<The lodging together story.>

 

 

 

 

お互いのチームの顔合わせもそこそこに、早速修行だと別行動になった。
カカシも言った通り、目の前にいるのはカカシではなくガイである。
なんだかなぁ、と思いつつとりあえずは彼がどのような修行を言い出すのか
サスケとサクラが固唾を飲んで見守っている中、一人気合充分なのはナルトだ。
「激眉先生!!早くやろーってばよ!!」
「ははは、まあまあ、元気があるのは良い事だが……そうだな、
 とりあえずまずは、この修行場を軽く500周してもらってだな…」
「ちょっとォ!!できるわけないでしょうがー!!!」
「何を言う!リーは演習場を毎日走ってるぞ!!」
「そりゃアンタんトコの弟子だけだろ!!一緒にするな!!」
途端に上がったブーイングは、当然といえば当然だ。
大体にしてそんな事はリーぐらいしかガイのチームもやってはいない。
「ふむ……まぁ、3日しか無いからな、こういう類はずっと続けることが
 重要なのだし……、体術といっても奥は深くてな、急場しのぎのコツしか
 教えられんとは思うが、それはさておき…」
「激眉せんせー!!御託はいいから早くやろっての!!」
「じゃあ、こうしようか」
余りやる気を見せていないサスケとサクラ、そして人の話を聞いていないナルトに、
これはカカシも難儀していることだろうと苦笑を覗かせ、ガイはポンと手を合わせた。

 

「体術勝負だ。俺の身体に一発でも掠めたらお前達の勝ちで、修行は終わりにしてやろう。
 もちろんスリーマンセルなのだから、3人まとめてかかってきて構わんぞ」

 

ガイの提案に、サクラが掠めるだけでもOKなら楽勝だと笑みを見せる。
サスケはむしろ自分達を馬鹿にしているのかと些か不満そうだ。
そこへ更に追い打ちをかけるような一言。
「……ああ、もちろん俺は忍術も幻術も使わん。せめてものハンデだ」
「アンタ……俺らをバカにしてんのか……?」
「いいや、別に?
 気を悪くしたなら謝るが、まぁ…キミでは俺の身体に触れる事はできないな」
「…言ったな…!?」
プライドの高さはネジと似たり寄ったりだが、安い挑発に乗りやすいのはどうやら
サスケの方のようだ。
そう感じ取ると、それならとガイはサスケを手招きする。
「じゃあ、ものはためしだ。かかっておいで」
「………言われなくても!!」
立ち上がって真正面から突っ込んでいくサスケを止めようとしたサクラの声は、
彼には届かなかったようだ。
矢継ぎ早に繰り出される拳を軽々と避けながら、ガイはなるほど、と頷いてみせる。
「なかなかやるじゃないか……そういえばリーの動きを身につけたのだったか」
「フン、すぐに後悔させてやるぜ!!」
「………だが、まだ甘い。
 確かにスピードは然して変わらないほどになったが、」
避けるだけだったガイの動きが、一転して攻めになる。
大きく一歩を踏み出したサスケの足首へと自分のつま先を引っ掛けてやるだけで。
「う、わッ!!」
バランスを崩したサスケはそのまま地面を転がった。
かろうじて受け身を取ることができたので、かすり傷はひとつもない。
「な……なんだ…?」
「手に入れたスピードに振り回されてどうする?
 ブレーキが利かんから、ちょっと足を出すだけで引っ掛かるんだ。
 うーん……さすがになぁ、コレじゃあなぁ…………無理かな?」
「て…てめぇ…ッ」
座り込んだままのサスケの傍にしゃがみ込んで、嘆かわしい…、と呟くガイに、
いよいよ我慢のならないサスケが思い切り拳を振り上げた。
だが、結局それも当たらない。
一瞬にして場所を移動すると、ガイは見てるだけのサクラとナルトへ視線を向けた。
「で、キミ達はどうするんだ?」
「………3人でかかれば、なんとかなるわよ…絶対!」
「ぃよォっし!!やるぜーー!!」
サスケを助け起こしながら言うサクラの隣で、ナルトも拳を握って大きく声を張り上げる。
どうやらやる気は出たようだ。
冷静になったのだろうサスケの射るような視線にも全く動じる事なく、ガイが口元に
穏やかな笑みを覗かせた。

 

これは、面白いことになりそうだ、と。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、カカシが今率いているのはリー・ネジ・テンテンの3人だ。
さすがに優秀な生徒なだけあって、術の理論への理解もチャクラの練り方も
なかなか上手い。
だがそんな彼らにも、問題はあった。

 

 

「………じゃあネジくん、手本ね。
 そこ歩いてみせてくれる?」
「分かった」
こくりと頷くとネジは目の前に広がる池の前に立ち、一歩を踏み出した。
ぱしゃ、と小さな水音を上げながら、だが足は沈む事無く水面に繋がったままだ。
それじゃ次はテンテンね、というカカシの言葉を受けて、彼女もまたひらりと
水面に飛び出していく。
この2人に関して言えば、基本はまず問題無い。
それを見てから、カカシはちらりと隣に立ち尽くした少年を見遣った。
確かにガイの秘蔵っ子だけあって、体術に関連するセンスは抜群だ。
ところがそんな子供にも、最大の弱点があるわけで。
「それじゃリーくん、いってみようか」
「オ…オッス!!」
シュビ、と手を挙げると、リーは池の前に立ちその水面を見つめる。
理屈はさっき嫌というほどカカシに教えられた。
それは理解できたし、チャクラもなんとか練れそうだ。
問題はそれをコントロールできるかどうか、なだけで。
まずは己を信じることだ、とガイの教えを反芻し大きく深呼吸をして。

 

 

ぼちゃん。

 

 

「リー!!」
「あーあ…」
大きく一歩を飛び出したリーだったが、その身体は見事なまでに池に沈んだ。
咄嗟に手を出して引き上げたネジの隣でテンテンは額に手をやり吐息を零す。
彼にこの細微なチャクラの調節をしろという方が、どだい無理な話なのだ。
「ねーカカシ先生、ホントにリーって水の上歩けるようになるの?」
「うーん……なってもらわないと困るのよ、俺としても…」
せめて木は垂直に、そして水の上は沈まずに歩けるぐらいにはなってもらわねば、
どれだけ力を持っていても、いざという時に全く役に立たないという事になりかねない。
戦場は地面の上だけではないのだから。
それを気がかりに感じたガイが、どのようにしてその術を身につけさせるべきか
カカシに相談したのが今回の合同演習の件に繋がる発端だったというのは内輪の話だ。
確かにこればっかりは、努力でどうこうできるものでも無いだろう。
もちろん努力だって練習だって必要にはなるが、一番重要なのはコツだ。
「…ところで、ガイは何て言って教えてたわけ?」
気になったカカシがそう子供達に問えば、リーを陸に引き上げたネジがさらりと答える。
「今、カカシ上忍が言ったのと大して変わらないような事だ」
「あーでも、あと努力と根性で、とも言ってたわよね」
「それと……修行を怠らなければいずれ出来るようになる、とも……」
思い出すように首を捻りながら言うテンテンと、その隣で服の裾を絞り水を落としながら
言うリーに、やっぱりな、とカカシは肩を竦めた。
教科書通りの説明はできるが、つまりはガイ自身もよく分かっていないという事だろう。
最後の方の言葉などは、まるで安い気休めのようなものだ。
忍術や幻術を使おうと思うなら、印を結ぶ技術と術センスも必要になるのだが、
木を登ったり水の上を歩くという簡単な行動は、チャクラを練るという行動と
バランスを取るためのコントロール、それだけあれば本来ならできるのだ。
簡単な物事ほど教えるのが難しい、といったところだろうか?
「僕……歩けるようになりますか…?」
しゅんと項垂れながら呟くリーの頭を撫でながら、どうしたものかとカカシは思案する。
今のやり方のままでは、恐らくリーは一生歩けやしないだろう。
何かもう少し、違うやり方が必要だ。
コツを掴めるだけの、何かが。

 

「…………あー…そっか、分かった」

 

何かが閃いたのだろう、手を打ってカカシはそう零した。

 

 

 

 

 

 

<NEXT:修行風景2>

 

 

 

 

 

なんで修行してる姿が書きたいなんて思っちゃったんだ私…!!
何だか収拾がつかんくなってきた次第で…でもオチは見えてきたから、
とりあえずはそこを目指してみようかと。
おっかしいなぁ…他にも食事ネタとか風呂ネタとか書き出したら
2〜3本じゃ終わんないじゃん!!もういっそシリーズ化するか!?(待たんかい)

元は29巻でのガイ班水上戦で、リーくんが水の上に立ってたのを見て、
きっとこの子はナルトみたいに木を歩くとか水の上に立つとかするのに
ものすごく苦労したんだろうなーと思ったのがきっかけでした。(笑)