今日は上司であるガイに連れられて、皆で食事に行った。
ネジが中忍試験に合格し、晴れて一人前になったと認められたお祝いだ。
沢山の忍者が犠牲になった木ノ葉崩しが行われた試験から1年、
今年受かったのは砂隠れの里から来た3人と、ネジだけだった。
綱手の下で医療忍術を修行しているサクラは出場を辞退、リーもまだ身体が
万全でないからと二次試験以降の出場を断念し、他の面子は揃って不合格。
「ま、なんだ。中忍試験合格、おめでとう!!」
「………当然だ…」
杯を持ち上げてそう言うガイにもどこかぶっきらぼうに答えるネジを見て、
リーとテンテンは顔を見合わせて苦笑しあった。
本当は嬉しいくせに、と。
< Congratulations... >
「……まったく、ガイは何でも大袈裟すぎるのが難だ」
帰り道、遅くなったからとテンテンを送っていくガイと別れ、
ネジとリーは2人、夜道を歩く。
家の方向が同じというのもあるが、散歩気分でのんびり歩いていると
ふとネジがそんな風に口を開いた。
本当は嬉しかったくせに、どこまでも天邪鬼な男だとリーは思う。
「だけど、自分の事のように喜んでくれる人が居るのって、嬉しくないですか?」
「……アレは鬱陶しいって言うんだ」
「素直じゃないなぁ」
「何か言ったか?」
「…いえ、別に」
ジロ、と視線を向けられリーは慌ててそう答えた。
確かにネジが当然と称したように、彼が中忍になるというのはごく自然な流れの
ような気もする。
それだけの実力はずっと前から持っていたのだ。
だからこそ自分は彼に勝ちたいとずっと思ってきたし、今だその願いは叶えられずに
いるけれども、その目標は変わっていない。
自分が超えたい相手はガイでもナルトでも我愛羅でもない、ネジなのだ。
「リーこそ、体調の方はどうなんだ?」
己の考えを見越していたかのように問われ、リーは目を瞬かせた。
いや実際ネジの事だ、見越しているのかもしれない。
「……痛みの方はもう殆どありませんが、やっぱり大技はまだ辛いですね。
でも、次の試験までには身体も戻してみせますよ!!」
「そうか」
大掛かりな手術の直後に戦ったのがそもそもまずかったのだろう、我愛羅に助けられた
とはいえ、里に戻ったリーは病院のベッドに逆戻りしていた。
更には綱手とガイからダブルでお説教も食らい、随分辟易したものだ。
「次こそは、僕も中忍になってみせます」
「……ああ」
どこまでも上を目指すことに貪欲な彼は、例え幻術も忍術も使えないとしても
確かに上へと昇ることができるのだという事を、いつか証明してくれるだろう。
そうする事が彼自身の目標であったし、それを自分も見たいと思った。
ネジにとっては目標ではなく、一種の夢に近い幻想。
かつて天才と凡人は違うのだと驕っていた自分が、それでもこと彼の持つ目標にだけは
心惹かれるものを感じていた。
彼ならば、リーならば、証明してみせてくれるのかもしれない、と。
それは今も変わらずこの胸の内にある想い。
「……まぁ、お前なら大丈夫だろう」
そう声をかけて頷けば、リーは一瞬だけ驚いたような表情を浮かべ、そのすぐ後には
嬉しそうな笑みに変わっていた。
「ネジにそう言ってもらえるなら、安心ですよ」
「そうか?」
「……これは僕の偏見かもしれないんですけど、」
「?」
どう言ったものかと思案しながら話すリーの言葉は、それでも酷く穏やかだ。
「キミ自身の気持ちはどうあれ、キミが人に対してする評価は正しいと思いますから」
そこにはひとつも自分の感情は加算されてはおらず、だからこそ一切の油断が無い。
「ネジの言葉なら信用できます」
明日からまた修行です、そう言うリーにネジは何と言って良いものかどうか分からず
ただ口を噤んで見つめる以外にできなかった。
リーの言うように自分の評価が正当なのだと言うのなら、ではきっとこの予感も
間違ってはいないだろう。
行くぞ、という自分の声にすぐさま、待って下さい!と追いかけてくる声。
その声を聞きながら、どこか自分は安堵していた。
ならばきっと、これからもずっとこんな関係が続いていくのだと、離れていくことは
無いのだろうと、その予感もきっと間違ってはいないという事なのだから。
彼が晴れて中忍になった時には、心から「おめでとう」と言ってやれそうな、
柄でも無くそんな風に思ってネジは少しだけ苦笑した。
<終>
ちょいと短めではありますが。
なんていうか、こう、所々に存在する空白期間が
ものすごく創作意欲を掻き立てられます。
この時彼らは何をしていたんだろう、みたいな。(笑)
さすがに2部でナルト以外の全員が中忍になっていたというのは
べっくらこきましたが。展開早すぎ!!(爆)