昔の私は、守られることしかできない、何の力も無い弱虫だった。
そして、どうしようもない、バカだった。

 

そんな私を変えるきっかけをくれたのが…………あの人、だった。

 

 

 

 

<Your back told the road where it should go ahead to me.>

 

 

 

 

 

 

以前にあった出来事がきっかけで、最近のリーはよく木人を使って
修行をするようになった。
確かに単調な動きしかできないが、それでも全く身動きのしない
丸太を相手にするのとは随分と違うだろう。
本気で打ち込むと壊れてしまうので、その力加減は難しいけれど、と
そういえば彼はそんな事を言って笑っていた。
こうやってただひたすらに上を目指す彼の背を見るのは、もう日課だ。
自分の修行の傍らで、空いた時間があれば演習場へやって来る。
そんな自分の事を知っているのか、リーは修行場所を変えようとはしなかった。
それがまた、少し、嬉しい。

 

「…………あ、」

 

何気無く空を見上げて気付いた。
太陽の位置が変わっている。
あれから随分な時間が経ってしまったようだ。
よし、と頷いてそこから動くとリーの傍へと歩み寄る。
「リーさん、そろそろ休憩して下さい!
 体の酷使はかえって効率を下げるわ!!」
「いえ!まだまだこれからです!!」
「リーさん!!」
まだ打ち込みを続けようとするリーの腕を掴む。
掌にチャクラを嫌というほど練り込んだ師匠譲りの馬鹿力は、さすがにリーの
動きをも止めてしまった。
「ね、リーさん。お願いですから」
「………サクラさん」
なんだか少し泣きそうな顔で見てくるリーに向かって、サクラはふふ、と
可愛らしい笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

昔から生傷が絶えない人だったという気がするが、最近になって漸く
そのほとんどの怪我が癒えてきたように思う。
一時はあの綱手すらも頭を抱えさせる大怪我もあったのに、これはもう
奇跡と呼ぶしかないのかもしれない。
ざっと見た限りでは、手足に少し疲労が残っているものの、
大した異常は見られなかった。
「あの……サクラさん、」
「なんですか?」
「前々から知りたいとは思っていたんですけど…」
「……はい?」
きょとんとした視線で顔を上げれば、どこか困ったような表情のまま
リーは首を傾げていた。
「よく、此処で見てますよね?
 どうしてですか?」
「どうして、って……」
問われて、サクラは少し返事に言葉を詰まらせた。
理由というものが明確にあったわけではない。
ただ時間があると、何となく此処に足が向いて、何となく見ていた。
どうせ見ているのならまた無茶をしないように見張っていろ、なんて
綱手に言われてしまったが、それは単なるもののついでというやつだ。

 

「いつか、リーさんは私に言ってくれましたよね。
 命を懸けて、守る……って。
 あの頃の私は、何の力も無い弱虫で……、
 どうしようもない、バカでした。
 だからきっと、私にそんな風に言ってくれる人に対して、
 ただ天狗になってるだけだったんです。
 その人の事を何も知ろうとしないまま、でも、サスケくんのことがあった、
 あの時……初めて少し、分かった気がしました」

 

今ならはっきり分かる、あの日仲間達がサスケを取り返しに行くのを
自分と2人並んで見送った、リーの気持ちが、痛いほどに。
共に戦いたかったのだと、自分なんかよりも余程強く彼は
願っていたに違い無いことを。
強くなりたい、共に戦いたいと思うようになった自分に、できる事なんて
たかが知れていた。
けれどその可能性を、道標を、示してくれたのはやはりその背中だった。
もう、何度も、何度も、その身をもって教えてくれたのだ。
「自分に何が出来るのかとか、考える事自体が傲慢だった。
 どうして私には何も出来ないんだって、泣く事自体が我儘だった。
 自分がどうしたいのか、どう在りたいのか、それだけ考えてがむしゃらに
 突き進めば、きっと道は開けるんです。
 それを教えてくれたのが、リーさんだったんですよ」
諦めない気持ちが、折れない心が、何度も勇気付けてくれた。
必要なのは、強く強く欲すること。それだけだ。

 

 

「もしかしたら私は……確かめたかったのかもしれません。
 私の道標が、変わらず此処に在るってことを」

 

 

だから此処へ来て、その背を見て、きっと自分は安堵していた。
見ているだけで良かった。
それは、自分の憧れそのものだったから。
「僕は………サクラさんに、それほどの事をしているとは思えませんが…」
「それでいいんです。
 ただ、私が勝手に見ているだけですから」
その立ち方に、その姿勢に、見ているだけで引っ張られるのだ。
自分ももっと頑張らなければと思ってしまう。
まるで、ナルトを見ているヒナタのようだと、そう考えて知らずサクラから
苦笑が零れ出た。
あながちそれも、間違いじゃない。
「だったら僕は……もっともっと、努力しないといけませんね。
 忍術や幻術がなくったって、この身ひとつでサクラさんを守れるように
 ならないといけませんから!!」
「リーさん……」
「もし、サクラさんが本当にそんな風に思ってくれているのなら、
 僕はいつだって、サクラさんが誇れる人でありたいです」
「………うん。」

 

 

 

 

彼が彼のままで在る限り、大丈夫だと。
私も、私らしく強さを求めて、
今度は、隣に並んで一緒に戦うのだと。

 

そうしたらこの人は、今の私のように、私のことを誇らしく思ってくれるだろうか。

 

だとしたら、なんて素敵なことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……でも、サクラさん」
「はい?」
「あんまり見ていると、勘違いしちゃいますよ?僕。」
「あはは、それもいいですね」
「………………えッ!?」

 

 

意外と勘違いでもないのよ、なんて。

 

教えてあげたら、ビックリするだろうか?

 

 

 

 

 

<終>

 

 

 

 

 

一度は書いてみたかったリーサク、というよりサクリー。(笑)
書きながらなんとなく方向性が定まってきた感じがします。
サクラちゃんはきっとリーを見ていっぱい勉強したと思います。
だから、好きって気持ちよりも尊敬する気持ちの方が若干大きい。
尊敬って意味ではきっとナルトも同じだろうなぁ。
色んな意味で、落ちこぼれに対する光みたいな存在だと思うよ、リーは。
頑張れば自分もリーのように強くなれるって、みんな思ってるといい。

で、なんでノーマルがあえてサクリーなのかと言うと、
初期から通しで見ていて、サクラのリーに対する見方の変わりっぷりが
とてもツボだったからといいましょうか。
ぶっちゃけリーテンよりはリーサク派です。(そんな派閥あんのか…?)

ついでに言えば、ノーマルではあとナルヒナが好きです。
実はこころもちガイシズも気になります。(ていうかぶっちゃけ私はシズネスキー)
シカいのよりは、チョいのです。(ぶっちゃけたなぁ)
意外とテンテンに食指が動かないのは、きっとネジリーが私の中で不動のものだからだ。
多分、リーテンよりネジテンより、ガイテンな気が。(笑)
やっぱ一番最初にハマったカプってウェイトでかいなー…。