一方的に睨みつけること、数十秒。
それを全く意に介した様子もなく、ベッドに座る自分の腰元に
べったりと貼り付いてきている生き物が一人。
最初から人の話を聞く気が無いという事は分かりきっているし、
聞いたからといって素直に従うようなヤツでも無いという事は
重々承知している。

 

「………………こんな所はとても人には見せられん」

 

重苦しい吐息を零すと、仕方なしに手を伸ばしてベット近くの
窓をカーテンで遮ったのだった。

 

 

 

 

<Any road will lead with you.>

 

 

 

 

 

 

何の前触れも無くカカシが自分の前に現れるという事は、
そう珍しい話ではない。
だがそれは決まって彼自身に何かがあった時で、例えば
酷く胸を痛めるようなことや、激しく憤るようなこと、
そういう事が起こった時だ。
それは今の自分達が持つ部下の年齢よりももっとに幼い頃からで、
お互い身寄りが無く一人で生きていたので、持て余した痛みを
分け合う方法として、自然と身についた事のようだった。
昔は悲しいことがあると泣きながらやってきたり、苛立つ事や
腹が立つようなことがあれば、突然現れて殴りかかってくる
というような、些か直情的な面が多かったような気がする。
それに関してはガイもあまり人の事は言えないのだが、
自分の場合は周囲に感情を表して憚らないので、それほど胸中に
何かを溜め込むといった事がない。
カカシの場合は殆どの感情を胸の内に隠してしまって、ほぼ一定の
テンションを保ちながら周囲と向き合うものだから、胸の内に少しずつ
溜まっていったものや、急に現れた津波のような感情の処理が
上手くできなくて、それを向ける矛先にガイを選んだ、そういう事だ。

 

 

 

 

とはいえ感情の処理も、歳を重ねる毎に巧みになっていくのは道理で、
最近では何かあってもフラリと姿を現して、ただ静かに言葉を交わして
去って行くだけ、そんな具合であったように思う。
話をするだけでもスッキリする感情だって確かにあって、聞いてやるだけで
カカシが楽になるのであれば、と思っていた矢先がコレだ。
「………だから、一体なんなんだ、カカシ」
「んー……いやぁ、暫く姿見なかったからさ」
「任務だ、仕方無いだろう」
「ああ、そりゃ仕方無いよね。
 でもソレとコレとはまた別なのよ」
「………どういう意味だ」
ガイに任務が入っていた事は知っている。
そしてそれが予定より長引いたという事も知っているし、
もちろんその事についてガイに何かを言うのは筋違いだという事も理解している。
「要するに、一ヶ月はちょっと長かったなぁ、ってハナシ」
「ん?」
「どうしても手の届かない時に限って、欲しくなるモノもあるんだよ」
「………よく、わからん」
困ったように首を傾げて言うガイを見て、カカシが苦笑を覗かせた。
分かって欲しいわけじゃないから、別に分からなくても構わない。
自分がガイに求めているのは、理解じゃなくて、許容だから。

 

 

「ガイってさ、いつも太陽の匂いがするから、
 くっついてると日なたぼっこしてる気分になるんだよな」

「……干したての布団か、俺は」

 

 

上手いこと言うねぇ、と感心したような言葉を漏らし、
「それじゃ、ガイは俺専用の布団な?」とカカシが言えば、
強力な拳骨が落ちてきた。
だが、それでも全く自分を放す気が無さそうな様子のカカシに、
ほんの少しだけガイは目眩を覚えたのだった。

 

 

 

それは、ガイが任務についてから35日目の話。

 

 

 

 

 

 

<END>

 

 

 

 

 

あー……どこまでバカップルやってんだコイツら……。

て、先に断っておきますが、今回のコレはかなり狙ってひっつかせたんですが、
どうもひっついてたのは身体だけだったようで。(また誤解を招くような…)
なんだか急に甘い話が書きたくなって、頑張って狙ってこれか!!

 

成 長 が ね ぇ … ! !

 

と、いうより。

いい加減、両思いにしてあげたいです…!!(血涙)
どこまでカカシせんせーの片想いなんだろう…。