びゅう、と冷たい風が背中から吹き付けてくる。
思わず肩を縮こまらせて、待ち合わせ場所まで急ぎ足。
だが、その足をピタリと止めて、思わず空を仰ぎ見た。
雪が、空から舞い始めていたから。
< Snow,Snow,Snow >
「寒い!さーむーいーー………」
「冬とはそういうものだ、仕方が無いだろう」
「なぁんでお前は平気なわけ?
ほんっと、ワケわかんない…」
両腕を擦るようにしながら、待ち合わせにしていた場所へ辿り着くと
既に到着していた相手が少し呆れたような表情を見せてきた。
だがその目はすぐに、空へと向けられる。
「だが、雪が降ると………俺は少し嬉しい」
「そう?寒いだけじゃないの」
「世界が白く染まる、その風景を見るのが好きなのかもしれないな」
穏やかな笑みを覗かせるその隣で、白銀の髪をした男が豪快に
くしゃみを飛ばした。
コートを羽織っただけの姿に、僅かに眉根が寄る。
「お前……馬鹿だろう」
「うわ、馬鹿に馬鹿って言われちゃったよ」
「雪が降ると天気予報も言っていただろう?
そんな日にコート一枚のお前は馬鹿以外の何でもなかろうが」
「…………ごもっともで」
天気予報なんて見てなかったよ、と呟く相手へ自分のマフラーを外して
投げつけると、嬉しそうな表情を見せて首に巻きつけた。
「あー…いいねぇマフラー、癒される……」
「勝手に好きなだけ癒されていろ。
で、場所はあっちでいいんだな?」
「うん。今年の幹事は紅だから、きっとマトモなとこだよ」
「……去年はゲンマだったからな……」
「アイツに任せた俺らが馬鹿だったんだよ」
「まぁ、それは言えてるな」
待ち合わせ場所にしていた公園から出て、ゆっくりと通りを歩く。
日も暮れて随分経つせいか、人はまばらだ。
と、突然片割れがその姿を消した。
「あ?おい、何処行った!?」
「こっち、こっちだよー」
キョロキョロと辺りを見回すもう片割れへと声をかけると、
黒い髪をふわりと揺らして空を仰ぎ見るように見上げてくる双眸と合う。
その身体が視界から消えて、気が付けば自分と同じ屋根の上に
静かに佇む姿があった。
「いきなり何なんだ、お前」
「俺はさぁ、雪よりこっち見る方が好きなんだ」
屋根に座り込んで、首に巻いたマフラーを鼻先まで引き上げながら、
ほら、と指差した先にあったのは、ぽつぽつと明かりの灯った
家々の並ぶ街並みだった。
「なんかさ、見てるとホッとするんだよね。
任務終わった後とかさ、こういうの見ると帰ってきたんだなぁって
気になるし」
「………ああ、それは分かる」
その言葉に同意を示して貰えたことが、少し嬉しかった。
暫くそのまま2人で景色を眺め続ける。
雪の降る白い世界でまばらに明かりの灯る街並みは、どことなく
昔読んだ絵本にあったような、御伽噺の世界のように見えた。
「さぁ、行こうか」
「そうだな、あんまり遅くなると皆が五月蝿いしな」
「だよね、待たずに先に始めてるくせにさ」
屋根から軽い身のこなしで飛び降りると、集合場所になっている店まで
少し急ぎ足で歩く。
雪は少しずつ勢いを増してきていた。
明日にはきっと地面は白で染まり、子供達が嬉しそうな顔で走り回るのだろう。
「なぁ、」
「なんだ?」
「明日、雪が積もってたらさ、勝負しない?
俺んトコの奴らと、お前んトコの奴らでさ」
「………雪合戦か、面白そうだな」
部下達のはしゃぐ姿を想像したのだろう、隣を歩く男が笑顔を浮かべて頷いた。
じゃあ、約束ね。そう言いながら目的の店の扉を開く。
途端に遅い遅いとブーイングの嵐が巻き起こったのに、頭を掻きながら
困ったような笑みを零して、2人は頭を下げるのだった。
「いやぁ、遅くなってスイマセン。
はたけカカシとマイト・ガイ、ただいま到着しました!」
<END>
イメージは忘年会とか新年会とか、そんなカンジで。
ものっそ普通の話書いた気分…。
変わらないものを見て安心する人は、大人だと思います。
そして子供は変わりゆくものを見て心躍らせているものだと思います。
……年寄り臭くてすいません。(苦笑)