<The lodging together story.>
「おい!何の冗談だコレは!!」
「やだねぇネジくん、冗談なんかじゃないよ?」
「余計タチが悪いわよーー!!」
「悪くて結構、」
鬼とか悪魔とか声を張り上げてカカシを詰っているのはネジとテンテン、
だがその2人は手近な木に縄で縛り付けられていた。
何のことはない、カカシがスキを見てやらかしただけだ。
もちろん突然のこの状況に、リーはついてこれずにいる。
「あ、あの、カカシ先生、これはいったい何事で…?」
「とりあえずさっきまでの話は全部忘れちゃっていいよ、リーくん」
「え?」
にこりと笑んで言うカカシの身から湧き出すものに、眉を顰めて様子を
窺ったままでリーが首を傾げた。
それは紛れも無い殺気で、何故かそれが自分へと向けられている。
「これからキミは、俺と戦って頂きます。」
思わず耳を疑うような言葉に、リーが呆然と立ち尽くす。
今彼は何と言っただろうか?戦え、と言っただろうか?
だが、彼が齎す殺気は軽い手合わせで済むようなものとは思えず、
リーはおずおずと訊ねた。
「あ、あの……カカシ先生、それって……」
「できれば手加減してあげたいところだけど、それじゃあ意味が無いからさ。
ちょっとばかり、マジでいくからね。
せめて死にたくなければ、本気で掛かってくることだよ。
そうすればリーくん並みの体術があれば、まぁ生命は助かるでしょ」
「えええええええ!!??」
「よせ!アンタにリーが敵うハズ無いだろう!!」
「ちょ、ちょっと、カカシ先生、本気でやるんですかッ!?」
途端、木に縛り付けた2人から非難の声が上がる。
リーは困惑した表情のままで、カカシはにこりと笑ったままだ。
「もちろんだよ、だからちょっとお邪魔なキミ達にはそこに居てもらってんだし。
ルールは単純、リーくんは俺を倒すためにどんな技を使っても良い。
但し、俺もそれなりに反撃はさせてもらうんで、そこんとこはヨロシク。
幻術だけは使わないようにするから、それぐらいのハンデはいるでしょ」
空気は恐ろしく冷たく、リーが感じ取れる気配はもう殺意しかない。
本気なのだろう、この上忍は。
「ちなみに逃げるのは禁止だ、間合いを取る以外の理由で一定の距離を
取ろうとすると……こうなるから」
ダンッ!!
更に何か言い募ろうと口を開きかけたネジのすぐ真横に、クナイが突き立てられる。
はらりと舞う己の髪に、ネジが眉間に皺を寄せて口を閉じた。
隣の木に縛られたテンテンの顔色も青褪めている。
もう黙れという意思表示を感じ取ったのだ。
「………後でガイ先生に言いつけてやるんだから…!!」
「それには同感だな」
「うわ、ガイに言うの?それは嫌だなぁ…後で煩いんだろうなぁ…。
ま、いっか、どうやらリーくん自身はやる気出してくれてるみたいだし」
真っ直ぐに自分を見て構えるその大きな瞳からは闘志が見て取れて、
カカシが良い子だなぁ、と僅かに目を細めた。
確かにいい目をしている、もうきっと前しか見えていないだろう。
「じゃ、勝負開始!!」
「オッス!!」
言葉と共にカカシがクナイを投げつける。
軽い身のこなしでそれを躱すと、リーはカカシの懐を狙って真っ直ぐに突っ込んでいった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
場所は変わってガイが率いる7班の子供達。
彼らは今だにこの上忍と決着がつけられずにいた。
「くっそ…ちょろちょろと逃げやがって…!!」
「なんなのあの速さ……シャレになってないわよ」
大きく肩で息をしながら吐き捨てるように言うサスケの隣で、
同感だとサクラも頷く。
3人同時に飛び掛っても、連携技で押さえようとしても、何故だか
ガイはひょいと軽く避けてしまうのだ。
ナルトなどは何度か勢いを逆手に取られて吹っ飛ばされていたりする。
その受け身から攻撃へと変化させるタイミングもまた、全く読めない。
「一筋縄ではいかねーとは思ってたけど、やっぱ激眉センセってば
激強だよなー!!」
「バカねナルト、そこで感心している場合じゃないでしょ?
早いとこケリつけないと、いつまで経ってもコレ終わんないじゃない」
「じゃあ、3人と言わずもっと大勢でかかってみるってばよ!!」
うし、と気合を入れて立ち上がると、ナルトは印を結んだ。
影分身の術!!
「ほう、やるなぁナルトくん」
感心したように目を見開いて声を上げるガイへと、ナルトが笑いながら
大きく手を振った。
その数はざっと20人はいるだろうか。
「コレはありだよな?激眉先生!!」
「ああ、体術で来るなら全然構わんが」
「だったら突っ込むぜぇ!!」
「なるほど……質より量か…」
「下手な鉄砲もってヤツよね、アレ」
20人のナルトが一斉にガイに攻撃をしかける姿はまた見応えのある光景
だったりするのだが、いかんせん数が増えてもナルトはナルト。
「発想は悪くないが……それで基本ステータスが上がるわけでなし、」
次々と襲い掛かってくる攻撃を少ない動作で躱しながら、ガイが口元に
笑みを乗せた。
スピードも威力もまだまだリーには及ばない。
これでは数にものを言わせたとしても、自分に一撃を入れることは
できないだろう。
「あ、れ…?」
「わ…ッ」
「ぐあッ!!」
最初の一人の拳を避け、ガイの姿が忽然と消える。
と、次の瞬間には19人のナルトが宙を舞っていた。
「な、なんで…?」
「すげぇ……」
木の上から固唾を飲んで見守っていたサクラとサスケがごくりと喉を鳴らす。
その19人は地に伏し、そして姿が掻き消えた。
つまり全てが影分身の方だったということだ。
「やはりキミが本体か、ナルトくん」
「す…すげー!!すげーってばよ激眉先生!!
なんで分かんだ!?すっげーーー!!」
「はっはっは、このぐらい勘でどうとでもなるものさ!!」
「なんないでしょ、普通…」
「つまり、あくまで本能で動く男なんだって事だな…」
となれば理解しようとする方がまず無理だ。
木から飛び降りてナルトの傍へ駆け寄ると、さてどうしたものかと
サスケが頭を悩ませる。
一発掠めるだけなら簡単だと高を括っていたのだが、それは大きな
誤りだったと思う。
その掠めるという行為そのものが、こんなに難しいとは。
だが、そんな折だった。
自分達の居る場所よりずっと北の方角、恐らくは1kmも離れてはいないと
思われるが、そこから巨大な水柱が立ち上がったのだ。
「な……何事だ…!?」
「すごい、何アレ…」
「ここからでも見えるって……相当でかいぞ」
「うっひょー!!すごそー!!」
突然のことに驚きを隠せず見上げるガイとサクラ、そしてサスケの傍で
ナルトだけが拳を握って大きく感動を表していた。
『おーい。ガイくん聞こえるー?』
なんともやる気の無さそうな7班の担当上忍の声が聞こえて、
ガイが懐から無線機を取り出す。
あのタイミングでこの声、なんとも嫌な予感。
「………カカシか」
『今の、見えた?』
「見えたが…あれはお前の仕業か?
何をしているんだ!?」
『ちょっと、水遁の術をね。
今こっちに来ると、凄いモノが見れるよ』
「お前…」
『生きてるといいんだけどねぇ………あの子』
そんな不穏な言葉を最後に、ぷつりと無線の声は途絶えてしまった。
傍で聞いていた子供達も不思議そうに顔を見合わせている。
「じゃあ、さっきのってカカシ先生がやったの?」
「そういえば…あっちの方は大きめの池があったな」
「すげーじゃん、やっぱカカシ先生って!!」
しきりに感心している3人を余所に、ガイはむしろ不安でいっぱいだ。
一体何をやらかしてくれたのだ、あの男は。
生きてるといいんだけどねぇ。
自分の部下の誰かが、あれを食らったとでもいうのだろうか?
「……カカシめ…!!」
そう言われてしまえば向かわざるを得ない。
苦く呟くとガイは真っ直ぐ北へ向かって走り出した。
「あ、待つってばよ激眉せんせーーー!!」
「くそ、俺達も行くぞ!!」
「うん!!」
その後ろを子供達もついて駆け出す。
修行場の、北へ。
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テンポよく書けるコミカルな話は好きです。
コミカルに書けてるかどうかは別として。(をい)
なのでこういった話は、頭の中で行われているドタバタをどう表現しようか
結構悩んだりもするのですが、やっぱり書いてて楽しかったりします。
多分アレだな、ガイ先生とサスケは根本的に性格が合わない。
んでカカシ先生とネジは、きっと永遠にネジが警戒心を解かない。
そんなカンジで上手くいかなかったと思います。
たまにチェンジする分には面白いと思うかもしれませんけど。今回みたいに。
サクラとテンテンは、割とどんな状況でも適応できるんじゃないかと思います。
そしてナルトとリーは根っこの部分で似たもの同士な気がします。そんなイメージ。