろ、とガイの頭を枕へと押し付けた。
大体にして、まだ夜明けも来ていない時間なのだから。
「熱が下がって傷も治った頃に……この事まだ覚えてたら、教えてやるよ」
ふわり、と瞼の上に置かれた手が随分と優しかったから。
まぁいいか、とそう考えて、ガイの思考は眠りの底に落ちていった。
<NEXT>
色々なリハビリも兼ねて短文で勝負。(笑)
まぁ、何があったかは皆様のご想像にお任せするとして、
2〜3本で終わらせる方向で頑張ります。
一線越え、本気でする気なのか私…!?(汗)