夕焼けの茜空。
身動きひとつ取れない身体。
傍には自称ライバルのおかっぱ頭がいて、
更には何故だか自分は彼の足を枕にしていたりなんかする。

 

さて、ここで問題です。
これは一体どういった状況なのでしょうか?

 

 

 

<The distance which is good for two exactly.>

 

 

 

 

 

 

「……………あれ?」
「お、気がついたか。カカシ」
「えーと………うん、」
ぱか、と目を開けば、ぼんやりと空を眺めていたらしいガイが視線を落としてくる。
問い掛けに頷いては答えたものの、何がどうしてこうなったのかがさっぱりだ。
身体を起こそうとしたけれど、有り得ないぐらいの気だるさと重さを感じて
それは結局僅かに身動ぎをするだけに終わってしまった。
「ガイ、一体何がどうなっちゃってるワケ?」
「は?何がって………お前、もしかして覚えてないのか?」
「…………ん〜?」
「まったく……だから度を越えた修行は身を滅ぼすといつも言っているだろう!」
「お前に言われたくない、ソレ」
今いるこの演習場にガイが訪れたのは、本当に偶然のことだった。
先客がいるようだからと遠慮しようとした矢先に、感じた気配がよくよく知っている
人間のものだったから声をかけようと姿を捜し、そしてその先で見たものは。

 

「………あれは、何だったんだ」

 

目に見えるほどのチャクラの具現化。
まるで雷を纏うかのように、それは掌に集まり、弾け。
それがひとつの大木を切り裂いたと同時に、カカシは倒れたのだ。
「……ああ、そうだそうだ。
 他人の術のコピーばっかじゃ味気無いからさ、ちょっと開発してみようかと思って」
「それでアレか」
「上手くいくと思ったんだけどねぇ……まだダメだ」
「威力は充分に感じたが?」
「その度に気絶してたんじゃ、使いモンにならないでしょ」
「ふむ、確かにな」
倒れたカカシを放っておくわけにもいかなかったのだろう、どうやらガイは
それからずっと傍に居てくれたようだった。
「まいったな、身体が動かない」
「無茶をするからだ。もう少し休んでいろ」
「でもお前、足辛くない?」
「些細なことだ」
すっぱりとそう言い捨てて、ガイは縦に引き裂かれ焦げ付いた大木に
背中を凭れかけさせた。
これだけの威力を出す技だ、モノにできれば心強い武器になるだろう。
「いいな、この技」
「はは、ガイには無理だよ。
 これだけのチャクラを捻り出すだけでも大変なのに」
「む…」
「ガイはガイのやり方で、強くなればいいのさ」
いつからか、まるで競争でもするかのように強さを求め合っていた。
もっと強く強く、何も失わないように。
いつでも安心して、その背を預けてもらえるように。
せめて預けられた背中だけは、守り通せるように。
相手が何かひとつ新しい力を得る度に、追いつかなければと焦りを生む。
彼の得た強さに見合うだけの何かを、自分も手に入れなければならないのだ。
そうでなければ共に在ることは叶わないのだと、誰かが言ったわけではなく、
いわば己の中の本能が、そう告げてくるのだ。
「…俺はもっと、強くなるよ?」
「ならば俺も負けてられん、更に修行を積まねばな!」
「ええ!?
 そしたら俺、もっともっと強くならないと」
「そうなれば、俺も更に強くなるだけだ」
「堂々巡りだねぇ」
「……そうだな」
足並みは最初から揃ってなんかいなかった。
追い抜き、追い抜かれ、そうやっていつまでも、これからもずっと。

 

 

「そうやってずっと、これからもお前と一緒なのかな」

 

 

空を見上げてぽつりと呟く。
だが、それに対するガイからの返事は得られなかった。
視線を向ければ、ただ笑みの形に弧を描いた唇があって、
なんとなく、なんとなくそこに、触れてみたいと思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、ガイさ、お前はどこまで強くなる気なの?」
「カカシなど足元にも及ばなくなるところまで、だな」
「ふーん…」
「そういうお前は、どうなんだ?」
「うん、ガイを指先ひとつでダウンさせられるところまで、かな」
「これはお互い先が長そうだな」
「………ね、ガイ」
「なんだ?」
「もうちょい膝、貸しててくんない?」
「…………好きにしろ」

 

 

 

傍に居て、なんて絶対言えやしないから。

だからこれが、俺達の精一杯のキモチ。

 

 

 

 

 

 

<終>

 

 

 

 

 

 

カカガイにしては珍しく短めですが、
色んなことのリハビリがてらに。

なんていうか…自分の中で理想とする2人の空気が
上手く表せない歯痒さってのがあるんですよね。
理屈じゃない何かがあるような気がするんだよ。
きっと2人で乗り越えたことって、たくさんあると思うよ。
ライバルとか友人とか、色んなバリエーションがあるんだけど、
私の中では戦友って言葉が一番近いのかもしれないなぁ。

難しいやぁ…。