<They are bustle from the beginning of the year.>

 

 

 

 

「あけましておめでとうございまーす!」

 

ドアを開けるなり元気良く響いた声音に、少なからずカカシは面食らった。
そこに立っていたのはナルト・サスケ・サクラの3人だ。
「はい、おめでとさん」
頭を掻きながらそう返して、折角だからとカカシは3人を部屋の中に招き入れる。
まぁ子供達の狙いは何かというのが分かりきっていたし、むしろそろそろ
来るのではないかという予想もしていたので、待ち構えていたというのが
正直なところだ。
室内には冬らしくコタツと、その上には重箱がひとつ。
目ざとく見つけたナルトがカカシのいない間にこっそり覗いて、大声を上げた。
「おせち!美味そーー!!」
「馬鹿ナルト!なに勝手に覗いてんのよっ!!」
「あいてっ」
サクラに拳骨をくらって床に沈んだところで、お茶を入れたカカシが戻ってくる。
床に転がっているナルトを見て、不思議そうな顔をして。
「ナルト、そんな所で寝てると風邪ひくぞ?」
「ね、寝てるんじゃねーってばよ。
 なあなあカカシせんせー」
「うん?」
「このおせち、先生作?」
「まーさかぁ!貰い物だよ」
頭を擦りつつ身を起こしたナルトがそう問うと、首を横に振りつつカカシは
そう答えた。
いくら正月だからって、カカシがわざわざそういうものを作る人間でも買い求める
人間でも無いことぐらいは安易に想像がつくものだが。
重箱に視線を向けたサスケが軽く首を捻った。
「貰い物…か。意外だったな」
「そう?毎年くれるんだよねー。
 結構美味いんだ、コレが」
「なあなあせんせー!!コレ、ちっと食ってみてイイか!?」
「おー、食え食え。
 美味いけど、量の加減はなっちゃいなくてさ」
「私的には誰がくれたのかが気になるわ………女のひと?」
「……さあ…?」
小さく笑みで返して、カカシがそうだ、と声を上げた。
どうせ渡すなら、トコトンまで遊んでからの方がいい。
そう判断して、コタツに座ったカカシは徐に懐から3つの小さな袋を取り出した。
「さて、どうせお前達はコレ狙いで来たんだろうというコトは
 簡単に想像がつくんだけどね、折角だから、ひとつ問題を出そう」
「……問題?」
出されたお茶を啜りながらサスケが眉を顰める。
なんだか妙な展開になってきた。
「サクラが気にしてる、このおせち。
 誰が作ったか当てられたら、コレを渡そう。
 制限時間は今日中、解答権は一人1回、
 一人でも正解すれば3人ともお年玉ゲット、全員不正解ならナシだ」
「…………マジかよ」
「うそぉ……」
「んあ?」
頭を抱えた2人を余所に、ひたすら目の前の食料に有り付いていたナルトは
きょとんとした目を向けた。
「ま、時間はたっぷりあるから、ゆっくり考えなさい。
 とりあえずココでじっとしてるのもなんだから、初詣にでも行ってみるか」
唸りを上げて悩み出した子供達へ笑いかけて、カカシはそう告げると
玄関を指して立ち上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

参拝を済ませ、おみくじと破魔矢を買い、漸く人でごった返しの道を抜けた
その時、前方から見知った姿がやって来るのを見て、ナルトが足を止めた。
「あーー!!ゲジマユだってばよ!!」
「ナルトくん、明けましておめでとうございます」
「おー!!」
ブンブンと手を振ると向こうも気が付いたようで、小走りにリーがやってきた。
どうやら目的は同じ初詣のようで、サクラがこくりと首を傾げる。
「今日はリーさん一人ですか?」
「いえ、皆で来ましたよ。
 ガイ先生と、ネジとテンテン、それに僕の4人です」
「あちゃあ…………いるんだ。」
困ったように頬を掻きながらカカシが呟くと、すぐにその姿は人込みの中から
現れた。
リーが手を振って示すと、3人ともすぐに分かったようだ。
「よう、カカシ」
「やっぱり、お互い考えることは一緒か」
「ははは、違いない」
目配せしあって苦笑を交わすと、ガイがこほん、と小さく咳払いをした。
そしておもむろにカカシを指差して。

 

「よぅし!!ココで会うのも何かの縁だ、
 新年一発目の勝負といこうじゃないか!!」

 

「…………はい?」
余りの唐突な物言いに、カカシの目も点になる。
周りにいた子供達もあんぐりと口を開ける他は無く、ただ突然の状況に
ついて行くのもやっとのようだった。
「…何なのよ、イキナリ」
「お互いまだ引き分けたままだ、此処で雌雄を決するのも良い」
「やだよ、面倒な」
「逃げるのか?」
「……そう言われるのは好きじゃないな。
 だったら仕方無い、勝っちゃうよ?俺」
「ふん、そのぐらいの意気込みが無くてはな」
口元に深い笑みを覗かせて、ガイがこくりと頷いた。
「で、何で勝負すんの」
「ふむ……おおそうだ、おあつらえ向きのものがある。
 ここはひとつ、こいつで勝負はどうだ」
「飛び道具の勝負ね。
 あんまりした事ないし、いいんじゃない?」
ガイが指したものに、それなら俺も持っている、とカカシも手元の
袋を持ち上げて見せ。

 

 

「「 破魔矢だソレはーーーーー!!! 」」

 

 

サクラとテンテンが同時に放った渾身の打撃は、上忍2人を吹っ飛ばしたのだった。
「いたた……ちょ、サクラ、お前今、本気で……」
「フ………ナイスツッコミだ……テンテン!」
「なんってバチ当たりなコトしてんですか、2人とも!!」
「ホント、信じらんない!!」
「「…………すいません。」」
仁王立ちになって怒りの形相を見せる女2人はなかなかの迫力である。
思わず正座して謝って、じゃあどうすればと視線を交わすカカシとガイに、
仕方無さそうにサクラが肩を竦めた。
「勝負っていってもねぇ……こんな所で殴り合いとか
 ホント勘弁して欲しいし……」
「あ、ガイ先生おみくじ引いてましたよね、それとかどうですか?」
リーに言われ、そういやそんなものも、とガイは己の懐を探り
少し前に引いていたおみくじの紙を取り出した。
「俺は引いたが………カカシ、お前は?」
「ん、さっきやったけど………なんかイキナリ勝負ショボくない?」
「むう……そう言うな。
 また拳が飛んで来るだろう」
「確かにそれはゴメンかな。それじゃあ、せーので……」
カカシもポケットに入っていたおみくじの紙を取り出すと、2人顔を寄せ合って
同時にその紙を広げた。
「「…………吉。」」
2人の声が綺麗にハモる。
「…………。」
「…………。」
「…つっまんねぇオチだってばよ」
思わず沈黙するカカシとガイの持つおみくじを覗き込んで、ナルトが思わず
そう声を上げた。
「これでは勝負にならんではないか!!」
「って、俺に怒ったってしょうがないだろ?」
ばしっと地面におみくじを叩きつけるようにして叫ぶバチ当たりなガイに、
困った表情のままカカシは頭を掻くだけだ。
勝負自体は割とどうでも良いのだが、このままではガイが収まりそうにない。
どうしたものか、と首を捻っていると、人込みを掻き分けてネジがやってきた。
「ガイ、これを使え」
「…………羽子板?」
「ちゃんと2本ある」
ガイに向けてネジが差し出したのは、正月らしく艶やかな模様が入った羽子板。
もう1本をカカシに渡して、ご丁寧に羽根まで袖から取り出してきた。
「……ネジ、そんなもの何処から…」
「さっき、そこでヒナタ様に会ってな、丁度持っていたから借りたんだ」
「はぁ………それはまた都合良く……」
「後で、キバやシノと遊ぶつもりだったらしいが」
「ええ!?そんなの借りてきて良かったんですか!?」
「………仕方無いだろう、こっちの収拾がつかないんだからな」
目を丸くして言うリーに重苦しい吐息を零したネジがそう答えた。
ヒナタはああいう性格だから快く貸してはくれたものの、やはり心苦しいものはある。
「世話の焼ける上司を持つと大変だな、お前らも」
「…………ある意味お互いさまでしょう」
やや同情めいた視線を投げかけてくるサスケに、リーはそう答えて苦笑を見せたのだった。

 

 

 

 

 

 

<NEXT>

 

 

 

 

 

あけましておめでとうございます。というコトで、ひとつ。

やっぱりこうやってバカ騒ぎしてるの書いてると
すごく落ち着きます。
皆でワイワイやってるのが何より楽しい、そんな気分。

 

さて、勝敗は如何に?